川崎フロンターレが、力強さを取り戻している。第28節での2位のサンフレッチェ広島相手の快勝は、その象徴だ。大勝は偶然で…

 川崎フロンターレが、力強さを取り戻している。第28節での2位のサンフレッチェ広島相手の快勝は、その象徴だ。大勝は偶然ではなく、導かれたものであった。3連覇へ向けてスパートをかける川崎の戦略を、サッカージャーナリスト・後藤健生がひも解く。

■激しかった立ち上がり

 最初にチャンスをつかんだのは広島。4分、左サイドでの柏好文のスローインからドウグラス・ヴィエイラエゼキエウとつないで、エゼキエウが川崎のペナルティエリア内に進入して入れたクロスを川村拓夢が狙った。直後には、川崎はGKの鄭成龍(チョン・ソンリョン)からのロングボールを追ったマルシーニョがドリブルで広島ゴールに迫り、ペナルティエリア内の深い位置にパスを送り込んだが、追った橘田健人は一歩及ばなかった。

 こうして、前半の25分くらいまでに、両チームはいくつかのチャンスをつかみ合った。

 広島の方は、当然、高い位置からプレッシャーをかけて、「奪ってカウンター」という形を作ることを狙っていた。もちろん、川崎には谷口彰悟ジェジエウという強力なストッパーがいるわけだが、広島の選手たちもこれに負けずにゴール前までボールを運ぶ強さを発揮した。

 4分のチャンスにしても、ドウグラス・ヴィエイラのパスを受けたエゼキエウは相手DFとも接触しながら、強さと速さを武器に抜いていったのだ。

 こうして、両チームともに激しい当たりを繰り返し、インテンシティの高い状態が続いた。

■嵐の前の静けさ

 8分にはジェジエウがドウグラス・ヴィエイラを倒してイエローカードを提示され、17分にはスピードを生かして抜けかけたマルシーニョに対して、広島の若いDF住吉ジェラニレショーンが接触して、両者が小競り合いを起こす。

 しかし、両チームとも序盤戦ではフルパワーを注入して攻撃しかけていたわけではない。立ち上がりは「90分を見据えて、駆け引きをしながら」という時間帯だったからだ。僕は「嵐の前の静けさ」のように感じていた。

 川崎の攻撃も本来の川崎らしくパスをつないでビルドアップする形ではなかった。序盤戦はどちらかと言えばロングボールを使ってカウンター気味に攻撃をしかけていたのだ。「今はリスクを冒す時間帯ではない。相手との駆け引きの時間なのだ」ということを両チームが共通して意識して戦っていたのだ。

■広島が狙っていたポイント

 川崎が狙っていたのは、ロングボールを入れて裏のスペースを狙うことによって、広島のプレーエリアを全体的に押し下げてゲームを支配することだった。

 前半34分に先制ゴールが決まるまでの間に川崎のチャンスは6回あったが、たとえばマルシーニョを走らせたり(4分)、ジョアン・シミッチがサイドを変えるパスを送り、それを山根視来がボレーで狙ったり(15分)、タッチライン沿いにマルシーニョを走らせたりと(17分)、いずれもロングボールを使って相手陣内のスペースを狙うものだった。

 この序盤戦での川崎のロングボールを使った攻撃は、もちろん1本の縦パスでシュートまで行ければそれに越したことはないのだろうが、本当の目的は相手の最終ラインを押し下げることだった。

 つまり、高い位置からプレスをかけてボールを奪おうとする広島を、少しでも押し下げることができれば、広島は狙い通りのプレーができなくなる。そうしてゲームの主導権を取ろうというのである。

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