「世界最高峰の一戦」とも言われる海外GIの凱旋門賞(10月2日/パリロンシャン・芝2400m)。今年はレースの当該週を迎…
「世界最高峰の一戦」とも言われる海外GIの凱旋門賞(10月2日/パリロンシャン・芝2400m)。今年はレースの当該週を迎えてもなお、フルゲート20頭を大きく超える登録馬が出走態勢を整えていた。
そのため、主催者であるフランスギャロは一時、フルゲートを増やす可能性も示唆していたが、現地時間9月26日に当初の予定どおり、出走馬は20頭を上限とすることを決定。これによって、不確定だった陣営の動向も定まって、9月29日には出馬表が確定した。
そうしたなか、注目されるのは日本から参戦する4頭、ステイフーリッシュ(牡7歳)、タイトルホルダー(牡4歳)、ディープボンド(牡5歳)、ドウデュース(牡3歳)だ。現在の日本競馬を代表する実力馬ばかりで、日本調教馬初の戴冠も期待されている。

昨年は人気薄のトルカータータッソが優勝した
だが、そんな日本調教馬を迎え撃つ外国馬も、強力なメンバーがズラリ。なかでも、怖い存在となるのはどの馬か。これまでの戦績や現状、セールスポイントなどを精査し、吟味していきたい。
最初に触れるべきは、やはり欧州ブックメーカー各社が目下1番人気に推す、アイルランド調教馬のルクセンブルク(牡3歳)だろう。
2歳時に英国のGIフューチュリティトロフィー(ドンカスター・芝1600m)を勝利。その時点で、GI英国ダービー(エプソム・芝2410m)の1番人気という評価を受けたほどの素質馬だ。
しかしその後、GI英国2000ギニー(ニューマーケット・芝1600m)で3着に敗れ、直後に筋肉を傷めて英国ダービー出走は断念することになった。それゆえ、凱旋門賞戦線においてはしばらく影を潜めることになったが、ここにきて一躍脚光を浴びることになったのは、復帰2戦目の前走GIアイリッシュチャンピオンS(レパーズタウン・芝2000m)を快勝したからだ。
加えて言えば、ルクセンブルクの評価を高めたのは、このレースに凱旋門賞に出走予定の有力馬がこぞって参戦していたことが大きい。
フランスダービー(シャンティイ・芝2100m)、エクリプスS(サンダウン・芝1990m)とGI2連勝中だったヴァデニ(牡3歳/フランス)をはじめ、GIパリ大賞(パリロンシャン・芝2400m)の覇者オネスト(牡3歳/フランス)に、昨年のドバイシーマクラシックの勝ち馬でGI通算3勝のミシュリフ(牡5歳/イギリス)。
さらには、アイルランドのGIタタソールズゴールドC(カラ・芝2100m)を勝っているアレンカー(牡4歳/イギリス)、そして日本ダービー馬ドウデュースのオーナーである松島正昭氏が共有するGI馬ブルーム(牡6歳/アイルランド)も出走。
ルクセンブルクはこれらを相手に、直線半ばで抜け出して鮮やかな勝利を飾った。この結果、2歳時の評価が間違っていなかったことを証明し、凱旋門賞でも主役の座に躍り出た。
同馬を管理するのは、世界的な名伯楽エイダン・オブライエン調教師。凱旋門賞では初めての2400m戦、アイルランドとは異なる渋った馬場が課題となるが、同調教師は「問題ない」と強気な姿勢を崩さない。
また、ここで敗れた面々も決して侮れない。どの馬も凱旋門賞で巻き返すだけの力は十分に秘めている。とりわけヴァデニとオネストはともに"ホーム"となるフランスに戻る点は大きい。
続いて、日本馬にとって大きな"壁"となりそうなのは、イギリス調教馬のアルピニスタ(牝5歳)である。昨春から出走取消を1戦挟んで、7戦連続勝利中。このうち、直近5戦はいずれも芝2400m前後のGI戦というのは、かなりの強調材料と言える。
昨年はドイツでGI3連勝を飾って、今年はフランスのGIサンクルー大賞(サンクルー・芝2400m)、イギリスのGIヨークシャーオークス(ヨーク・芝2370m)と、それぞれ鋭い決め手を繰り出して完勝している。
同馬の強みはその秘めた末脚だが、ドイツでGIを3勝しているように、力の要る馬場を苦にしない点も大きな武器。この週末は重馬場が予想されており、アルピニスタにとっては願ってもない条件となりそうだ。
渋った馬場となれば、昨年の覇者トルカータータッソ(牡5歳/ドイツ)も侮れない。昨年は超人気薄で波乱を演出したが、その時と同様の馬場となれば、連覇を果たす可能性は十分にある。
ただ、同馬よりも怖い存在として、ここでピックアップしたいのは、トルカータータッソを管理するマルセル・ヴァイス調教師が「軽視しないほうがいい」と注意を促す、メンドシーノ(牡4歳/ドイツ)だ。
この馬も、深く力の要る馬場は歓迎のクチ。前走のGIバーデン大賞(バーデンバーデン・芝2400m)では、トルカータータッソをアタマ差退けて快勝している。
昨年のGIバイエルン大賞(ミュンヘン・芝2400m)でも、馬場の重いインコースを突いて前出のアルピニスタと僅差の勝負を演じている。しかも、昨年トルカータータッソの手綱をとったレネ・ピーヒュレク騎手が、今年はこのメンドシーノの鞍上を務めるという。不気味な存在と言える。
最後に取り上げたいのは、イギリス調教馬のウエストオーバー(牡3歳)だ。
前走のGIキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(アスコット・芝2390m)では、1番人気に推されながらスタート直後から折り合いを欠いて、6頭立ての5着と惨敗。凱旋門賞においては、欧州各ブックメーカーの評価は6番人気相当の評価にとどまっている。
しかし、同馬は3走前の英国ダービーで圧巻のレースぶりを披露している。最後の直線を迎えて「ここから」というところで、脚色がなくなった馬たちに囲まれて完全に行き場を失ってしまったのだが、わずかな隙をついて外に出すと、猛烈な伸び脚で強襲。スムーズだったら......と思わせるキレ味を見せて3着と奮闘した。
そして、続く2走前のGIアイリッシュダービー(カラ・芝2400m)では、英国ダービーでのうっ憤を晴らすかのように、2番手追走から直線で一気に突き抜けていく。最後は後続に7馬身差をつける圧勝劇を演じた。
キングジョージ6世&クイーンエリザベスSでは苦杯をなめたものの、潜在能力の高さは凱旋門賞出走予定馬のなかでもトップクラス。日本では欧州の各ブックメーカーよりもさらに人気薄となるかもしれないが、軽視は禁物。日本馬にとって、手強いライバルになりそうだ。