楢崎正剛氏が「能力と将来性の両方で期待できる選手」と絶賛するGK スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構…
楢崎正剛氏が「能力と将来性の両方で期待できる選手」と絶賛するGK
スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」との連動企画で、元日本代表として活躍した楢﨑正剛氏は、2022シーズンの明治安田生命J1リーグ、9月の「月間ベストセーブ」にサンフレッチェ広島の大迫敬介のプレーを選んだ。第30節の名古屋グランパスとの一戦。今シーズンの最後を飾る月間ベストセーブとは、どんなシーンだったのだろうか。
◇ ◇ ◇
リーグ戦で現在3位と、来季のAFCチャンピオンズリーグ出場権獲得が明確に見える位置につけ、カップ戦のJリーグYBCルヴァンカップと天皇杯ではいずれも決勝に駒を進めた。今シーズンからミヒャエル・スキッベ監督が指揮を執っているサンフレッチェ広島の戦いぶりには目を見張るものがある。
すべてのコンペティションで高水準の成績を残しているチームのゴールマウスを守るのが大迫だ。外国籍GKが増えつつあるJリーグにおいて、20代前半で定位置を確保しているGKの存在は貴重。元日本代表GKの楢﨑氏は以前から注目していた選手だったことを明かした。
「Jリーグは外国籍選手のGKや経験豊富なGKが多い中で、大迫選手は10代の頃からコンスタントに出場機会を掴んでいました。若くして場数を踏めるというのは経験値がモノを言うGKにとって重要な要素で、彼は年代別代表の常連でもあった。最近では日本代表にも選ばれる機会があるように、現時点での能力と将来性の両方で期待できる選手。ベテランの林卓人選手にポジションを譲った試合もありましたが、この世界に競争は付き物ですし、難しい時期を乗り越えてどんなパフォーマンスを見せているか気になっていました」
新進気鋭のGKがポテンシャルを見せつけたのは、第30節・名古屋グランパス戦の後半20分の場面だ。広島は自陣でボールキープしていたが、DF塩谷司が名古屋の快速FW永井謙佑にボールを奪われ、失点の危機を招いてしまう。
そこに大迫が立ちはだかる。塩谷からのバックパスを受けるための準備から即座にゴールキーピングに動作を切り替え、正確な横移動と距離を詰める動作で永井のシュートをブロック。さらにセカンドボールを拾ったDF森下龍矢のシュートも横っ飛びで防ぎ、連続してピンチを救った。
一連のプレーを楢﨑氏が丁寧に解説する。
「まず味方がボールを持って後ろを向いたタイミングで、GKとしてパスの受け手になるアクションを起こし、そのためのポジションを取っています。ゴールマウスから離れるかどうかの判断は味方との距離や角度にもよりますが、この場面では自分の右足側にボールをほしいと要求していることが映像でも分かります」
楢崎氏から大迫へのアドバイス「うまくいかない経験がのちの成長につながる」
実際には永井の鋭い出足によってボールを奪われ、判断の変更を迫られた。ここで楢﨑氏がポイントに挙げたのは、大迫の足の運びだった。
「GKであればアクシデントが起きることは常に想定していますし、今回は目の前で起きたことなのでしっかりと認識できたはず。大迫選手はボールとゴールの間に入りつつ、永井選手との距離を詰めてシュートコースを限定しました。左右の動きだけでなく前後の動きも入る足の運びが素晴らしく、このシーンにおけるベストの選択だったと思います。
あえて下がって構えるGKもいるでしょうし、それはそれでメリットがあるのでどちらが絶対に正しいとは一概に言えません。ただ、この状況では永井選手の自由を奪ったことがとても大きかった」
セカンドボールへの反応も早かった。森下がトラップしたことでわずかな時間が生まれたとはいえ、ここでも足を動かしながら判断する必要があった。
「大迫選手としては常に動きながら行わなければいけない守備で、最後は間に合わないのでダイビングする形になったのでしょう。DFもカバーに入っていたので、自分から遠いコースは味方にある程度任せるという判断も働いたと思いますし、守備陣として協力して守ることはとても大切。絶体絶命のピンチを救うには、このセーブしかなかったと思います。
DAZNで解説をしていた佐藤寿人さんが『足が動いている』と話していましたが、それはGKにとってすごく大事なポイントです。ダイビングやジャンプといった動作も大切ですが、それ以前に足が動かないと元も子もありませんから」
この試合、広島はスコアレスドローながらアウェイの地で勝ち点1を持ち帰ることに成功。直近のゲームで川崎フロンターレに0-4と大敗していた悪い流れを断ち切り、大迫は連敗回避の立役者となった。
7月のEAFF E-1サッカー選手権2022にも日本代表の一員として出場し、第2戦の中国戦でも完封した大迫。着実に成長しているように見えるが、昨夏に開催された東京オリンピック2020ではメンバー入りしながら出場機会は訪れなかった。湘南ベルマーレのGK谷晃生に定位置を譲る形で2番手に甘んじるという苦い経験を、今後の成長につなげたい今シーズンでもあった。
幾多の修羅場をくぐり抜けていた一方で、控えGKの立場で過ごした時間もある楢﨑氏が大迫の心境を読み解いた。
「東京五輪に関しては、直前まで『自分が(正GKに)一番近いところにいたのに』という思いがあるでしょうし、ベンチから試合を見ているのは正直とても悔しかったはず。でもサッカーにはワールドカップ(W杯)という最高峰の舞台があります。リーグ戦での出番から遠ざかった時期があったように、もしかしたら自分を責めるようなポイントがあったのかもしれない。
ただ個人的にはそういった経験すべてが力になると思います。僕自身、うまくいっているよりも、うまくいかない経験がのちの成長につながったと思える経験がある。謙虚に努力できるタイプならもっともっと成長できるはずなので、このままJリーグでコンスタントに経験を積んで大きな舞台に立てる選手に成長してほしい」
今年11月に開幕するカタールW杯の日本代表候補にも名を連ねるが、息の長いGKというポジションにおいてはキャリア序盤に過ぎないだろう。広島の育成組織で頭角を現してトップチームでも足場を築きつつある大迫敬介が、日本の正守護神としてゴールマウスを守る日が訪れるかもしれない。(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)