今年6月にセカンドシーズンの幕を閉じた日本発・世界初のプロダンスリーグであるDリーグは2日、ついにサードシーズン開幕の時を迎えた。先シーズンまではコロナ禍で無観客での開催を余儀なくされた期間もあったが、この開幕戦は会場チケット完売の満員御礼…

今年6月にセカンドシーズンの幕を閉じた日本発・世界初のプロダンスリーグであるDリーグは2日、ついにサードシーズン開幕の時を迎えた。先シーズンまではコロナ禍で無観客での開催を余儀なくされた期間もあったが、この開幕戦は会場チケット完売の満員御礼での開催となり、確かなる盛り上がりを見せていた。

◆ディフェンディング・チャンプKOSÉ 8ROCKSに新ディレクターKaku就任「初の2連覇目指す」

■全チーム総当り戦となったサードシーズンが開幕

サードシーズンからは、新チーム「Valuence INFINITIES」が加わり、全12チームでの戦いが繰り広げられる。だが、それだけでなく、今シーズンから大きくルールが変わり、全チームが総当たりのバトル形式となる。1ラウンド内で、1チーム vs. 1チームで6つのマッチが行われ、マッチごとに勝者が決まり得点が付くというゲーム的要素が加わり、見る者にとってもエンターテイメント的な楽しみがさらに加わった戦いへと変貌を遂げたのだ。

先シーズンまでのルール下でも、1チーム8人で舞う踊りに明らかな勝敗がつけられ、さらに少なからぬ賞金が付与されるという形式は本邦初で、これまでのダンス界に衝撃を与えるに十分なインパクトがあったが、このルール改定でさらにこれまでの戦いに熾烈さとすごみが加わるであろう。

また既に、このサードシーズン「D.LEAGUE22-23」全12ラウンドでの各チームの対戦相手は、最終までの全ラウンド分が対戦表となって公表されているため、各チームの戦略や戦い方も大きく変わっていくことが予想される。そしてその対戦表を見ながら、それぞれの対戦マッチに思いを馳せ、ドキドキと落ち着かない心持ちになっているファンも多いに違いない。

■「Let’s Battle!」の掛け声とともに開幕戦スタート

そしてこの開幕戦で、「Let’s Battle!」という掛け声とともに記念すべき1st MATCHを戦ったのは、マイクスタンドと共にドラムの音を巧みに使い“That’sエンターテイメント”な踊りを見せた先攻「avex ROYALBRATS」と、イエローの蛍光ラインが効いた衣装で躍動感溢れるパフォーマンスを行った後攻「dip BATTLES」。この初戦は3-3のDRAW(引き分け)という幕開けとなった。

2nd MATCHは、魂の叫びを鍛え上げた体でうたいあげる肉体派集団、先攻「FULLCAST RAISERS」と、クラクションやエンジン音など、街角で聞こえてくる音と共に空間をたのしく操った後攻「SEPTENI RAPTURES」。どちらにも魅了されたが、4-2で美しき肉体派RAISERSに軍配が上がった。

3rd MATCHは銅像を模した衣装とメイクで見る者の時を止めてしまうような不思議な時空を創り出した先攻「SEGA SAMMY LUX」と、前シーズンの覇者であるブレイキン集団、後攻「KOSE 8ROCKS」。8ROCKSはディレクターKakuのヘッドスピンをはじめ、安定のすご技を繰り広げたが、特異な世界観で魅せたLUXが4-2で勝利をさらった。

妖艶さで攻めたBenefit one MONOLIZ(C)D.LEAGUE22-23

4th MATCHはキュートなガールズチームが一皮剝け、迷いなき強い女性のイメージを打ち出した先攻「USEN-NEXT I’moon」と、独自の強い世界観と共に揺るぎなき妖艶さで攻めた後攻「Benefit one MONOLIZ」。I’moonの健闘は目を引いたが、MONOLIZの自信に満ちたVOGUEが6-0で圧勝し、今ラウンド唯一の「SWEEP(6点満点)」の追加点1も獲得することとなった。

5th MATCHは今治タオルを広めるというユニークなテーマを展開したFISHBOY率いる芸達者集団、先攻「CyberAgent Legit」と、心臓の音のようなパーカッションを使い、ヒップホップのカルチャーと共に雰囲気ある舞台を創出した今シーズン初参戦の後攻「Valuence INFINITIES」。INFINITIESは新しい風を感じさせたが、4-2でエンタメ性高いLegitが勝利を掴んだ。

6th MATCHは、組み技と複雑なフォーメーションを自在に操り、見る者を独自の世界に惹き付けた先攻「KADOKAWA DREAMS」と、グラスやボトルを使い、大人びたバーの騒めきとキャバレーのような華を演出した後攻「LIFULL ALT-RHYTHM」。DREAMSのダンススキルは今回も光っていたが、雰囲気の醸成に秀でたALT-RHYTHMが1-5で勝利を収めた。

■バトル形式導入で予感させる“嵐の展開”

このサードシーズン・ラウンド1は、最終的な全体スコアによって、「SWEEP点」獲得で勝ち点が加わったBenefit one MONOLIZが1位となり、LIFULL ALT-RHYTHMが2位という結果となった。新ルールの適用によって、先シーズンまでは、なかなか上位に食い込めなかったこの2チームがトップに躍り出ることとなり、今シーズンの展開は予断を許さない、ある意味“嵐の展開”となるかもしれないと予感させる結果となった。

バトル形式になったことで、各チームの個性がより際立って見えるようになったようにも感じる3年目のDリーグ。ここからまた、2週間に1つ作品を作り上げ、踊り込んで試合に臨むという過酷な戦いが始まり、彼らの戦いは、2023年4月23日開催のチャンピオンシップへと続いてゆく。

輝ける全Dリーガーの健闘と、ダンスの神の加護が彼らに降り注ぐことを祈りながら、今シーズンもさらに風格を増してきた全12チームの戦いを見守りたい。

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著者プロフィール

Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター

『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。