BreakingDown株式会社CEO/エグゼクティブプロデューサー/クリエイティブディレクターYUGOインタビュー 後編(前編:魅力は「素人が元プロを倒すことも起きる面白さ」。YUGO氏が語るストーリーの重要性と見せ方>>)Breakin…

BreakingDown株式会社CEO
/エグゼクティブプロデューサー
/クリエイティブディレクター

YUGOインタビュー 後編

(前編:魅力は「素人が元プロを倒すことも起きる面白さ」。YUGO氏が語るストーリーの重要性と見せ方>>)



BreakingDownの今後について語った、エグゼクティブプロデューサー / クリエイティブディレクターのYUGO氏

――11月3日に開催予定の「BreakingDown6」のオーディションには、約2000人の応募があったそうですね。

「応募はすごく増えています。方法が書類じゃなくて動画なので、送るほうもけっこうカロリーを使うと思うんですよ。書類だったらもっと人数が増えたかもしれません」

――過去2回行なわれたオーディションの本番でも、参加者はあの手この手でアピールしていました。

「各々が自分で考えた脚本を持ってきますよね。参加者はそれを提出して、僕らがその場で調理をする。ホントにみんな真剣勝負です。『うわ、こんなことしてきた。さぁどうする?』みたいな感じで、その場その場で機転を利かせて、ここは出る、出ないを判断している。緊張感がありますし、こちらも終わったあとはどっと疲れます(笑)」

――闇雲にケンカを吹っかけるだけではいけないでしょうし、醬油を頭からかぶった『醤油ニキ』のような奇抜な行動も「二番煎じ」になってはいけない。参加者は苦労しそうですね。

「みんながどういうことをしてくるのか、楽しみにしています。ただ、パイプ椅子やマイクを蹴り飛ばすのはいい加減に勘弁してほしいので、釘を打ち込んで固定してやろうかと思ってます(笑)」

――コンテンツとして成長を遂げている一方で、懸念材料はありますか?

「懸念というか、課題はたくさんあります。経営者目線の話をすると、PPV(有料コンテンツに料金を支払って視聴するシステム)の売上が、コンテンツのバズり方に見合ったものになっていない。僕らはキャッシュポイントの最上位にPPVの売上を置いているので、手を打たないといけないところです。

 これまでの多くの格闘技団体はスポンサーに重きを置いて、その次に会場収入という感じだったんじゃないかと思います。もちろんスポンサーは大事ですが、まずは自分たちで収入を得られるようにならなければいけない」

――PPVについては、スペシャルアドバイザーの朝倉未来さんも『BreakingDown5』のあとに「那須川天心vs武尊戦はPPVを買ってでも見たいけど、『BreakingDown』の試合でPPVを買うかっていうとまた別」という旨のコメントをしていました。

「そうなんです。解決策のひとつとして、今までは全試合を未来さんのYouTubeで配信していましたけど、今後はやらないことも考えています。配信によって広く拡散はしますが、『あとでYouTubeで見られるからPPVは買わない』という人も多いと思うので。今後は海外展開も考えていますし、そこでマーケットが広がっていくと思います」

――YouTubeで再生数が伸びるなかで、内容に関しては賛否の声が挙がっています。否定的な意見についてはどう捉えていますか?

「そういう声がむしろ欲しいくらいです。『好き』の反対は『嫌い』じゃなくて、『興味がない』だと思いますし、『嫌い』と言っている人たちは気にして見てくれている人たち。建設的な否定的な意見もあれば、ただのアンチな人もいますけど、それを気に病むことはありません」

――PPV以外のキャッシュポイントで、現段階で考えていることは?

「ひとつは、グッズ制作です。Tシャツとか当たり前のものから、1分間の試合に絡めた『1分間で必ず〇〇できる××といったものも考えてます。"大人も楽しめるオモチャ"みたいなものも含めて。そういった遊び心のあるグッズも『BreakingDown』だからできることなんじゃないかと。すでに有名なメーカーさんともいろいろ話をさせてもらっています」

――YUGOさん自身も格闘技をやられていましたが、現在の格闘技はどのくらい見ていますか?

「やるほうは好きで練習もしていますが、大会の映像などはそんなに熱心には見てないです。もちろん朝倉兄弟や、自分が関わっている人たちの試合は見ますが。競技化が進んで技術が向上していくと、洗練はされていくんでしょうけど、試合で何をやっているのかがわかりにくい部分も増えていく。一般の方、ライト層のファンにとってはなおさら難解でしょうね」

――ハイレベルな技術の攻防も見ごたえはありますが、「どちらが勝つのか」というシンプルな見方もできると新規のファンも取り込めそうですね。

「日本に格闘技ブームが起こった時、例えばPRIDEであれば高田延彦さんとヒクソン・グレイシーとの試合は、みんながワクワクして見ていましたよね。ただ、どっちが強いのかを競う方法は、今や飽和状態にある気がするんです。ボクシングの井上尚弥選手みたいな世界的なスターが誕生すれば否応なしに盛り上がるでしょうけど、そんな何十年にひとりの選手が出てくるのを待つわけにもいかない。だからもっと雑多に、格闘技経験なども関係なく戦う場として、『BreakingDown』は面白くなるんじゃないかと思っています」

――これまではアマチュアの参加者が多かったですが、今後はプロの選手の参加も示唆されていますね。

「これまでも元UFCファイターの菊野克紀さん、元パンクラス王者の三浦広光さんなども出ていましたが、その人数を少し増やすことをイメージしています。それによって、PPVで見ることを検討してくれる人もいるでしょうから」

――かつて朝倉兄弟も活躍した「THE OUTSIDER」との対抗戦をやるという話も出ていますが?

「そういった話もあります。それも未来さんの発想ですね。正直なところ読めない部分もありますが、僕らがアイディアを形にしていけば、またバズるかもしれません」

――『BreakingDown6』に関しては、他に新しい取り組みなどはあるんでしょうか。

「詳しくは言えませんが、格闘技ファンなら誰もが知る大物選手にオーディションに来てもらえないか、交渉しているところです。前回のオーディションでピーター・アーツさんが来た時も、『ピーターが出るの?』となりましたが、今回も実現すれば相当なサプライズになるでしょうね。ちなみにピーターさんは手術があるらしいので、それが済んだら出場に向けてまた話をする予定です」

――今後の世界的な展開ということも考えると、国別対抗戦といった構想も?

「考えていますよ。未来さんとは『海外支部を作っていきたい』という話もしていますしね。オーディションと1分1ラウンドの試合形式、というパッケージはどこの国でも受け入れられるはず。すでに海外の格闘技団体との交渉も始めています」

――YUGOさんが思う、『BreakingDown』の最終到達点はどこにありますか?

「経営的な部分での目標もありますが、シンプルに『BreakingDown』が世界中で開催されるようになるといいですね。知名度が高くなっていくにつれて、『BreakingDown』に感化されてケンカが起きてしまうといったネガティブなニュースも出てくるかもしれない。でも一方で、本気でケンカをしている人たちを和ませる"中和剤"にもなれるかもしれないとも思っているんですよ。

 殴り合っている2人が、周囲から『お前ら、BreakingDownで決着つけろよ』と言われたら、それが頭をよぎって手が止まるかもしれませんよね。そういう毒にも薬にもなるような存在になれれば、人の意識に刷り込まれる。『BreakingDown』のブランディングの最終到達点はそこだと思っています」

【プロフィール】
 公式Twitter:@RADIOBOOK_inc

(取材協力:BreakingDown株式会社)