法大1回戦に先発した慶大・増居翔太【写真:小林靖】

 エースが復活を印象付ける完封劇だった。慶大は8日に神宮球場で行われた東京六大学野球秋季リーグ、法大1回戦に5-0で勝利した。先発した増居翔太投手(4年)は9回115球を投げ被安打2、1四球、5三振を奪ってリーグ戦初完封。3年春から左のエースとして先発を任されてきたが、リーグ戦24試合目の登板で初の完封となった。

 同じ滋賀の高校出身の法大の左腕・尾崎完太投手(3年)との、白熱した投手戦となった。ともに5回まで無失点投球。6回に四球と安打で1死二、三塁のピンチを招いたが、宮崎秀太外野手(4年)に粘られながらも9球目の外角スライダーで空振り三振。浦和博外野手(3年)は2球で追い込むと、3球目の直球で三ゴロに打ち取ってピンチを脱し、グラブをパチンと叩いた。するとその裏、押し出し四球とスクイズで2点を先取。エースの粘りが、流れを呼び込んだ。

 増居は「とにかく先制点を取られないことを意識して投げていました。6回のピンチのところで集中力を切らさず投げられたのはよかったと思います。最後の方はちょっと力みもあったんですけど、最後まで自分のピッチングをすることができたと思います」と振り返った。

9回115球を投げ被安打2、無失点でリーグ戦初完封【写真:小林靖】

 堀井哲也監督も、左腕について「結果として2安打完封。やっと名実ともにエースとして確立してくれたかなと。後半戦に向けて非常に大きい完封だと思います」とうなずいた。

 名実ともに--。こう語ったのは今春の不調があったからだ。1年春からリーグ戦に登板し、3年からは左のエースとして春秋リーグ制覇に大きく貢献。しかしラストイヤーとなった今春の調子は、本来のものではなかった。直球の球速は140キロ前後も、コーナーに制球しキレのいいボールで空振りが奪えるのが持ち味だが、制球に苦しむ場面が多かった。与四死球率は3年春は2.7、同秋は2.88だったものの、6.48と悪化。打線の援護もあり4勝(1敗)の成績を残したが、3年時は春秋ともに2点台だった防御率は、4.54で終えていた。

「試合でバッターに向かっていけなかった」と増居は春を振り返る。今夏は、とにかく打者に投げ込むことをテーマとし、シートバッティングなどで投げ込んだ。その努力も実り、今季はここまで6試合に登板して与四死球率も1.88と良化。防御率も0.70となり、本来の実力を発揮している。

「最後まで自分のピッチングをすることができた」と振り返った【写真:小林靖】

 この日は1年秋に記録した146キロを1キロ更新する147キロもマークしたが、「上げようとして上げたわけではない」と淡々。増居の中では球速はそれほど重要なものではなかった。「(球速は)最低限は求められると思うんですけど、それ以上になってくると、やっぱりコントロールと球のキレ、いかに速く見せるかというのを大学1年終わって2年あたりから気付き始めた」。好きな投手に挙げるソフトバンク・和田毅投手のように、スピードガンの数字よりも、フォームのバランスや制球に重きを置いて、ピッチングに磨きをかけてきた。単にスピードを追い求めなくなった結果、3年春には「年々スピードは下がってきている」と語ったほどだ。

 この日視察した日本ハムの稲葉篤紀GMも「球速は出ているほうではないですけど、こちらが見ているよりはベース上での速さもあると思う。真っすぐを速く見せる術というのを持っている」と評価した。

 彦根東(滋賀)3年時には選抜3回戦の花巻東(岩手)戦で最速140キロながら9回まで14奪三振でノーヒット投球。延長10回に失点して敗れたが、“9回ノーヒッター”はファンに大きな印象を与えた。あれから4年。20日に控えるドラフト会議に向けてプロ志望届も提出している。チームは現在2位、ラストシーズンも後半戦に入り、次週には首位・明大との大一番も控える。高校時代は3年夏が不完全燃焼に終わり、悔しさも経験した。1年から投げてきたリーグ戦のマウンドに立てるのも、あと少し。大学では、笑って終わってみせる。

(Full-Count 上野明洸)