ゴルフ5レディスで初めての最終日最終組 女子ゴルフの国内ツアー・ゴルフ5レディス(千葉・ゴルフ5Cオークビレッヂ)は4日、セキ・ユウティン(ミツウロコグループホールディンクス)のツアー初優勝で幕を閉じた。一方、同じ1997年度生まれの24歳…

ゴルフ5レディスで初めての最終日最終組

 女子ゴルフの国内ツアー・ゴルフ5レディス(千葉・ゴルフ5Cオークビレッヂ)は4日、セキ・ユウティン(ミツウロコグループホールディンクス)のツアー初優勝で幕を閉じた。一方、同じ1997年度生まれの24歳でルーキーの成澤祐美(フリー)は3位から出たものの、最終的に通算4アンダーで27位。初の最終日最終組だったが、上位で戦う厳しさを突きつけられた。しかし、6度目のプロテストを控えていた1年前を思うと、環境は雲泥の差。初めて受けた大歓声に感激した成澤は、「あきらめなくて良かった。またあの場に立ちたい」と燃えている。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)

 戦いを終えた後、成澤はすぐに井上龍太郎キャディーと京都へ移動した。レンタカーを返し、羽田空港から自家用車を駐車していた岡山空港へ。そこから京都まで車を走らせた。ホテル到着は深夜0時を回っていた。

「運転は井上さんがしてくれましたが、これがツアープロの生活なんだと実感しています。毎試合出ている人は体力的にもすごいです。車の中では、私に何が足りなかったのかを話し合っていました」

 一夜明けた5日、成澤は8日開幕の日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯(京都・城陽CC)に向けて練習ラウンド。終了後、電話取材に応じ、初めての優勝争いを振り返った。

「大勢のギャラリーを見て、やっぱり緊張しました。実は1年前、(予選会を突破して)出場した日本女子オープンの公開練習ラウンド日に同じような状況は経験していました。(岡山・作陽高の)後輩の渋野(日向子)と一緒に回ったからです。ただ、今回は試合なので1番(パー4)から手が震えました。ティーにボールが乗るかが心配なくらいに」

 放った第1打は左ラフへ。第2打はピン奥のカラーまで運び、そこからのバーディートライは、ジャストタッチでカップインした。瞬間、「ナイスバーディー!」の大歓声が耳をつんざいた。

大歓声に感動、「いい球打つね~」が聞こえてニヤニヤ

「こんなに大きな声援を受けたことは初めてだったので、感動で体が震えました。セカンドショットを打った後も『あの選手、いい球打つね~』の声が聞こえました。うれしくて、ニヤニヤしていました(笑)」

 勝みなみ、吉田優利との最終組。2人には応援団、多くのファンがついていた。“無名”を自覚する成澤にとっては、地元北海道から駆け付けてくれた父と姉が心の安定剤。だが、自分にも声援が飛ぶことが分かった。テンションを上げ、6番パー5、7番パー4での連続バーディーにつなげた。

「この時点で首位に1打差ということも把握していました。自分のショットが、このレベルでも通用することが分かってきました」

 だが、8番パー3の3パットから歯車が狂い始めた。10番パー4では、第2打がグリーン手前のバンカーに突き刺さって目玉状態に。第3打は出すだけで、1.5メートルのボギーパットも外れてダブルボギーとなった。首位から2打差に10人以上がひしめく状況で、大きく後退。残り8ホールでさらに3つのボギーをたたいた。

「ダボを境に1.5メートルのパットが入らなくなりました。原因はメンタルとストロークの両方だと思います。逆に、勝さんと吉田さんは、厳しいパーパットを何度も入れていました。ここが私との差だと感じました」

 18ホールを終え、リーダーボードの上位に自分の名はなかった。それでも、充実感はあったという。

「悔しかったですけど、楽しかったです。ずっと、目指してきた場所だったので……」

後輩・渋野日向子が快挙達成の年に絶望「何度受けても」

 成澤は、母親の勧めで10歳からゴルフを始めた。中3の2011年には北海道ジュニア選手権で優勝。「年間を通してゴルフをしたい」という思いで故郷を離れ、岡山・作陽高に進学した。3年の全国高校選手権では、1学年下の渋野らと団体の部を制覇。個人の部でも、渋野、畑岡奈紗、稲見萌寧らを上回る2位に入った。それでも、卒業後は「茨の道」が待っていた。プロテストに5度連続不合格。渋野は2度目の受験だった18年テストに合格し、19年には全英女子オープンを制した。成澤は後輩の快挙を喜びつつ、同年テストでは2次予選を突破できなかった。

「この時点で4度目でしたし、『これは何度受けてもダメなやつかも』と絶望的な思いになり、ツアープロを諦めそうになりました。ただ、同じ状況の同級生も頑張っているし、DSPEのメンバーやスタッフの方々に励まされ、何とか立ち直れました」

 DSPEとは、20年春に設立されたツアープロの目指す女子ゴルファーを支援する団体で、月例会や試合を主催している。そこでも切磋琢磨した成澤は昨年11月、城陽CCで開催された21年最終プロテストにカットライン上の20位タイで合格。直後、渋野から祝福のLINEメッセージが届いた。ようやく渋野の背中を追う態勢に入ったが、同年のツアー予選会(QT)は1次で失敗した。

 今季ツアー前半戦出場は、出場選考会を突破したアース・モンダミンカップ(26位)と北海道開催で主催者推薦を得たニッポンハムレディス(19位)のみだったが、リランキング56位に浮上し、後半戦は欠場者待ちで出場できるようになった。ゴルフ5レディス出場も開幕2日前に決定し、第2日を終えて3位。プロテスト合格から約10か月、最終日最終組を経験するに至った。

「1年前では考えられない状況ですし、あの時、あきらめなくて良かったと思います。ツアーに出るようになり、テストに落ち続けた理由は、コースマネジメント力の不足だったと実感しています。そして、今は自分の成長を感じますし、後半、崩れてしまった今回の経験も必ず次に生かします。また、大きな声援を受けられるように」

 DSPEの篠沢雅英マネジャーによると、今年のプロテストも、成澤の高校同級生でもある逢沢菜央、安藤京佳らも含め33人が受験している。「彼女たちにとって、成澤さんは希望の人です」。その状況も自覚し、成澤はプロテスト合格を果たした城陽CCで新たな戦いに臨む。

■成澤祐美(なりさわ・ゆみ)
 1997年11月21日、札幌市生まれ。冬はスキー場、夏はゴルフ場を運営している会社に勤めていた母親から、10歳の時に「ゴルフでもやってみる?」のひと言でクラブを握った。「年間を通してゴルフをしたい」との思いから、岡山・作陽高に進学し、現在も岡山県内に住んでいる。チャームポイントは「なで肩」。趣味は2歳から始めたスキー。160センチ、56キロ。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)