8月のパ・リーグは西武とソフトバンクが貯金を3つ作った 大混戦が続くパ・リーグ。ここでは8月の「月間MVP」をセイバーメ…
8月のパ・リーグは西武とソフトバンクが貯金を3つ作った
大混戦が続くパ・リーグ。ここでは8月の「月間MVP」をセイバーメトリクスの指標で選出してみる。選出基準は打者の場合、基本はNPB公式記録が用いられる。ただ、打点や勝利数といった公式記録は、セイバーメトリクスでは個人の能力を如実に反映する指標と扱わない。そのため、セイバーメトリクス的にどれだけ個人の選手がチームに貢献したかを示す指標で選べば、公式に発表されるMVPとは異なる選手が選ばれることもある。まずは8月のパ・リーグ6球団の月間成績を振り返る。
○西武 14勝11敗1分
打率.255、OPS.711、本塁打25
先発防御率3.09、QS率65.4%、救援防御率3.13
○ソフトバンク 14勝11敗1分
打率.267、OPS.720、本塁打20
先発防御率4.16、QS率34.6%、救援防御率2.62
○オリックス 12勝10敗1分
打率.262、OPS.746、本塁打21
先発防御率2.30、QS率47.8%、救援防御率3.39
○ロッテ 11勝12敗
打率.235、OPS.699、本塁打21
先発防御率4.76、QS率47.8%、救援防御率2.64
○楽天 12勝14敗
打率.249、OPS.685、本塁打19
先発防御率5.41、QS率23.1%、救援防御率3.02
○日本ハム 8勝13敗3分
打率.222、OPS.615、本塁打13
先発防御率3.65、QS率54.2%、救援防御率2.52
西武とソフトバンクが月間3つの貯金を作り、オリックスが貯金2でロッテが借金1、楽天が借金1と他を大きく引き離すほどの展開にはならなかった。混沌とした8月のパ・リーグで、セイバーメトリクスの指標による月間MVP選出を試みる。
オリックス・山本由伸は月間1勝もQS率100%、奪空振率も先発では高水準
投手部門から。投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。各チームの「RSAA」上位2選手は以下の通り。
○西武 高橋光成3.07、スミス2.25
○ソフトバンク モイネロ3.08、千賀滉大2.21
○オリックス 山本由伸6.95、竹安大知2.81
○楽天 西口直人3.06、松井裕樹2.90
○ロッテ オスナ3.18、ゲレーロ1.92
○日本ハム 吉田輝星3.01、上原健太2.52
8月に3勝した投手が2人いる。
○高橋光成 4試合3勝0敗、防御率1.80、QS率100%、被本塁打1、奪三振率6.43、被打率.246、被OPS.634 WHIP1.17、奪空振率10.1%
○宮城大弥 4試合3勝1敗、防御率1.14、QS率100%、被本塁打3、奪三振率4.55、被打率.153、被OPS.451、WHIP0.69、奪空振率8.0%
公式の月間MVP選考では両投手が議題に上がるだろうが宮城の場合、被本塁打3がセイバー的には評価できない。RSAAでは高橋が上回っているので、両投手でどちらかと言えば高橋を推したい。しかしながら、8月のパ・リーグ投手で最もチーム貢献度が高かったことを示したのはオリックスの山本由伸である。
○山本由伸 4試合1勝0敗、防御率1.50、QS率100%、被本塁打1、奪三振率10.5、K/BB7.00、被打率.228、被OPS.600、WHIP1.03、奪空振率16.0%
奪空振率16%は先発投手としては高水準。3.5を超えれば良しとされるK/BBで7.00を記録した。しっかりと打者を押さえ込み、打たれた打球でも50%がゴロと投球内容が光った。勝ち星には恵まれなかったが、安定した実力を発揮した山本由伸を8月のセイバー目線で選ぶ月間MVPに推薦する。
7月に続く“一騎打ち”…楽天・島内宏明がオリックス・吉田正尚を上回る
次に打者部門。打者評価として、平均的な打者が同じ打席数に立ったと仮定した場合よりもどれだけその選手が得点を増やしたかを示す「wRAA」を用いる。各チームのwRAA上位2選手は以下の通り。
○西武 山川穂高7.72、森友哉4.02
○ソフトバンク 中村晃4.07、正木智也3.74
○オリックス 吉田正尚11.29、頓宮裕真7.18
○楽天 島内宏明13.03、辰己涼介3.31
○ロッテ 荻野貴司6.99、中村奨吾6.46
○日本ハム 近藤健介7.57、松本剛1.54
7月に引き続き、8月のパ・リーグでも2人の打者の成績が突出している。
○島内宏明 97打数37安打、打率.381、本塁打6、OPS1.100
○吉田正尚 83打数28安打、打率.337、本塁打3、OPS1.022
昨年まで2年連続首位打者のタイトルを獲得している吉田正が本領を発揮している。8月は杉本裕太郎外野手が戦線離脱。勝負を避けられるかと思われたが、後を打つ宗佑磨内野手や頓宮裕真捕手が好調だったため、そこまで四球禍に苛まれることもなかった。それでもBB/Kは1.56と四球の方が三振よりも多い。
しかし、8月は打率やOPSなどの指標がリーグ1位であり、wRAAでも1位でチームへの貢献が高かったということで、島内宏明をセイバー目線で選出する8月の月間MVPに推薦する。島内はもとより空振りが少なく、コンタクトに優れた打者だが、センター方向に強い打球が打てるようになり、長打率が上昇していることが伺える。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修や、「AKB48選抜じゃんけん大会」の組み合わせなどエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。