9月2日から4日まで、高崎アリーナ(群馬県高崎市)でWリーグ オータムカップが開催された。オータムカップはWリーグの開…
9月2日から4日まで、高崎アリーナ(群馬県高崎市)でWリーグ オータムカップが開催された。オータムカップはWリーグの開幕前に行われるプレシーズントーナメントで、Wリーグチームに加え、社会人チームも6チームが参加している。その一つ、紀陽銀行のヘッドコーチを務めているのが永田睦子。現役時代はシャンソン化粧品のエースとして活躍。日本代表としてもアトランタ、アテネと2回のオリンピックに出場するなど、長く日本の女子バスケットボール界を牽引してきたスター選手だ。飛び抜けた身体能力の高さを持ち、力強いプレーで縦横無尽に活躍した。

選手たちを励まし続ける永田睦子HC(紀陽銀行)
そんな永田は現役引退後、クリニック活動やテレビ解説などを務めてきたが、4年前から紀陽銀行のヘッドコーチとなった。「クリニックで個々の選手の育成に触れてきましたが、徐々にチームをコーチすることに興味が湧いてきて、そんなタイミングで紀陽銀行さんから声がかかったので」とコーチの道に進んだと言う。
オータムカップでは初日にWリーグのデンソーに敗れたものの、2日目には社会人チームのミツウロコに勝利した。先行するも追い付かれる接戦。ベンチの永田は、選手がミスをしても「大丈夫。慌てないで」と選手を励まし、味方がボールを奪えば「走れ~」と一緒に走りださんばかりに大声を張る。
「試合中に怒ったところで、ミスは取り消せませんから。今大会のような注目される場でやる機会は少ないですし、なかなか力を発揮できないですよね。プレッシャーをかけるよりは、励ました方がいいかなと感じています。もちろん、タイムアウトや試合後などでは、悪かったところを指摘したり、修正するように指示したりはしてますよ」と話す。
「でも『明るいチーム』って思われているみたいで、そうした雰囲気から、うちのチームでやりたいって思ってくれている選手も多いんです」と前向きな姿勢が、チームとしての好評価につながっているとも言う。
一方で、試合中であっても、細かなステップワークやボールのもらい方などを身振り手振りで指導する。
「ファンダメンタルってカテゴリーにかかわらず大事なことですから、ファンダメンタルにはうるさいと思います。結局そうしたところから負けたり、勝ちのチャンスを拾ったりすると思っています」とこだわりを見せる。
「いろいろな指導者の影響を受けて、それをトータルに自分の中で消化し、指導しているつもりではあるんですが、やっぱり中川さん(中川文一氏/シャンソン化粧品時代のHC。アトランタ五輪の日本代表HC)の影響が大きいなって気付くことが多いですね。中川さんもファンダメンタルはとても大切にしていましたから」と、日本リーグからWリーグをまたぎ、10連覇を成し遂げたシャンソン化粧品の名将からの影響は少からずあることを自認する。
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日本のトッププレーヤーとして世界と伍してきた永田に、現在の選手たちに物足りなさを感じることはないかと水を向けると「もっとできるだろうって瞬間的に感じることはあります。でも、彼女たちは昼は仕事をして、それが終わってからバスケットボールの練習に来ているんです。単純に忙しいというだけではなく、職場ではフラストレーションもあると思います。そうしたことをコートに持ち込まずに、バスケットボールと向き合っているんです。私はバスケ一本槍できたので、そんな彼女たちを尊敬してるんです。ほんとにすばらしい子たちなんです」と永田は思いを口にした。
もう一人、社会人チームを率いてきた元Wリーガーがいる。山形銀行の木林稚栄だ。山形銀行のヘッドコーチとなって2年目の木林は、現役時代はENEOS (当時はJOMO→JX →JX-ENEOS)で、連覇を続ける常勝集団の中で8シーズンプレーし、日本代表にも名を連ねたトッププレーヤーだ。引退か現役続行かと悩んでいるときに、アシスタントコーチにとの声をかけられENEOSで4シーズンアシスタントコーチを務めたあと、山形銀行のヘッドコーチに就任した。
山形銀行はオータムカップ初戦でWリーグ勢の山梨QBを破り、大会2日目にはトヨタ自動車と対戦した。トヨタ自動車のヘッドコーチは大神雄子。木林にとっては桜花学園高、そしてENEOSでの先輩。今大会では「山梨QBに勝って、トヨタ自動車に挑戦しよう」と目標を掲げていた相手だ。敗れはしたものの、最後まで食らい付き79-89と好ゲームを演じた。
「主力選手が欠けてはいますが、トヨタ自動車はトヨタ自動車。Wリーグのチャンピオンを相手に、自分たちがやってきたバスケットがどれだけ通用するのか。そういったチャレンジをしようと臨みました。選手たちはそれを100%、120%出してくれたと思います。大満足です」と木林。

選手たちの奮闘を喜ぶ木林稚栄HC(山形銀行)
山形銀行は今大会を見た関係者たちが口々に「いいチーム」と評していたが、木林は「私が身を置いてきたENEOSは、女子バスケットボール界でトップを走ってきていたチーム。ベースにはそのスタイルがあります。Wリーグだから、社会人だからとかではなく、どんなレベルでも通用するバスケットをしっかりと選手たちには身に付けてもらいたい」と指導のコンセプトを明かす。
もちろんENEOSとは選手のサイズも違うが、「基本はディフェンスで粘って、そこからのファストブレイク。それは変わりません。サイズで負けるわけですから、インサイドでやられるのは仕方ありません。ですが、スピードの部分でのミスマッチを生かして、いかに勝負していくか。トヨタ自動車との一戦で、自分たちがやっているバスケットが通用するということに自信を持ってくれたんではないかと思います。これからの戦いに向けて、大きなステップになりました」と笑顔で話してくれた。
永田も木林も、社会人チームがWリーグのチームと対戦できる場があることを歓迎している。トップレベルのバスケットボールを伝えていくうえで、それを体感できる貴重な機会だからだ。それは、選手の気持ちを大切にし、自身がトップレベルに身を置いてきたこそ、より強く感じるものかもしれない。
「自分を育ててくれたバスケットボールに少しでも役に立てれば、還元できればと…。日本のバスケットボールが世界に通用するということが証明された今、自分が教わってきた、やってきたバスケットを選手たちに伝えていくことは意味があることかなと感じています。それも選手たちがいてくれるからこそできることなんですよね」と永田。
木林は「こうした素晴らしい環境で試合ができ、レベルの高いチームと戦え、私たちにとっては失うもののないチャレンジの場」とWリーグが開催するオータムカップやサマーキャンプへの参戦の意義を語り、「うちの選手たちはWリーグでも通用する選手たちが多いと思っています。キャリアの中で、違うラインに乗っていればWリーグでプレーしている可能性があった選手たち。ですからこうした試合で自信を持ってもらえれば」と選手への思いを口にした。
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~オータムカップ試合結果~
<1日目/9月2日>
[Aブロック]
山形銀行 ○79 - 67● 山梨QB
シャンソン ○103 - 51● TOTO
U18日本代表 ●77 - 93○ 三菱電機
[Bブロック]
三井住友銀行 ●59 - 85○ アイシン
日立ハイテク ○89 - 74● 新潟
紀陽銀行 ●59 - 96○ デンソー
[Cブロック]
ミツウロコ ●51 - 61○ アランマーレ
東京羽田 ○82 - 77● 姫路
滋賀銀行 ●55 - 82○ トヨタ紡織
[交流戦]
トヨタ自動車●49 - 75○ 富士通
三菱電機 ●78 - 88○ ENEOS
<2日目/9月3日>
[敗者戦]
山梨QB ○95 - 74● TOTO
三井住友銀行 ●55 - 81○ 新潟
紀陽銀行 ○74 - 58● ミツウロコ
姫路 ●56 - 70○ 滋賀銀行
[Aブロック準決勝]
シャンソン ○81 - 57● 三菱電機
トヨタ自動車 ○89 - 79● 山形銀行
[Bブロック準決勝]
東京羽田 ●53 - 74○ トヨタ紡織
ENEOS ○80 - 62● アランマーレ
[Cブロック準決勝]
日立ハイテク ●52 - 81○ デンソー
富士通 ○72 - 68● アイシン
<最終日/9月4日>
[Aブロック決勝]
トヨタ自動車 ●75 - 76○ シャンソン
[Bブロック決勝]
ENEOS ●62 - 73○ トヨタ紡織
[Cブロック決勝]
富士通 ○67 - 59● デンソー

ブザービーター超ロング3Pで逆転優勝したシャンソン化粧品
(文・飯田康二 写真・石塚康隆/月刊バスケットボール)
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