「世界卓球・日本代表連載」、開幕まであと3日―第2回は長崎美柚 世界卓球団体戦(テレビ東京系&BSテレ東で連日放送)が30日に中国・成都で開幕する。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、4年ぶりの開催となる世界最強国決定戦。男女別に行われ…

「世界卓球・日本代表連載」、開幕まであと3日―第2回は長崎美柚

 世界卓球団体戦(テレビ東京系&BSテレ東で連日放送)が30日に中国・成都で開幕する。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、4年ぶりの開催となる世界最強国決定戦。男女別に行われ、日本は男子4人、女子5人が代表に名を連ねた。「THE ANSWER」では開幕4日前から当日まで連載を実施。日本代表全選手の想いを伝え、大会を盛り上げる。

 27日の第2回は長崎美柚(みゆう・木下グループ)が登場。2019年は快挙の連続で注目を浴びたが、コロナ禍の影響で破竹の勢いが止まった。団体戦は2大会連続代表入りの20歳。次世代のエース候補が、昨年の代表落ちで流した涙を糧に世界と戦う。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平、協力=テレビ東京)

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 2019年、止められそうにない快進撃だった。9月のアジアジュニアで日本人初優勝を飾り、中国人選手の連覇を21でストップ。11月には世界ジュニアで日本人初制覇した。快挙はシングルスだけじゃない。12月、木原美悠(みゆう)とペアを組んだITTFワールドツアーグランドファイナル準決勝で世界卓球女王の中国ペアから大金星。そのまま大会を制し、年間女王に輝くと、「Wみゆう」として一躍脚光を浴びた。

 だが、17歳の勢いは突如ストップした。相手は未曽有のパンデミックだった。

「毎日練習。中学1年生から日本に長い期間いたことがあまりなかったので、凄く違和感がありました。正直、早く試合がしたいっていう気持ち。モヤモヤがありました。そのままの勢いで行きたかったんですけど、断ち切られた感じがして。凄くアンラッキーだった。なんかもったいないなっていう感覚」

 長崎は抗うことができなかった当時を振り返る。20年の世界卓球は中止に。「今できることを一つずつ頑張ろう」。着実に、一歩ずつ。21年4月からはTリーグの所属先を、木下アビエル神奈川から大阪の日本生命レッドエルフへ変更した。

「2024年のパリオリンピックを目指すにあたって、自分がどこで卓球をしたら一番強くなれるのか。それを考えた時に、自分にとって厳しい選択をした方がいいと思った」

 リーグ3連覇中だった強豪に入り、2学年上の伊藤美誠、早田ひな、平野美宇らを脅かす存在として地力をつけていった。

 21年の世界卓球は個人戦。「やっぱり代表になりたい。自分がどれだけできるか試したい」。強い気持ちで8月末の代表選考会をターゲットにした。しかし、大会前から調子を崩し、予選リーグを2位通過。決勝リーグを前に涙が止まらなかった。

「次の試合もずっと止まらないまま試合に入っていた。気持ちが凄く崩れていて、自分の中で記憶に残る大会だった」

「実力で勝たないと自分たちの出場機会はない」、代表入りへ伊藤美誠と激突

 上位2人が代表入りできた中、5位に終わった。世界卓球個人戦はシングルスとダブルスで行われるが、選考会はシングルスのみで争われる。「2人で一緒に行こうね」と約束していた木原も出場できず、一人で勝ち抜く難しさを思い知らされた。

「やっぱり先輩方は凄く強いので、卓球の実力で勝たないと自分たちの出場機会はないんだなっていうのを実感しました。ワールドツアーではダブルスだけエントリーさせてもらっていたけど、その時はジュニア枠(若手枠)。でも、世界選手権はシングルスで勝たないと、ダブルスも組む機会を与えてもらえない。あそこでシングルスで勝ちたいという思いが強くなりました」

 言わずもがな実力主義の世界。悔し涙と勝利への執念を糧に、長崎は強くなった。

 今年3月の代表選考会。4強入りで世界卓球の出場が決まる中、準々決勝で伊藤と激突した。相手が本調子ではなかったとはいえ、東京五輪の金銀銅メダリストと接戦。サウスポーから繰り出される強打を武器にゲームカウント4-2で制した。嬉し涙を流し、同じく代表入りした木原とハグ。成長を示し、約束を果たした。

 団体戦は18年に続く2大会連続だが、当時は出番なし。今回は勝負所で起用される可能性も十分にある。3大会連続銀メダルから51年ぶりの優勝へ。伊藤、早田、木原、佐藤瞳と臨む今大会。個性豊かなメンバーを「カラフルな虹みたい」と表現した。

「みんな普段から明るくて、凄く強気なイメージ。全員が凄い強みや特徴を持っている。絶対誰にも真似できない特徴、技術、気持ちだったり、少し似てるようで少し違う。赤、オレンジ、黄色、緑、青みたいな。合わさったら凄く綺麗に並ぶ。けど、一人ひとりの良さを引き立たせる。全員がピタッと一つになったら本当に誰も止められない。そうすれば一番になれると思います」

 一度は止まった快進撃。今度は5人で歯車を合わせ、新しい時代を動かしていく。

(第3回は戸上隼輔が登場)

 ◆世界卓球 9月30日からグループリーグが行われ、上位16の国と地域が10月5日からの決勝トーナメントに進出。テレビ東京系&BSテレ東で連日放送。中継キャッチフレーズは「新時代の、目撃者になる。」(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)