日本卓球界の至宝、張本兄妹が『卓球ジャパン!』でトーク番組初共演。兄・智和が大逆転劇を見せたWTTチャンピオンズ、そして兄妹で初結成・初優勝を果たしたWTTコンテンダー チュニスの2試合を2人がDEEPに解説してくれた。

前週のWTTスターコンテンダーでは初戦敗退を喫した智和だったが、WTTチャンピオンズでは強豪を連破して決勝進出。中国の主力、林高遠と決勝で対戦した。

序盤は相手の力強い両ハンドドライブに押されて、第1、2ゲームを落としたものの、第3ゲームからはサーブを変更。「今まで下回転とナックルの2種類で攻めていたけど、完全にナックルだけにした」(智和)

あえてサーブを1種類に絞るこの戦術が見事にハマって相手のレシーブミスを誘うと、自身のレシーブでは得意のチキータが決まり始めて互角の展開に変わっていく。

林高遠に対して「基本的にはメンタルのブレ幅は少ないと思っていて、序盤の緊張していない場面ではミスが全くなくて、強打をずっと打ってくる」と評した智和。

しかし「林選手はリードしている時の方が不安そうな顔をする。マッチポイントとっているはずなのに逆に負けてるんじゃないかっていう顔。このゲーム、10-7で僕が勝っている時のほうが生き生きとしている」と、リードした場面での林高遠のメンタルの脆さを智和は見抜いていた。

この第3ゲームは10-7から逆転負けを喫したが、第4、5ゲームはサーブも効き出して2ゲーム連取。第6ゲームは序盤から林高遠の鋭いドライブが炸裂し、リードを許してしまう。

「僕がチキータしたボールに対する処理は、思い切りクロスに引っ張ってくるのでわかっていても間に合わない。チキータエースが取れなければ、(相手に点を)取られるという怖さはありました」(智和)

伝家の宝刀チキータでも簡単には点は奪えず、5-10とまさに崖っぷちに追い詰められた。

「9割ぐらいはやられてしまう。でも1割やりきるしかない、という感じ」と負けを覚悟していたが、ここから林高遠の弱気の虫が顔を出し始めるのだ。

「さっきまであんなにすごかったのに、急に自信がなくなったのかなと思いました」(智和)

その微妙な表情の変化を見逃さず、2連続のロングサーブなど強気のプレーで5本連取して10-10に追いつくと、13-11で智和が奪い返した。

この勢いのまま一気に畳み掛けたいところだが、この後も2人のメンタルバトルが複雑に絡み合っていくのがこの試合の面白いところ。

「あの逆転をしたんだからもう簡単に勝てるだろうっていう気持ちでいました」と序盤で隙があったと語った智和。「でも出足で2本取られた時点で、あれ違うのかなと(笑)」

一方、流れ的には劣勢のはずの林高遠は、逆に開き直ったのか再びアグレッシブな攻めを見せて、智和が2-7と再び離される展開になってしまう。

4-9となった時「もう次は(逆転は)ない」とさすがに諦めの気持ちも芽生えたが、次の林高遠のサーブがバック前に来て、それを智和がチキータレシーブで得点。

「ここでサーブのコースを変えた意味があまりわからない。僕がチキータしやすくなっただけ。もう1回同じフォア前に来ていたらミスしたかもしれない」(智和)

林高遠としては裏をかくつもりだったかもしれないが、智和からすれば不用意とも思えるこの1球が流れを変えることになる。そして再び林高遠の表情は曇り始め、一方智和は怒涛の7連続ポイント。2ゲーム続けての大逆転で劇的な勝利をおさめたのであった。

そして番組後半は妹の美和も登場。ここで明らかになったのが溢れんばかりの2人の兄妹愛だ。

「5個も離れているので本当にかわいいなぁって思ってますね」と智和が言えば、「私のほっぺたがすごく好きでカワイイって(笑)」と美和。

意外な素顔を妹に暴露され、さすがに恥ずかしくなったのか「ちょっといずいです(笑)」と智和は照れ笑い。ちなみに「いずい」とは仙台弁で「居心地が悪い」という意味だ。

そんな兄妹愛がプレーでもナイスコンビネーションプレーを生み出しWTTコンテンダーチュニスでは初結成にして見事初優勝を成し遂げた。

ちなみに今回の結成は、普段のパートナーの早田ひな(日本生命)が今大会に出場しないということで智和から美和を誘ったのだとか。

「右と右のペアっていうのは動きづらいところがあるけど、お互いチキータが得意でその展開で意外と動きやすかったので初めてにしてはスムーズにいった」と智和が語るように初結成とは思えないコンビネーションを見せた2人。

「緊張もあった」という美和も「その緊張よりも試合のスケジュールがきつくて、疲れの方がちょっと勝ってて、とりあえずこの試合を乗り切ろうっていう感じだった」と決勝ではそんな疲れも見せず、懸命に動いて兄のプレーをアシスト。

フルゲームまでもつれたが、智和が常に声がけして美和を引っ張り、見事3-2で強豪台湾ペアを下して優勝を決めた。

「(お兄ちゃんのプレーは)全部かっこいいと思いました。普段と一緒ですごく優しくて頼りになるお兄ちゃんだったのでやりやすかったですし、楽しかったです!」(美和)

ダブルスでも強さを見せた張本兄妹のさらなる飛躍に期待したい。