【DAZN月間表彰】第26節柏戦の好セーブを選出「ここ数年で着実にスケールアップ」 スポーツチャンネル「DAZN」とパー…
【DAZN月間表彰】第26節柏戦の好セーブを選出「ここ数年で着実にスケールアップ」
スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」との連動企画で、元日本代表として活躍した楢﨑正剛氏は、2022シーズンのJ1リーグ、8月の「月間ベストセーブ」に清水エスパルスGKの権田修一の好セーブを選んだ。(文=藤井 雅彦)
◇ ◇ ◇
8月を3勝1分の無敗で駆け抜けた清水エスパルスの守護神といえば、日本代表GK権田修一だ。チームが下位に低迷する状況でも安定したパフォーマンスは健在。肩書きに恥じないクオリティで存在感を示している。
その活躍には元日本代表GK楢﨑正剛氏も「日本代表としてプレーすることでパフォーマンスを上げていると感じますし、彼の場合は海外クラブでプレーした経験も含めて大きいのでしょう。ここ数年で着実にスケールアップしていると思います」と目を細める。
その権田のファインセーブが8月の月間ベストセーブだ。
第26節柏レイソルとの一戦の後半30分、清水が1-0でリードした状況でのワンプレーだった。清水DFが一度はクロスのボールを弾き返したが、これが再び柏のボールに。次の瞬間、ペナルティエリア内の右寄りでボールを持ったMFドッジが強烈なシュートを放つ。これに素早く反応した権田はシュートストップに成功し、ピンチを逃れた。
楢﨑氏の着眼点はこのシーンのみならず、試合全体の流れを踏まえたものだった。
「この試合では権田選手の好セーブの数々で終盤まで失点することなく試合を推移させていました。そして残り時間が15分くらいになった終盤にも、こういったプレーでチームを引き締めている。前半からシュートをしっかり止めてきたことで、体が自然と動く感覚があって動いていたでしょうし、気分的にも良い雰囲気でプレーできていたのかもしれません」
ドッジのシュートは鋭い足の振りからスライス回転がかかり、確実に枠を捕えていた。GKの反応が少しでも遅れていれば、失点は免れなかっただろう。
「スピードのあるボールが飛んできましたが、ファーサイドに来るという予測ができていたのでしょう。簡単なシュートではありませんでしたが、シンプルによく止めたと思います。タイミング、ポジショニング、そしてリアクション。この3つの要素がしっかり重なり、ファインセーブになりました」
この試合、清水は後半アディショナルタイムに失点し、1-1の引き分けに終わる。好セーブを連発した権田にとって満足できる結果ではなかったかもしれないが、楢﨑氏は「展開的には妥当な部分もある」と頷き、こう続けた。
「権田選手の立場からすれば勝ち点3が欲しかった試合だと思いますが、プレーの質そのものはチームに貴重な勝ち点1をもたらすものでした。先制点を与えず、リードしたまま終盤に持ち込むことができたのも彼の力が大きかった。そこはしっかりと評価されるべきポイントだと思います」
残留争いから一歩抜け出した感のある清水において、権田が果たすべき役割は大きい。日本代表としてピッチに立つ機会が多い選手だからこそ、周囲からの要求はおのずと高くなる。
かつて自身も二足の草鞋を履いた楢崎氏から見た権田修一のGK像
目に見えないプレッシャーに晒されているのは容易に想像できるが、そのハードルを飛び越えるパフォーマンスを見せてこそ日の丸戦士にふさわしい。
「日本代表の試合でつかんだ自信や余裕をクラブに持ち込んで高いパフォーマンスを見せる、という流れは実際にあると思います。重要なのは、自分が納得できているかどうか。所属クラブの成績を上げることはもちろん大切ですが、難しい状況でも自分自身に対する要求を上げていかなければいけないですし、それができなければ日本代表のGKとしてやっていけません。並の選手と同じプレーをしていても、周囲は納得しない。期待値が高いからこそ、要求されるレベルも必然的に上がっていきます」
かつて長きに渡り、日本代表のゴールマウスを守り続けた楢﨑氏の言葉には説得力がある。現役時代を回想し、経験談を交えながら所属クラブと日本代表の二足の草鞋について語った。
「所属していた名古屋グランパスが常に優勝争いしていたわけではなく、残留争いも経験しました。それでも苦しいチームを救って勝ち点をもたらし、違いを見せるようなプレーは常に求められていたと思います。だから権田選手がいなければ残留争いでもっと厳しい状況になっていたかもしれない、というくらいの存在感は必要でしょう。すべてを背負い過ぎる必要はありませんが、彼はとても責任感が強いタイプだと思います。もともとシュートストップに強みのある選手で、今の時代は求められることも増えていますが、それにもしっかりと応えられる技術面の高さもある。アベレージが高いGKなのは間違いありません」
日本代表の肩書きを持つがゆえに、時として厳しい声に晒されることもあるだろう。楢﨑氏はこの“宿命”とどのように向き合ってきたのか。
「パフォーマンスが良くなかったと自覚しているときはあまり情報を目に知れないようにして、良かったときはどれくらいの評価なのかを楽しみにしていました(笑)。自分に都合良く捉えることも時には必要ですし、あとは一緒に戦っているチームメイトに助けてもらうことも多かったです。もしミスがあったとしても、フォローしてもらうというよりもイジってもらうくらいのほうがいい(笑)。名古屋ではチームメイトが自分のミスなどを良い意味で茶化してきたりして、それで救われたこともあります。
良くも悪くも影響力が大きいのは明らかですが、日本代表だからパーフェクトというわけではなく、同じ人間です。それよりもミスの次にどうやってリカバーするか、立ち直るかといった部分で振る舞いを求められると思っていました。ワールドカップが目前に迫り、権田選手が現段階で出場に近いところにいるのは間違いないでしょう。それがより大きな力になるのか、あるいはプレッシャーになるのか、ナーバスになることもあって大変だと思うけど楽しんでほしいです」
偉大な先人としてエールを送った楢﨑氏。権田にとってJリーグの終盤戦はカタールでの夢舞台につながる道で、スポットライトを浴びる日々がしばらく続きそうだ。(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)