シーズン終盤を迎えている「三菱地所 JCL プロロードレースツアー2022」。第8戦となる「高知県宿毛市ロードレース」が9月25日、高知県の宿毛市で開催された。すでにロングライドイベントなどでは有名な土地ではあるが、レースを開催するのは、こ…

シーズン終盤を迎えている「三菱地所 JCL プロロードレースツアー2022」。第8戦となる「高知県宿毛市ロードレース」が9月25日、高知県の宿毛市で開催された。
すでにロングライドイベントなどでは有名な土地ではあるが、レースを開催するのは、これが初めてとなる。

高知県宿毛市ロードレースの特徴は、何と言っても自動車専用道路、いわゆる高速道路を一部使用したコースレイアウトだろう。宿毛市内に設営されたロードレースコースは公道をベースにしたものだが、その中には高速道路が一部含まれている。レースで使用されるのは、隣接する四万十市と宿毛市とを結ぶ区間で、コースとしては中村宿毛道路の平田IC~宿毛和田IC手前約4.3km地点の2車線を利用する。大会開催中は安全確保のため、四万十IC~宿毛和田IC間は全面通行止め。高速道路を使用したレースは国内初の試みであり、大きな話題となった。



高速道路上を走る選手

コースは、1周12.5kmのサーキットを10周する125.0kmの設定。コース内には、地形の変化による細かなアップダウンが含まれ、道幅が変化する区間もあり、気が抜けない。高速道路と一般道とを組み合わせたことで、より変化に富んだダイナミックなものになっているという。ランキングがかかった選手たちがどう走るのか、チームはどのような采配をふるうのか、注目が集まった。

定刻通り、選手たちはスタートラインへラインナップ。 出走前には、個人総合首位のイエロージャージを着用する増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が安全宣言を行った。スプリントの首位であるブルージャージも同チームの小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)が守っており、U23の首位であるホワイトジャージも 渡邊諒馬(VC福岡)が守っている。山岳賞首位のレッドジャージは前レースからネイサン・アール(チーム右京)の手に移った。各カテゴリーのリーダージャージを着る選手を先頭に、レースがスタートした。



レースは落ち着かず、ハイペースの展開が続く

1周回のパレード走行を終え、リアルスタート。125kmの戦いが始まった。レースの数も残り少なくなり、さらに真剣味を増した選手たちは、冒頭から激しいアタックの掛け合いを始め、集団は揺さぶられ続ける。変化の多いコースの中で、ハイペースの展開となり、じわじわと選手たちの体力が奪われていったが、それでも集団は一向に落ち着く気配を見せなかった。



抜け出しがなかなか決まらない



宿毛市に広がる田園風景の間を抜けていく

レースがようやく動いたのは4周目。序盤から積極的に動いていた「逃げのスペシャリスト」とも呼ばれる阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が、さすがの勘を見せ、⻄尾憲人(那須ブラーゼン)らと抜け出しに成功した。ここに一昨年まで世界の最高峰チームでレースをしていたベンジャミン・ダイボール(チーム右京)と、中島雅人、横塚浩平(VC福岡)が加わり、先頭集団を形成した。
さらに昨年の個人首位選手である山本大喜(キナンレーシングチーム)が意地を見せ、ここに単独で合流。力のあるメンバーを含んだ6名が集団を形成することになった。



実力のあるメンバーを集めた先頭集団が形成



積極的な走りを見せたベンジャミン・ダイボール(チーム右京)。2019年まではUCIワールドチームに所属、ブエルタ・ア・エスパーニャなど最高峰のレースを走っていた選手だ

ここから中島が脱落したが、経験値が高く、実力もある5名は協調して、ペースを維持。順調にタイム差を広げていき、終盤となる8周目には最大2分ものタイムギャップを築いていた。



高速道路に合流する選手

残り距離が短くなり、このままでは勝機がないメイン集団にも、いよいよ火がついた。先頭5名にメンバーを送り込めていなチームたちが本格的な集団の牽引を始めた。だが、先頭のメンバーも実力者揃い。差は思うように縮まらない。ファイナルラップに突入したが、この時点でまだ1分以上の差が開いていた。

※残り10㎞、緊張感が増していくレース展開。勝利を掴むのは!?
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残すは10kmあまり。集団に力があれば追い詰めるのに十分な距離とも言えるが、すでに脱落している選手もおり、チーム右京などが積極的な牽引をしない状況で、この差を詰められるのか。先頭5名の中では、逃げ切るための連携に加え、逃げ切った場合、どのようにゴール勝負をするかという思いも生まれ、なんともいえない緊張感が漂い始めた。



好ペースを刻みつづけた先頭集団と、その後に続くサポートカーの隊列

ここで先頭の5名から、山本大喜が単独で飛び出した。メイン集団の吸収を嫌い、他のメンバーの足試しや、逃げ切った場合の先頭内でのゴール勝負となることを見越しての動きだろう。だが、残るメンバーは ここまでかなり消耗しており、反応することすらできなかった。



集団から飛び出した山本大喜(キナンレーシングチーム)。協調しゴールを目指せるメンバーは他に誰もいなかった

残り4名はこの動きで勢いを失い、全力でペースアップするメイン集団に吸収された。集団は猛然とペースを上げ、残り5km地点で1人粘り続けた山本大喜をも飲み込み、レースは完全に振り出しに戻った。
残り距離も少なく、レースの勝敗は、集団スプリントで決する流れに向かっていく。



ペースアップするメイン集団。先頭には、宇都宮ブリッツェン、キナンレーシングチームが隊列を組む

ラスト300m、フィニッシュへ続く緩やかな登りストレートを先頭で駆け上がったのはホワイトジャージを着る渡邊諒馬だった。さらにブルージャージの小野寺玲、スプリンターの孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)が続く。
そのまま150mを切ると孫崎が渾身のスプリントを放った。小野寺も迫るが、孫崎の鋭い加速に及ぶことはできなかった。孫崎は追走を振り切り、両手を広げてフィニッシュラインに飛び込んだ。今季のレースでは勝負に絡む動きを多く見せてきた孫崎だったが、これが、待望のロードレース初勝利となった。



渾身のスプリントで今季初勝利を勝ち取った孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)

孫崎は表彰台で「レース前半は後手を踏み、あまり良くなかった」と、反省の念を語った。終盤に集団の牽引に加わり、勝利を引き寄せたチームメイトへ敬意を表し「これはチーム での1勝だと思っている」と感謝。ラストのスプリントでは、以前小野寺選手に先に仕掛けられて負けた経験があり、「今日は反省を踏まえ、先にかけ始めたことが功を奏した」と、にこやかに語った。今季は、なかなか強みを活かし勝利を飾れないレースが多かったスパークルおおいたにとっては、とても嬉しい一勝となった。



表彰台に並ぶ上位3名。3位には新城雄大(キナンレーシングチーム)が入った

各賞リーダーには変動なく、全員がジャージを守ることになった。



各カテゴリーの首位選手には変動なし。年間ランキングの確定も近づき、リーダー争いも真剣味を増している

この後のレースは、10月には、JCLポイントが付与される大分のUCI(世界自転車競技連合)認定の国際レース2レースと、栃木2戦、山口2戦が開催される。11月の沖縄のUCIレースが最後のJCLポイント付与レースとなり、ここでランキングが確定する。
JCLレースとしては、あと4戦を残すが、ポイント付与レースが3つ残されていることもあり、逆転の可能性もまだまだあるだろう。この日優勝した孫崎も4位までランキングを上げている。選手たちのモチベーションは極めて高く、今年の個人総合優勝が誰になるのか、目が離せない。

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【結果】JCL第8戦・高知県宿毛市ロードレース
1位/孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)2:51’19”
2位/小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)
3位/新城雄大(キナンレーシングチーム)+0’01”
4位/渡邊諒馬(VC福岡)+0’01”
5位/小石祐馬(チーム右京 相模原)+0’02”

【JCL各賞リーダージャージ】
イエロージャージ(個人ランキングトップ)
増田成幸(宇都宮ブリッツェン)

ブルージャージ(スプリント賞)
小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)

レッドジャージ(山岳賞)
ネイサン・アール(チーム右京)

ホワイトジャージ(新人賞)
渡邊諒馬(VC福岡)

画像提供:ジャパンサイクルリーグ(JCL)

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(今年のJCLプロロードレースツアー)
JCL開幕戦!カンセキ真岡芳賀ロードレース
JCL第2戦・カンセキ宇都宮清原クリテリウム
JCL第3戦・広島トヨタ広島ロードレース
JCL第4戦・広島トヨタ広島クリテリウム
JCL第5戦・コーユーレンティアオートポリスロードレース
JCL第6戦・コーユーレンティアオートポリスロードレース(第2戦)
JCL第7戦・キナン古座川ロードレース