首都リーグが面白い! 9月3日に開幕した、首都大学野球秋季リーグ戦。今季も週末ごとに熱くて見ごたえのある戦いを繰り広げている。これから観戦してみたいと考えている人の後押しになればと、第2週までの各チームの戦いぶりと戦力についてまとめた。…
首都リーグが面白い!
9月3日に開幕した、首都大学野球秋季リーグ戦。今季も週末ごとに熱くて見ごたえのある戦いを繰り広げている。これから観戦してみたいと考えている人の後押しになればと、第2週までの各チームの戦いぶりと戦力についてまとめた。
武蔵大学 勝ち点2 勝率1.0 春3位
桜美大戦 勝ち点1
〇 8-2
〇 7-1
東海大戦 勝ち点1
〇 8-2
〇 7-1
秋季リーグ戦は2019、20、21年と3年連続で2位。今年の春は、最終順位こそ3位だったが最後まで優勝争いをした。首脳陣、ナイン共に、今年のチームは優勝を狙えるという手ごたえを感じている。
一言で言えば「元気」な野球をする武蔵大。野手は「3球で終わってもいいから初球からどんどんいけ」という山口亮監督の言葉を受け、ファーストストライクから積極的にバットを振る。リーグトップの打率.500(9月24日現在)でチームをけん引する中島将喜主将(4年・前橋商)、1年春から全試合連続出場を続け、今季は大きくバッティングフォームを変えた四番・松下豪佑外野手(4年・佼成学園)、東海大2回戦で2打席連続本塁打を打ち7打点をたたき出した林田庸内野手(4年・利府)が揃うクリーンアップの破壊力は抜群だ。
今季、新しくレギュラーに定着した小林令外野手(4年)も、東海大1回戦で値千金の勝ち越しソロ本塁打を放った。武蔵大は、平日の練習を学生のみで行っているため、リーグ戦に出場できるかどうかは土日のオープン戦の結果にかかってくる。「4年間誰よりも練習を頑張っていた」と言われる小林も、首脳陣の前で結果を出したことで、最後の秋にレギュラーを掴んだ。自由度が高い反面、完全実力主義というシビアな世界で生きているのが武蔵大ナインだ。
必然的に、他チームに比べてサインプレーなどの練習をする機会も少ないと思われるが、攻撃も守備もひとりひとりが自分の役割をしっかりこなし、負けに繋がるような大きなミスも少ない。
試合に勝つためには投打のバランスが大切だ。武蔵大は投手陣も充実している。先発では、春に防御率0.70とリーグトップの成績を残した松崎公亮投手(2年・聖徳学園)はまだ本調子と言い難いが、サイドスローの小林匠投手(1年・星槎国際湘南)が計算できるようになった。
「日体大戦で1イニング投げて2失点したことが忘れられない」と春の悔しい気持ちを胸に、今季は2枚目の先発として役割をまっとうする。自信のあるコントロールに加えて、ウエイトトレーニングなどで下半身を強化し、球速もアップ。130キロ後半~140キロ前後のストレートに、スライダー、カーブ、チェンジアップなどの変化球で緩急をつけて打者を打ち取る。
先発が2枚揃ったことで、春は先発だった鉄腕・田中啓斗投手(3年・日大二)をリリーフに回すことができた。「いざとなれば田中がいる」と思えば、まだ経験の少ない投手をリリーフで試す余裕も出てくる。
そんな投手陣を巧みにリードするのが、斉藤北斗捕手(4年・日大鶴ケ丘)だ。元外野手で、捕手デビューは今年の春。そうとは知らない東海大の井尻陽久監督が、武蔵大と試合をするたびに「あのキャッチャーにやられたよ」「キャッチャーがいいよね」「キャッチャーがピッチャーの特徴を理解してうまくリードしているよ」とべた褒めする。投手からの信頼も厚い斉藤の存在は、武蔵大の飛躍に大きく関係していると感じる。そんな斉藤の腕には、チームメイト数人から誕生日にもらったという名前入りのリストバンドが光っていた。
春は、勝った方が優勝という最後の決戦で東海大に2連敗を喫してしまった。今季は、その東海大に2連勝し、すでにリベンジを果たしている。このまま快進撃を続けて、初優勝を手にすることができるか。
筑波大学 勝ち点2 勝率0.8 春4位
日体大戦 勝ち点1
〇 3x-2
⬤ 5-6x
〇 4-3
桜美大戦 勝ち点1
〇 5-0
〇 6-0
春は開幕から6連敗と苦しんだが、今季は日体大に2勝1敗、桜美林大に2連勝で開幕から2カード連続勝ち点を獲得。茨城県にある国立大学の筑波大は、コロナ禍において部活動の制限が厳しく、他チームに輪をかけて大変な日々を過ごしてきた。今年の夏は、やっと練習やオープン戦が充実。リーグ戦前の準備は、今までよりしっかりできた。
「高校野球を引退してから毎日10時間勉強をしました」とは春の首位打者、石毛大地外野手(3年・相模原)の言葉だが、筑波大は推薦枠が少ないため、ほとんどの選手が一般受験で入学している。それをふまえて、川村卓監督はこう話した。「もともと素質のある子が入ってくるとは限らないチームなので、どうやってチームとしてまとまっていくか、攻めていくかなどをきちんと学んでいかないと勝てるチームになっていきません。そういう時間や、学んだことを実戦でぶつけてみてどうかという時間も今まではとれませんでした。それがこの夏はできた。(オープン戦も)多すぎて苦しくなるほどこなせてきたので、その成果が出たと思います」。
開幕カードの日体大戦は「延長11回サヨナラ勝ち」「3時間40分戦った末、押し出し四球でサヨナラ負け」「延長10回押し出し四球で勝ち」とタフな3連戦だった。なんとかもぎとった勝ち点1は、チームを勢いづけた。桜美林大戦は、夏の成果が大いに出たと言える2連戦になった。
打の中心となっているのは、清水大海外野手(4年・日立一)だ。1年秋から出場している清水は、もはやチームの顔とも言える。大学最後の秋はここまで18打数9安打 打率.500(9月24日現在)と絶好調。ライトの守備でもファインプレーを連発し、4年間の集大成を見せつけているかのようだ。そうやって活躍できるのも、サポートしてくれる仲間がいるからだと言う。「4年生の選手はもう10人くらいで、あとはサポートに回っているのですが、開幕の日も朝6時半からバッティング練習を手伝ってくれて、そのあと見送ってくれたんです。同期や後輩の人柄が良くて、筑波は本当に温かいチームだと思います」。ちなみに、清水も「トイレと食事の時間以外はずっと勉強して」筑波大に合格したそうだ。
今季は主に、一番・石毛、二番・永戸涼世内野手(2年・八千代松陰)、三番・清水と並んでいるが、桜美林大1回戦から仲井淳人内野手(4年・兵庫星陵)が四番に入ったことで、より繋がる打線になった。オープン戦では全然打たなかったという仲井だが、好調を維持できれば上位打線の得点力はかなり高くなる。
投手陣は、なによりも西舘洸希投手(4年・盛岡三)が投げられるようになったことが大きい。春は故障で出遅れた。今季は、先発の柱として活躍して欲しい。先発のもう一枚は、左腕の村上洸典投手(3年・今治西)だ。桜美林大1回戦では6回無失点と好投。また、ずっとリリーフで登板してきた寺澤神投手(3年・鳥栖)も桜美林大2回戦で先発し、8回無失点の投球を見せた。寺澤だけではなく、リリーフ陣は先発と言われたらいつでも先発することもできる投手が揃っている。
コロナ禍で苦しみ続けたこの3年、やっと光が見えてきた。「一心」で優勝を目指す。
日本体育大学 勝ち点1 勝率0.6 春2位
筑波大戦 勝ち点0
⬤ 2-3x
〇 6x-5
⬤ 3-4
明学大戦 勝ち点1
〇 4-0
〇 4-1
292人の大所帯、「二刀流の矢澤」として大きな注目を集めている矢澤宏太投手・外野手(4年・藤嶺藤沢)を中心に、能力の高い選手が多いチームだ。
矢澤をはじめ、松浦佑星内野手(3年・富島)、本間巧真外野手(3年・東海大相模)、中妻翔外野手(3年・常総学院)、古滝友哉外野手(2年・健大高崎)など足の速い選手も多く、それぞれがその特性を最大限生かした攻撃ができれば、得点力はかなり上がる。
開幕カードの筑波大3連戦は、とても苦しい戦いとなった。1回戦は、延長タイブレークとなり最後はエラーで筑波大にサヨナラ勝ちを献上。2回戦は両軍合わせて18安打23四死球と荒れた試合になり、日体大がサヨナラ四球で勝利。3回戦は再び延長戦へ突入、10回表に決勝点となる四球を与え、筑波大が勝ち点1を手にした。両軍ともエラーも多く、前向きにとらえれば悪い部分をここで出し切ったともいえる3連戦だった。
そのおかげか、次の明学大1回戦は4-0で快勝。初先発の相馬綾太投手(2年・志学館)が5回3安打無失点、二番手の箱山優投手(2年・日体大柏)が4回1安打無失点と、日体大は矢澤だけではないというところを見せた。辻孟彦コーチは、相馬を先発に抜擢した理由を「オープン戦からずっと安定して持ち味の強いまっすぐを投げられていたので」と話す。相馬自身も「変化球でカウントをとって勝負球はまっすぐというのが自分のスタイル。(筑波大戦での)初登板はかなり緊張していてベンチでも『大丈夫か?』と言われていたけど、今日は自分のピッチングができました」と、笑顔を見せた。
セカンドのレギュラー中島優仁内野手(3年・佐賀商)、期待のルーキー田邊広大捕手(1年・常総学院)が故障で離脱したが、そこもカバー。古城隆利監督が「守備範囲は松浦の方が広いが、肩が強く、深いところからの送球が良い」と信頼する小吹悠人内野手(2年・山梨学院)をショートに、ショートの松浦をセカンドに置いた。レフトの守備範囲近くの深い打球を捌き送球する場面では、小吹の肩が生きた。
また、打撃のいい田邊とポジション争いをする高橋建心捕手(3年・桐光学園)が、明学大2回戦で自身もびっくりのソロ本塁打を放った。「打ったときもホームランだと思わなくて、入ったところも見えていなかったので、周りの歓声で気づきました」。高校通算1本の高橋にとって、大学でも初の本塁打となった。
打撃で目立った活躍を見せているのが、五番・相澤利俊内野手(3年・山梨学院)だ。5試合終えて打率.375、5打点を挙げている。珍しい左投げ右打ちということで個人的にも注目している選手だが、いろいろな形で点に絡んでおり目が離せない。さらに得点を挙げるためには、四番・本間の活躍が必要不可欠だ。「足」の選手というイメージが強く四番タイプではないが、古城監督は「他のチームに比べるとスケールは小さいが信頼できる中心打者です」と言い切る。まだ本調子とは言えない本間が打ち始めれば、相澤との繋がりもでき勝利に近づくだろう。
もちろん、「投打でドラフト1位の評価をもらえる選手でありたい」という矢澤のプレーも、日体大の見どころのひとつだ。
東海大学 勝ち点1 勝率0.5 春1位
明学大戦 勝ち点1
〇 3-2
〇 2-1
武蔵大戦 勝ち点0
⬤ 3-6
⬤ 4-16
リーグ優勝75回を誇る、東海大。昨秋、今春とリーグ連覇をしている。毎シーズン観ていると当たり前の光景なので麻痺してくるが、東海大の試合前のノック、ファウルの打ち方などを見て「やっぱり地力のあるチームは違うね」と言ったある記者の言葉に、各々が高校時代から強豪校で積み重ねてきた基礎の厚さを実感。
そんな東海大だが、ここ2年は開幕から苦しい試合が続き、終盤にかけて強さを取り戻していくという展開が多い。今季も、勝ち点こそ手に入れたが、開幕カードの明学大2連戦に苦しんだ。そして、次の武蔵大に対しては2連敗で勝ち点を落とした。特に2回戦は7回表まで0-11で負けており、危なく7回10点差以上のコールド負けを喫するところだった。
春は7勝無敗だった左腕、岩本真之介投手(2年・市和歌山)の不調は痛手だ。球威、コントロール共に、本来の岩本らしさがまだ見られない。明学大との開幕戦では3回2/3 2失点で降板。なんとか2失点で抑えられたが、7安打3四球という内容だった。明学大が岩本を研究してきた結果でもあるが、そんな相手を上回る投球ができてこそ岩本だ。
もうひとりの左腕、諸隈惟大投手(2年・東海大相模)は、明学大2回戦で143球1失点無四球完投とさすがの投球を見せたが、武蔵大2回戦では3回2/3 7失点(自責6)という結果に。東海大が本来の強さを取り戻すには、二枚看板の復活が必要不可欠だ。
リリーフ陣は、明学大1回戦で好リリーフを見せた中尾剛投手(4年・東海大菅生)、後藤丈海投手(3年・八戸学院光星)など豊富にいる。安定感のあるリリーフエースと呼べるような存在がいれば、もう少し楽な投手運用になるだろう。
攻撃面では、一番・金城飛龍外野手(3年・東海大相模)、二番・森球紀内野手(3年・東海大静岡翔洋)と経験豊富な3年生から主将の小松勇輝内野手(4年・東海大相模)、四番・吉田元登内野手(4年・東海大相模)と続いていく打線は、繋がれば大量得点も望めるが、金城が武蔵大1回戦で死球を受け肩甲骨を痛めた。2回戦は、森を一番に置いて、二番には井尻陽久監督が「期待している」と話す森下晴貴外野手(2年・東海大菅生)が入った。
森も一番という打順は多く経験しており、多彩な攻撃が可能な選手だ。参考にしているのは「同じ左バッターで二塁打も多い広島東洋カープの坂倉将吾選手」だという。ちなみに、「球紀(たまき)」という珍しい名前には「野球に限らず球技を何かやって欲しいという両親の思い」が込められているそうだ。
9月24日現在、打撃成績(打率)十傑に東海大の選手はひとりも入っていない。春、野手が1点しか取れなかった試合で完封した岩本は、7試合投げ4完投(1完封)防御率0.95という成績でチームを何度も勝利に導いた。そろそろ調子を上げてきていることが理想ではあるが、岩本が不調だとすれば、今度は野手が助ける番だ。特に、小松、吉田は4年間の集大成を見せて欲しい。
桜美林大学 勝ち点0 勝率0.0 春5位
武蔵大戦 勝ち点0
⬤ 2-8
⬤ 1-7
筑波大戦 勝ち点0
⬤ 0-5
⬤ 0-6
昨年春の王者、桜美林大が今年は苦しんでいる。山本雅樹投手(4年・中越)、土生翔太投手(4年・横浜)、岡田海希人投手(4年・上野学園)、磨龍輝内野手(4年・沖縄尚学)、河原木皇太外野手(4年・横浜)、森田智貴内野手(4年・霞ケ浦)など優勝を経験したメンバーの多くが最後のシーズンとなるため、有終の美を飾りたいところだが、なかなか投打が噛み合わない。個々を取り上げると魅力的な選手がたくさんいるチームであるからこそ、今の状態はもどかしい。
4年間頑張ってきた上級生が活躍するのは大学野球の理想であると思うが、なかなかチームの状態が上がってこない今はキラリと光る1年生が目に入ってくる。
まず、投手では髙安悠斗投手(1年・花咲徳栄)が武蔵大1回戦でリーグ戦初登板。2回無失点と躍動した。「8月のオープン戦で早稲田大の蛭間選手などと対戦してしてみて、レベルの高さを感じました。今日の武蔵大もそうですが、高校生と違って大学生は初球からどんどんスイングしてくるし、対応力が違います」と大学野球の難しさについて語っていたが、ストレートの質には自信を持っている。「大学生が相手になり木製バットに変わったという点で、空振りを取れたりとまっすぐで押せることが増えてきているので、これからも継続していきたいです」。
ずっとレギュラーだった同じ左投げ左打ちの稲村紀外野手(3年・健大高崎)に代わって、今季一番・レフトでスタメン出場しているのが鎌倉洸太外野手(1年・関東一)だ。取材をするのは初めてだったが、この空間だけ時間の流れが違うのかと錯覚するくらい、独特の間で話す鎌倉にペースを持っていかれる。今までの経験から、こういう独特の雰囲気を持っている選手は大物になる可能性を感じる。どんな質問にも、しっかりした答えを持っているところも将来性がある人の特徴だ。頭の中がきちんと整理されていなければ、スムーズに言語化できないからだ。
高校野球引退後の8月、桜美林大の練習会に参加し、藤原悠太郎コーチにバッティングを教わった。背中の肉離れを経験したこともあり、大きくバッティングフォームを変え、キレが増す大学生の球に対応するため、上から叩くのをやめてレベルスイングにした。「落ちる球によく手が出てしまうので、自分のポイントまで呼び込むことで見切る練習、ショートの頭の上を目がけて打つという練習をしています」と、苦手の克服にも取り組んでいる。
高校のときから慣れ親しんだ「一番」という打順。「今はまだヒットが1試合で1本しか出ていないので、筑波大の石毛さんのような嫌なバッターになって出塁を増やしていきたいです。一番バッターの役目は、まず1打席目にしっかり出塁すること。それがまだできていません。ピッチャーはファーストストライクが欲しいと思うので、甘くなるその球を振っていく。自分がチャンスで決めると言うよりは、うしろの先輩たちに繋ぐという思いです。頼れる先輩たちがたくさんいるので、そういう先輩たちと長く野球ができるようにしたいです」と、ここからの巻き返しを図る。
個人的には、タイトルをとるという目標も掲げ「打率をあげること、ミート力も必要、足を売りにしているのでセーフティーとか小技系ももっと磨いていかなきゃいけない、選球眼も大事、状況判断も結構大事です」と、そのために必要なことを整理する。
一番のこの男が初回から出塁して勢いをつけることができれば、今の状況を打破できるのではないだろうか。
明治学院大学 勝ち点0 勝率0.0 春1位(二部)
東海大戦 勝ち点0
⬤ 2-3
⬤ 1-2
日体大戦 勝ち点0
⬤ 0-4
⬤ 1-4
春に二部で優勝し、帝京大との入替戦を制して2008年春以来の一部復帰を果たした。万全の状態で秋を迎えたかったが、新型コロナの影響で7月には約2週間の活動停止もあり、準備が整わないままの選手もいる。そのうえ、開幕カードは春の優勝チームである東海大、続いて2位の日体大と戦わなければならないというハードな日程。
それでも、東海大との開幕戦では、右のエース・佐藤幹投手(4年・駿台甲府)が7回まで無失点の好投を見せた。スタミナ切れで8回に先頭から二者連続四球を与え降板となったが、敵将が「バテてくれて助かったけど……」とこぼすほどの投球だった。左のエース・大川航希投手(4年・志学館)は準備不足の選手のひとりだが、それでも今までの経験を活かして工夫しながらチームのために腕を振る。調子が上がってくるのはこれからだ。
リリーフで頼りになるのは、片渕暖也投手(3年・伊豆中央)。東海大1回戦の8回表にワンポイントで登板し四番の吉田元登内野手(4年・東海大相模)を中飛に打ち取ると、2回戦は7回裏から投げ2回2安打無失点、日体大2回戦では4回裏からのロングリリーフで5回1安打無失点という結果を残した。「テンポ、勢い、声という技術的な面とは違う部分で勝負しています」と言うが、サイドスローから打たせて捕る高い技術を持っている。先発で投げることもあるという片渕は、来年の主軸となるために経験を積む。
なかなか点に結びつかない攻撃について、金井信聡監督 は「勝ちきれない、というのが今の実力」と言うが、安打自体は多く出ている。「一部でも通用する打撃だということはわかった」というのも、また真理だろう。
一番には俊足の古谷大聖内野手(4年・志学館)を置き、繋ぐ野球で得点を重ねたいが、一部の投手を前になかなかうまくいかない。春に二部で首位打者(打率.414)、ベストナインを獲得した上野隆成外野手(4年・日大三)は「二部の投手が悪いということではないですが、(一部の投手は)球速以上にまっすぐの伸びを感じたり、まっすぐがいい分、他の変化球も活きていると感じます」と言う。ただ「4試合やったらみんな一部にも慣れてくると思います」とも言う。ナインの本当の力が発揮されるのはこれからのようだ。
上野が自信を持ってそう言うのには理由がある。上野が明学大に入学した当初、野球部は「これじゃ強くなれないな」という雰囲気だった。「1年目の夏に今の監督さんになって、みんなで『切り替えていこう』と話しました」。そこからの取り組みが二部優勝、一部昇格に繋がった。「今ではどこの大学にも負けないくらいいい練習をしている自信はあります」と、胸を張る。
そんな上野のことを指揮官は「ちょっと変わったバッター」と言う。「見ていると、なんかタイミング合わないし打てるのかなと思うのに、体勢が崩れてもちょこちょこバットを合わせてきて打ったりする。入替戦でも3ランを打っていますし、飛ばすこともできるけど、初球からフワッと当ててポテンヒットを打ったりだとか、相手にとってみれば打ち取りづらい嫌なバッターかなと思います」。
その理由を上野は、日大三高校時代、小倉全由監督に「おまえはバットの根っこから先っぽまで全部使って、形はどうあれとにかくヒットを打て」と言われたからだと話す。就活があったため調整不足でリーグ戦に入った上野にも、少しずつ当たりが出てきた。上野の更なる活躍が、明学大勝利のカギになるかもしれない。
以上、6チームがしのぎを削る首都大学野球秋季リーグ戦。ホームページをチェックし、ぜひ球場で観戦して欲しい。また、現地に行くことが難しい人には、実況、解説も含めて、すべて学生が行っている LIVE配信をオススメする。こちらはこちらで、現地では得られない情報を知ることができる楽しみもある。
今からでも遅くない。首都リーグを観よう。
首都大学野球連盟 (tmubl.jp)
首都劇場LIVE | スポーツブル (スポブル) (sportsbull.jp)