1年生でリードオフマン、全国ユース大会で準優勝に貢献 秋羽と書いて、「しゅう」と読む。2年生以下の全国大会である『第13回全国高等学校女子硬式野球ユース大会』で準優勝した花巻東のリードオフマン、佐々木秋羽内野手(1年)が大会を振り返る。「(…

1年生でリードオフマン、全国ユース大会で準優勝に貢献

 秋羽と書いて、「しゅう」と読む。2年生以下の全国大会である『第13回全国高等学校女子硬式野球ユース大会』で準優勝した花巻東のリードオフマン、佐々木秋羽内野手(1年)が大会を振り返る。

「(決勝では)先頭打者として活躍できなくて申し訳ありません……。それでも、たくさんの方々の協力をいただいて、こんな広い球場(ナゴヤ球場)でプレーができたことが、すごく嬉しいです。そして、憧れていたユニホームを着てプレーできていることを、改めて嬉しく思います」

 年子の兄は、同校野球部の佐々木麟太郎。そう、世代を代表する左のスラッガーだ。同じ左打ちの秋羽は、兄の背中を追い続けてきた。

 岩手県の江釣子中時代は、兄と同じ金ヶ崎リトルシニアでプレーした。女子部員は1人だけだったが、最後まで二塁手としてやり遂げた。ちなみに、江釣子中では生徒会長。それもまた、兄が歩んだ道と同じである。そして、高校の進学先を決める時も、秋羽は兄の存在、そして幼い頃から身近にあった花巻東のユニホームを強く意識するようになった。

 父は、同校男子硬式野球部の佐々木洋監督である。境遇を考えれば、自然の流れだったかもしれない。だが、秋羽の願いがすんなりと叶ったかと言えば、そうではない。父は、何度も娘の決断を確認しながら、時には他校での陸上部を薦めた。と言うのも、秋羽は幼い頃から脚力があった。岩手県中学校総合体育大会の100メートル種目では、3年時に13秒21を叩き出して県4位。その実力は本物だった。

中学時代は…大谷翔平の父、大谷徹監督に指導を受ける

 それでも……秋羽の「花巻東のユニホームを着て野球を続けたい」という熱意が、変わることはなかった。

 父曰く「もともとは人見知りで内気」な性格の娘。だが、中学時代の金ヶ崎リトルシニアでは、大谷翔平(エンゼルス)の父にして同チームを率いる大谷徹監督の指導の下、メンタル面や技術を磨いて自信を深めた。そして、花巻東に入学後は、さらにグラウンドで笑顔が弾けて躍動する。ユース大会では全試合で『1番・二塁』としてスタメン出場。岡山学芸館との準決勝では、同点の足掛かりとなるヒットを放って勝利に貢献した。

 神戸弘陵との決勝は2打数無安打に終わったが、2回表には俊足を活かして右前に落ちそうな飛球を好捕するなど、チームの勝利のために戦い抜いた。「いずれは、ショートを守れる選手になりたい」。そう話しながら、自慢の足を活かしながらヒットを量産する打撃を磨くことも忘れない。

「今回の大会で日本一を獲りたかったですけど……次は負けないように頑張ります」

 思いの詰まった花巻東のユニホームを着て、手に握りしめた銀メダル。夏の終わりが近づき、秋空に向かうナゴヤ球場での決意は、彼女にとって新たな出発でもある。(佐々木亨 / Toru Sasaki)