NPB野球振興室の平田稔室長は危機感持ちながら、明るい未来を描く 一般社団法人日本野球機構(NPB)は野球を普及させる活…

NPB野球振興室の平田稔室長は危機感持ちながら、明るい未来を描く

 一般社団法人日本野球機構(NPB)は野球を普及させる活動を続けている。前回、紹介した「ベースボール型」授業だけでなく、近年、特に力を入れているのが、未就学児向けの「ボール遊び」と「女子野球の裾野拡大」。NPBの活動は実を結びつつある。現場へ足を運んで取り組んできたこともあり、少しずつではあるが手応えをつかんでいるが、NPB野球振興室の平田稔室長が忘れもしない幼稚園訪問での出来事があった。

 NPB、プロ野球の12球団では、未就学児に「投げる」「捕る」「打つ」「走る」などの野球の動きを体験し、楽しんでもらう勉強会を開催している。これは幼児期の発育・運動能力発達の一助となることを願い、実際に指導する際に必要な基礎知識、指導方法などを共有するためだ。2019年に制作した「幼児の楽しいボールあそび活動」という教本には運動能力が高められる細かい動きが記されている。

 現在は未就学児、幼稚園訪問もNPBや12球団は積極的に行っている。だが、2018年12月、幼稚園にボール遊びを教えに行った時、平田室長は危機感が大きく膨らむ一言を聞いたことを忘れない。園長からの言葉にサッカーとの違いを痛感としたと振り返る。

「園長先生に『サッカーは20年前から、こういうことをやっていますよ。野球が来たのは初めてです』と言われました。サッカーとの違いを痛感した出来事でした」

 サッカーやバスケットボールは40都道府県前後にプロチームがあり、それぞれが地元で普及活動をしているという。幼いころから競技に触れれば、子どもたちは興味を持ち、チームに入る可能性は高くなる。野球は未就学児に向けた活動が遅れていた。少子化のペース以上に競技人口が減少している一因と考えられている。

 子どもたちが当たり前のように野球を選んでいた時代は過ぎ去った。競技の魅力を伝えなければ、どんどん競技人口は減っていく。現実を知ったNPBは2014年10月に野球振興室を立ち上げ、その1年半後にはアマチュアと一緒に野球を普及させる「日本野球協議会」が発足した。

 NPBは特に、野球経験がない未就学児を対象にした取り組みに力を入れている。野球界のトップであるプロを管轄する立場であっても、ピラミッドの底を支える世代を広げなければ球界の将来はないと考えているためだ。平田室長は「小学校にあがった時に、野球が選択肢にすら入っていないという調査結果もあります。少なくとも、選択肢の1つとして認められるようにしなければなりません」と危機感を口にする。

 プロ野球12球団や高校、大学などアマチュア団体と連携し、現在は園児を対象としたイベントを開催している。内容は経験者向けに知識や技術を教える野球教室とは違う「ボール遊び」。柔らかいボールやバット、ティースタンドなどを使って、投げる、捕る、打つといった野球の原点を伝えている。

NPB12球団ジュニアトーナメント、ガールズトーナメントで伝えたい野球の魅力

 園児が野球に興味を持って小学生でチームに入った時、目標となる舞台も用意している。年末の恒例となっている「NPB12球団ジュニアトーナメント」は、今年で18回目を迎える。全国各地から世代トップレベルの小学5、6年生が出場する大会で、70人以上のプロ野球選手が過去に出場している。年々、注目を集める大きな大会になってきているが、NPBが伝えたいことは全国のトップを極める「勝利」の大切さではなく、怪我予防のための肘肩検診や球数制限、全員が出場して試合を楽しむことができる「リエントリー制度」など、野球少年の未来、喜びを作る新しいルールに重きを置いている。

 小学生の女子チームを対象にした全国大会「NPBガールズトーナメント」は今夏、10年目となった。参加チームの都道府県数は第1回大会の29から、42まで増えた。競技人口は着実に増加し、女子野球が全国へ広がっている証といえる。平田室長は「大会を開催した当初は、1、2回戦で大差がつく試合が多かったですが、今年の大会を見ていると、都道府県による力の差が小さく、技術が向上していると感じました。継続する大切さが身に染みています。47都道府県全てから参加してもらえるように環境を整えていくことが、普及にもつながると考えています」と成果を口にした。

 野球界は他の競技と比べて、裾野を広げる活動で後れを取った。だが、地道に継続している取り組みが、結果として表れてきた部分もある。「競技人口を増やすためには、野球を経験して、面白さを知ってもらうのが一番だと思います。興味がない子どもや保護者に、いかにアプローチしていくかが課題です。ボール遊びの楽しさを知って野球を始めた子どもたちが甲子園やプロを目指し、そういった夢や目標があることで少年野球の人口が増えるようなサイクルで回していけたらと思っています」と平田室長。競技人口の減少に危機感を抱きながらも、明るい将来も描いている。(間淳 / Jun Aida)