ジャパンオープンに出場した紀平梨花 9月下旬の中部選手権では、10月8日のジャパンオープンを回避するかもしれないと話していた紀平梨花(トヨタ自動車、20歳)。大会前日には、出場を決めた理由をこう話した。「中部選手権のあとで(負傷した右足首に…



ジャパンオープンに出場した紀平梨花

 9月下旬の中部選手権では、10月8日のジャパンオープンを回避するかもしれないと話していた紀平梨花(トヨタ自動車、20歳)。大会前日には、出場を決めた理由をこう話した。

「中部選手権のあとで(負傷した右足首に)少し痛みが出てやめようかと考えましたが、MRI検査をしたら骨折は悪化していなく、徐々にやっていけば大丈夫だと(医師に)言われました。『悪化したらどうしよう』という不安もあったけど、その結果で気持ちも変わって。

 もともと出場のオファーを受けた時も、有観客の大きな会場での試合は今の私には経験になると思って、ギリギリの状態でも出たいという考えもありました。練習はまだ控えめにしているけど、少しずつ試合の雰囲気を思い出すためにも、出てみようと思いました」

あくまでも全日本選手権に照準

 今シーズンの大きな目標にしているのは12月の全日本選手権という気持ちに変化はない。中部選手権では3回転ジャンプはサルコウのみに抑えていたが、今大会は増やしていた。右足に負担がかかるルッツとフリップはまだ封印しているが、試合前に出した構成予定では、3回転はサルコウとループ、トーループの3種類。だが本番ではループの2本は2回転に抑えていた。

 氷上に上がって名前がコールされる前にも3本ほどのジャンプを跳んでいた紀平。落ち着いた雰囲気で滑り出すと、最初の3回転サルコウに2回転トーループをつけて連続ジャンプにした。そして、ダブルアクセル+2回転トーループを跳ぶと、2回転ループから3回転トーループにつなぐ。

「滑る氷だった」と話していた中部選手権とは違って、少し抑え気味だったが、丁寧につなげていく滑り。だが、演技後半に入ると最初の3回転サルコウは前につんのめるような着氷になり、GOE(出来ばえ点)で0.86点減点。次のダブルアクセルも止まるような着氷になってしまい、2回ほどターンをしてから1オイラーと2回転サルコウをつけて何とか3連続ジャンプにしたが、0.77点減点された。

 それでも、そのあとは2回転ループをしっかり決め、チェンジフットコンビネーションスピンのあとのコレオシークエンスとステップシークエンスは、ともに1.17点の加点をもらって流れを取り戻した。

 ルール変更で難しくなったスピンも、コンビネーションスピンだけはレベル3だったが、中盤のフライングシットスピンと最後のレイバックスピンはレベル4にし、ステップもレベル4。得点は中部選手権を15.64点上回る113.44点を獲得。6人中5位という結果ではあったが、納得の表情で演技を終えた。

復調への歩み「収穫あった」

 ジャパンオープンは日本、欧州、北米の3地域が1チーム男女各2人の団体戦形式で合計点を競う。結果として日本が2018年以来の優勝を果たし、紀平は「チーム戦だったので自分が悪いほうに引っ張ってしまわないか不安でしたが、演技に集中することができたし、他の人たちがすばらしい演技をしてくれて優勝できたのでホッとしています」と笑顔を見せた。

「ジャンプはすごくいい感覚があって......。今は練習を控えているけど、ミスやケガをするリスクを取るくらいだったら今できるジャンプを、と。少ない練習でも決められる自信のあるジャンプを今回は入れるようにしていました。

 今回もミスはありましたが、中部選手権より大きなミスは少なかったと思うし、課題でもあった体力もけっこう戻ってきている気がしていて。会場はけっこう暑くてきつかったけど、最後まで集中して滑りきれたので、収穫もあった試合だったなと感じています」

 全日本選手権で勝負をするためには、トリプルアクセルや4回転は難しくとも、基礎点の高い3回転ルッツや3回転フリップが必要になってくる。その道のりはまだ少し長そうだが、焦らずに、「まずは疲労骨折の完治を目標にしている」という紀平。復調への歩みを着実に一歩ずつ進めている姿を見せた。