3Aでプレーした根鈴雄次氏は「根鈴道場」で小学生からプロまで指導 現状を大きく変えて成功を収めるためには、継続が不可欠と…
3Aでプレーした根鈴雄次氏は「根鈴道場」で小学生からプロまで指導
現状を大きく変えて成功を収めるためには、継続が不可欠と説く。「ラオウ」の愛称で親しまれるオリックスの杉本裕太郎外野手も通う横浜市の野球塾「根鈴道場」を開く元プロ野球選手の根鈴雄次さんは「結果を出すには石の上にも三年」と強調する。かつてパーソナルトレーナーを務めた元西武のG.G.佐藤さんも、継続的なトレーニングで「ガリガリだった」肉体を改造し、3年連続20本塁打以上を記録する選手になったという。
日本人野手初のメジャーリーガーとなった元マリナーズのイチローさんが海を渡る前からエクスポズ(現ナショナルズ)傘下3Aでプレーしていた根鈴さんは、中学生でウエートトレーニングを取り入れていた。日大藤沢高時代は、教科書と一緒にボディビル雑誌を持ち歩き、自分に合ったトレーニング法を模索していた。
当時から日本と米国では野球に対する考え方に大きな違いがあると感じていたという。テレビで見るメジャーリーガーは構え方も個性があり、日本で教わったものとは異なる。「根鈴道場」で伝えている現在の打撃理論のように、日本の常識を疑って、より良い方法を探す考え方は中学や高校の頃から培われていた。
「当時のメジャーリーガーはプロレスラーのような体をしていました。投球の待ち方もスイングの軌道も日本のプロ野球選手と全く違いました。守備もシングルハンドで捕球してランニングスローといったプレーが当たり前で、上手くなる方法は日本で教わっているものだけではないと感じました」
法大時代は元広島・廣瀬氏、元西武・G.G.佐藤氏らにアドバイス
家庭の事情もあって日大藤沢高を中退して米国に渡った後、法大に入学した。この時、根鈴さんの打撃理論やトレーニングに強い関心を示したチームメートが、法大から逆指名で広島に入団し、現在は広島で2軍打撃コーチを務める廣瀬純さんだった。当時は珍しかったウエートトレーニングを積極的に取り入れ、根鈴さんが考案したメニューで筋力を鍛えた。廣瀬さんは3年時の1999年春季リーグで3冠王を獲得している。
この頃から根鈴さんにアドバイスを求めるチームメートは多く、仲間内では「根鈴道場」と呼ばれていた。廣瀬さんの姿を見て、根鈴さんに師事した熱心な門下生が、西武やロッテでプレーしたG.G.佐藤さんだった。現役時代は体重105キロを切ることはなかったというG.G.佐藤さんは法大3年春まで78キロで「カリンコリンのキャラ」だったという。当時は遊撃手で、同級生にはオリックスなどでプレーし、現在は西武の2軍内野守備・走塁コーチの阿部真宏がいたため出場機会がなかった。
G.G.佐藤さんは「化けたいんです」と根鈴さんに教えを求めた。二人三脚で肉体改造に取り組み、3年秋には体重が95キロまで増えた。筋力がついて打球の飛距離がアップ。大学卒業後、米国のマイナーリーグでプレーしていた頃も、西武に入団してからも、ウエートトレーニングを続けた。時には、西武の本拠地でナイターが終わってから神奈川に住む根鈴さんを訪ねて一緒にトレーニングした。根鈴さんはG.G.佐藤さんがプロ野球選手になれた理由を、こう話す。
「短期間でものを見る人は成功できないと思います。何かを大きく変えるには覚悟と継続が必要です」
G.G.佐藤さんは大学3年春まで、スピードを武器にしていた。体重を増やしても50メートル走のタイムは大きく変わらなかったが、瞬発的な動きは遅くなった。20キロ近く体重が増加すれば、ごく自然なことだろう。その分、パワーを手に入れた。根鈴さんは言う。
「ウエートトレーニングで体が重くなって動けなくなるのは通過点なんです。今まで体重78キロで野球をやってきて半年で95キロまで増えたら、脳は追いつけません。1回落ち込んでからが勝負です。継続して訓練し、脳も体も整えていくことでパフォーマンスアップにつながります。人間はやればできるとG.G.が証明してくれたと思っています」
オリ杉本は2018年オフから門下生…「鬼ダウンスイング」で開花
昨シーズン本塁打王に輝いた杉本も同じだ。2015年にJR西日本からドラフト10位でオリックスから指名を受けて入団も、3年間で1軍出場は17試合にとどまり3本塁打。即戦力として期待される社会人出身選手としては、いつ戦力外になってもおかしくない状況に覚悟を決め、2018年オフに根鈴道場の門を叩いた。
根鈴さんが提唱する理論「鬼ダウンスイング」で、打撃フォームの大幅改造に着手した。鬼ダウンスイングは、バットのヘッドを下げてバットを縦に使って投球を捉える。横にスイングする“打撃の常識”を覆す考え方だ。批判的な意見も少なくない中、杉本は根鈴さんを信じてフォームを作り直した。そして、道場に通って3年目の昨シーズン、32本塁打でタイトルを獲得した。
「打撃フォームもウエートトレーニングも、全ての人に同じように合うわけではありません。ただ、継続しなければ、合っているかどうか判断できません。インストラクターの教えはきっかけに過ぎません。試して考えて、自分なりのやり方を見つけるくらい研究しなければ、高いレベルには到達できないと思います」
根鈴さんは今、小学生や中学生にも指導しているが、すぐに結果が出るほど野球は簡単ではないと伝えている。「ウエートも打撃理論も私のやり方が珍しいので、飛びついてくる人は少なくありません。ただ、石の上にも3年なんです」。少年野球の子どもたちが憧れるプロ野球選手も、華やかさの裏で地道な努力を重ねている。(間淳 / Jun Aida)