GIオークス(5月22日/東京・芝2400m)からおよそ5カ月の休養を挟んで、ぶっつけでGI秋華賞(10月16日/阪神・芝2000m)に挑むスターズオンアース(牝3歳)。勝てば、史上7頭目の三冠牝馬誕生となる。 はたして、その可能性はどれ…

 GIオークス(5月22日/東京・芝2400m)からおよそ5カ月の休養を挟んで、ぶっつけでGI秋華賞(10月16日/阪神・芝2000m)に挑むスターズオンアース(牝3歳)。勝てば、史上7頭目の三冠牝馬誕生となる。

 はたして、その可能性はどれほどのものだろうか。



桜花賞、オークスと春のクラシック二冠を遂げたスターズオンアース

 まず、秋華賞に管理馬を出走させるライバル陣営はどう見ているのか。

「春の二冠馬ですからね、どの陣営も『能力的に一枚上』ということは認めています。ただ一方で、『どうやっても勝てない、というほど抜けた存在ではない』『つけ入る隙は十分にある』と見ている陣営も少なくありません」

 関西の競馬専門紙記者がそう語るように、多くの陣営が「逆転のチャンスはある」と踏んでいるようだ。

 では、そうしたライバル陣営はスターズオンアースのどこに、「つけ入る隙がある」と見ているのか。

 第一に、オークス後に判明した骨折によって、約5カ月の休養を強いられ、ぶっつけ本番になってしまったこと、だ。

 近年のGI戦線を見てみれば、有力馬がぶっつけで挑むことは決して珍しいことではない。アーモンドアイやデアリングタクトといった三冠牝馬の先輩たちも、オークスからぶっつけで秋華賞に臨んできっちり結果を出している。

 だが、スターズオンアースの場合、予定どおりのローテーションだったアーモンドアイやデアリングタクトとはやや状況が異なる。骨折によって、ぶっつけせざるを得なくなった、という事情がある。

 幸いケガの程度は軽く、骨片をとり出す手術もうまくいったという。術後の経過もよく、「順調に回復している」と伝えられている。

 実際、帰厩してからの調整も順調に進んでいるようだ。2週前の追い切りでは、「馬体が緩く、動きもピリッとしない」と不満を漏らしていた陣営が、主戦のクリストフ・ルメール騎手が騎乗した1週前の追い切りではかなりの好感触を得て、管理する高柳瑞樹調教師は「(本番までには)もう一段、上がる気がする」と、状態面のさらなる上昇への手応えを口にした。

 とはいえ、稽古はあくまでも稽古だ。稽古はよかったのに、本番でさっぱり、という例は競馬では事欠かない。馬の状態の善し悪しは、実際にレースで走ってみるまでわからない。

 つまり、スターズオンアースの状態面は本当に万全と言えるのか?――これが、ライバル陣営の言う「つけ入る隙」のひとつだ。

 さらに、ライバル陣営がスターズオンアースの最大の"アキレス腱"と見ているのが、モタれ癖だ。

 この懸念材料によって、クラシック前は再三足踏みを余儀なくされてきた。GI桜花賞(4月10日/阪神・芝1600m)の前、スターズオンアースは2戦目の未勝利勝ち以降、勝ちきれないレースが続いた。1勝クラス、GIII戦、GIII戦と、3着、2着、2着に終わっている。

 いずれも敗因は、モタれ癖が出たことだった。先述の専門紙記者が言う。

「最後の勝負どころで追い出すと、必ず右にヨレる。それで、真っ直ぐ走れなくて、その分、負ける。桜花賞前の3戦では、すべてそういう負け方でした」

 それでも、桜花賞では馬群を縫って快勝した。大舞台を迎えて、モタれ癖は解消されたのか? というと、そうではないらしい。専門紙記者がその点について解説する。

「桜花賞では最後の直線で馬群が固まって、スターズオンアースは一瞬、進路を失いかけました。でも、わずかな隙間をこじ開けるようにして、抜け出してきた。実はスターズオンアースにとって、このタイトな馬群が幸いした。

 馬群の隙間に入ったことで、モタれ癖を出すヒマがなかったわけです。その意味では、ラッキーな結果だったと言えます。もしあれがラッキーではなく、モタれ癖が解消されての結果だったとすれば、その時に手綱をとっていた川田将雅騎手が、次のオークスで乗り替わることはなかったと思います」

 続くオークスではどうだったのか。専門紙記者が続ける。

「オークスではルメール騎手が騎乗して、大外8枠18番発走から中団の外目をラクに追走。直線に入ってからも外に進路をとって、手応えに余裕があった。それでまた、モタれ癖を出さずに済みました」

 モタれ癖は、稽古や馬具を工夫することで矯正されることがある。馬自身の成長によって、次第になくなることもあるという。しかし、ずっと治らないこともあるそうだ。

 ではその後、スターズオンアースのモタ癖は解消されたのか?――これこそが、ライバル陣営にとっては大きな「つけ入る隙」となる。おそらくスターズオンアース陣営も、レースから遠ざかっている分、この点については不安を抱えていることだろう。

 加えて、今年の秋華賞の舞台は阪神・内回りの芝2000m。カーブがきつく、直線が短い点が特徴だ。

 阪神・外回りコースの桜花賞や、広々とした東京コースのオークスに比べると、「気を遣うことが多い」と言える。それだけ、まぎれも出やすい。この難コースを克服することも、課題のひとつになるだろう。

 スターズオンアースにとって、課題は山積みである。三冠達成への道のりは、かなり険しいと見る。

 だが、多くのファンが「せいぜい脇役」と見て、7番人気の低評価だった桜花賞を快勝した。続くオークスでも主役になれなかった(3番人気)が、横綱相撲で完勝した。

 2000年代に入ってから、桜花賞、オークスの二冠を遂げた馬は6頭。このうち、2009年のブエナビスタを除く5頭が三冠を達成している。

 すなわち、スターズオンアースの三冠達成の確率は8割強である。心配の種は多いものの、逆境をはね退けて三度、世間の評価を覆してもおかしくない。

 注目の秋華賞。スターズオンアースは絶対女王として君臨することができるのか。ゲートインまで、まもなくである。