有明アリーナで井上尚弥VSバトラー ボクシングのWBAスーパー&IBF&WBC世界バンタム級3団体統一王者・井上尚弥(大橋)が13日、12月13日に東京・有明アリーナでWBO世界同級王者・ポール・バトラー(英国)と4団体王座統一戦を行うと正…

有明アリーナで井上尚弥VSバトラー

 ボクシングのWBAスーパー&IBF&WBC世界バンタム級3団体統一王者・井上尚弥(大橋)が13日、12月13日に東京・有明アリーナでWBO世界同級王者・ポール・バトラー(英国)と4団体王座統一戦を行うと正式発表した。神奈川・横浜市内のホテルで「NTTドコモ Presents PXB WORLD SPIRITS」の会見に出席。下馬評は“同等”と断言し、最強ボクサーに見立てたイメージトレーニングをしながら決戦に向かうことを明かした。戦績は29歳の井上が23勝(20KO)、33歳のバトラーが34勝(15KO)2敗。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 モンスターは落ち着いていた。井上が口にしてきた日本人初の4団体統一戦がついに実現。相手はスピード、テクニックに定評のあるバトラーだ。世界で最も権威のある米専門誌「ザ・リング」の階級を超えた格付けランク「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」で1位にもなった井上にとって、周囲は“格下”の見方が強い。

 しかし、本人は否定した。

「毎回同じですが、優位と思っているのは周りだけ。自分は同じだと思っています」

 対戦が決まって以降、井上がいつも繰り返すのが稀有なイメージトレーニング。どんな相手でも「最強」だと脳みそに刷り込んでいく。これまでの試合前も「自分のパンチが当たらない」などと、自らが敵わないほどのボクサー像を作り上げた。脳内の対戦相手は常に最強。これこそ、井上が格下相手でもモチベーション高く練習し、常に圧倒できてきた理由の一つだ。

「今回も過大評価して想像しています。めちゃくちゃ過大評価して、それをどう攻略していくか。今はそのイメージトレーニングをしているところです」

 9月に米ロサンゼルスで2週間のスパーリング合宿を敢行。海外の猛者たちと火花を散らし、さらなるレベルアップを図ってきた。今後は今月末に走り込み合宿を予定し、2人のフィリピン人パートナー、元世界3階級制覇王者・田中恒成(畑中)らを相手に大橋ジムでスパーを積む。

世界初の歴史的偉業を前にさらり「獲ったとしても次があるでしょ」

 2019年5月、エマヌエル・ロドリゲス戦は英グラスゴーだった。この時、同じ興行にバトラーも出場していたが、「会っていないし、試合も見ていないですね」と印象にない。世界戦線に顔を出すようになって意識し始めた。現状のイメージとは。簡単にはいかない難敵だ。

「全てのレベルにおいてまとまった選手の印象を受けました。相手は自分(バトラー)のボクシングを徹底している選手。ジャブを突いてポイントを獲るイメージですし、無理をしない。危険なポジションにいない。そういうところを徹底している。

 相手は過去イチのモチベーション。過去にないくらい徹底してくると思うので、映像だけではわからない、それ以上のもので来ると思います。倒されないボクシングを徹底された時に、自分がどう展開するのかを準備している状況です」

 井上が現在保持する3つのベルトは、他団体王者から一本ずつ奪い、すべてがKO勝ちだった。世界で8人しかいない過去の4団体統一王者は、1試合で一気に2つ以上のベルトを奪った試合、世界ランカー同士の王座決定戦で勝った試合も含まれている。4人の王者から一本ずつベルトを奪った選手はいない。しかも、判定勝ちもあり、井上のように全KOではなかった。

 4団体統一を果たせばアジア人初であり、4人の王者から一本ずつ奪取&全KO勝ちはともに世界初の歴史的偉業。しかし、モンスターはさらりと語った。

「4つ持っている選手から獲ったにしろ、一本、一本でも変わらない。『獲ったとしても次があるでしょ』という感覚です。気持ちとして変わるものはないと思います。あと2か月、やれることは何だろう、と。対戦相手の技術が高い。技術、駆け引きの戦いを見てほしい」

 記録への欲はない。大好きなボクシングで人の心を動かす。今、頭にあるのはそれだけだ。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)