3位決定戦で韓国に勝ち、2大会ぶりのメダルを獲得した侍ジャパン 意地と、そして日本“らしさ”があふれる試合だった。「第30回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」(米フロリダ・サラソタ)で野球日本代表「侍ジ…

3位決定戦で韓国に勝ち、2大会ぶりのメダルを獲得した侍ジャパン

 意地と、そして日本“らしさ”があふれる試合だった。「第30回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」(米フロリダ・サラソタ)で野球日本代表「侍ジャパン」U-18は18日(日本時間19日)に韓国との3位決定戦に6-2で勝ち、銅メダルを獲得した。15日(同16日)のスーパー(決勝)ラウンド初戦で、0-8で大敗した相手から11安打6得点。リベンジを果たした要因はどこにあったのだろうか。

 慣れない天然芝、固いマウンド、木製バット――。何度も言われてきた国際大会ならではの課題は、この試合にはみじんも感じられなかった。中でも大きかったのは初回に1点を先制した後の守備。1死二、三塁のピンチで、ボテボテの遊ゴロを光弘帆高内野手(履正社)がためらわず本塁に送球し、タッチアウト。さらに2死一、三塁では三塁を守る伊藤櫂人内野手(大阪桐蔭)が、三遊間への痛烈なゴロをダイビングキャッチ。アウトを奪い、この回無失点で終えた。

 ピンチをしのいで打線も勢いが増した。2回、1死満塁で黒田義信外野手(九州国際大付)の押し出し四球で2点目を挙げると、松尾汐恩捕手(大阪桐蔭)が最速163キロ右腕・キム・ソヒョン投手から左前2点打。四球で再び満塁とし、前回の韓国戦で失点に絡む失策を犯した渡部海捕手(智弁和歌山)が悔しさをバットにぶつけた。左前へ運ぶ2点適時打で、この回一挙5点を挙げた。終わってみれば、大会初の2桁となる11安打。それまで苦しんできた木製バットで快打を連発した。

ハードスケジュールが日本に味方? 松尾「いい形で作っていけた」

「日本の、基礎がしっかりとした野球は世界でも通用すると思いました」。主将の山田陽翔投手(近江)が言うように、馬淵史郎監督が目指していた「守備からリズムを作る」野球が勝利に直結した。前回の韓国戦では守備のミスが失点につながったが、この日は無失策。中でも、馬淵監督が「ショートは固定する」と信頼を寄せていた光弘が21のアウトのうち7つを奪った。固い守備で、失点を許さなかった。

 ハードスケジュールも逆に味方したようにも思えた。この日の3位決定戦前、日本は前日17日(同18日)に降雨で中断となっていた米国戦の継続試合が行われていた。日本は既に3位決定戦へ回ることが決まっていたため「調整とは言ってはいけないが、いい形で作っていけた」と松尾。剛腕揃いの米国投手陣と対戦したことは、韓国戦に向けて“良い準備”になったようだ。

 一方、韓国は、米国が逆転サヨナラ勝ちを決めた時点で決勝進出の可能性が途絶え、3位決定戦に回ることが決まった。試合時間も対戦相手も直前まで決まらない中での準備は難しいものがあっただろう。

 目標の世界一にはたどり着けなかった。しかし、最後の最後で“らしい”野球でメダルを死守した馬淵ジャパン。「自分たちの野球を信じて、最終的にはいいチームを作れたのかな」と松尾。意地と信念が5年ぶりの銅メダルを日本にもたらした。(川村虎大 / Kodai Kawamura)