打っても逆転タイムリー含む2安打 球界きっての理論派として知られ投げる哲学者の異名を取るDeNAのエース・今永昇太投手が…
打っても逆転タイムリー含む2安打
球界きっての理論派として知られ“投げる哲学者”の異名を取るDeNAのエース・今永昇太投手が12日、本拠地・横浜スタジアムで行われたヤクルト戦に先発し7回4安打1失点。自身6連勝を飾り、4年ぶりの10勝(3敗)に到達した。打っても、4回1死満塁で左前へ逆転タイムリーを放ち、2打数2安打2打点1犠打の活躍ぶり。チームは昨季の最下位から大きく巻き返して2位につける。前日11日には首位のヤクルトに優勝マジック点灯を許したものの、可能性がある限り頂点へ視線を向け続ける。
この日の今永について、三浦大輔監督は「調子は良くなかった。狙ったところにコントロールできない割合がいつもより多かったけれど、その代わりストレートで押し込めていたと思います」と評した。実際、初回にいきなり山田に先制ソロを浴び、その後も毎回得点圏に走者を背負った。それでも追加点は許さない。4回2死一、二塁で塩見を迎えると、内角への“クロスファイヤー”で攻めまくった。ワンバウンドのチェンジアップを1球見せた以外は、全てストレート。8球目に内角の147キロで右飛に仕留め、今永は「根負けせずに押し込めてよかった」とうなずいた。
昨季は左肩のクリーニング手術の影響で5勝に終わり、今季も左前腕の炎症で出遅れたが、ここにきてストレートの球威が増している。「相手打者を真っすぐで差し込むための腕の振り方がわかってきて、ファウルや空振りを取れるようになりました」と語るあたりは“哲学者”の面目躍如だ。「真っすぐのキレ自体は、ルーキーの時(2016年)が一番良かったと思いますが、当時は何も考えずに投げていた。今は体の使い方がわかってきましたし、それを言語化できるところが強みだと思います」と、抜群の安定感の要因を明かす。
メンタルトレーニングの権威にも師事
一方で昨年中、スポーツドクターでメンタルトレーニングの権威である辻秀一氏に師事。知人の紹介でオンラインで教えを乞い、今も辻氏の公式動画投稿サイトで勉強を継続している。「良質のパフォーマンスを引き出すための思考法」を学び、効果を感じていると話す。
投手としては抜群の打撃を披露しているのも、偶然ではない。「打席は決して“おまけ”ではない。ホームゲームでは試合前の全体終了後、先発投手陣みんなで室内練習場でマシン打撃をしていますから」と明かす。4回1死満塁では、ヤクルト先発・原の初球のストレートを逆方向の左前へ運び、6回の打席では3番手・星の145キロ速球を中前へはじき返した。プロ7年目にしてマルチヒットは5度目。今季打率.161、通算打率.176は投手としてはトップレベルで、「DeNAの投手陣は打撃にも手を抜かないということを、伝統にしていきたい」とも話す。
首位ヤクルトには6.5ゲーム差をつけられ、優勝マジック11の点灯を許している。斎藤隆チーフ投手は「奇跡というものは、起こそうとして起きるものではない。確かなのは、雑なことをしている限りは決して起きないということ」と投手陣を諭しているとか。だからこそ、今永はお立ち台で「1試合1試合丁寧に勝負して、ファンのみなさんと勝利を分かち合いたいと思います」と“丁寧”を強調した。さすが、どこまでも理詰めである。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)