プロ1年目に直面した大ケガを乗り越え、ついに大ブレイクを果たしつつある 西武の與座海人投手は現在9勝を挙げており、初の2…

プロ1年目に直面した大ケガを乗り越え、ついに大ブレイクを果たしつつある

 西武の與座海人投手は現在9勝を挙げており、初の2桁勝利が目前だ。アンダースローの先発投手は、現代野球では希少な存在。それだけに、抜群の安定感を見せてシーズン途中からローテーションを守り続けている與座は、ひときわ目を引く存在だ。投手としての持ち味は、いったいどこにあるのだろうか。投球内容に基づく指標における、ある「驚異的な数字」について詳しく紹介していく。(数字は26日現在)

 與座は沖縄尚学高から岐阜経済大を経て、2017年のドラフト5位で西武に入団。だが、1年目の2018年は、右ひじの故障で1、2軍を通じて一度も登板できずに終わった。同年10月にトミー・ジョン手術を受け、オフには育成選手として再契約を結んだ。いきなり大きな試練に直面したが、翌2019年には2軍で実戦復帰を果たし、同年オフには支配下に復帰。そして、2020年には開幕前の対外試合で好投を続け、見事に開幕ローテーション入り。プロ初勝利も記録した。

 昨季は終盤に先発として4試合続けて5回以上を投げ、いずれも2失点以下と安定した投球を披露。今季は自身2度目の開幕ローテーション入りを果たした。一度抹消の後4月26日に再昇格すると、4月28日には緊急リリーフで3回2/3を1失点にまとめ今季初勝利。そのまま先発に復帰し、7月30日にはプロ初完封を無四球で達成する離れ業を演じた。

高くはない奪三振率…それを補う驚異的な“与四球率”

 次に、與座が記録した年度別の指標を見ていきたい。特に注目したいのが、今季の圧倒的な与四球率の低さだ。与四球率は9イニングを投げた場合に、平均で何個の四球を与えるかを示す指標。すなわち、今季は9回を完投しても、1試合で1個しか四球を出さないことになる。先発としてこれだけの数字を残す投手は極めてまれで、驚異的な水準といえる。

 その一方で、今季の奪三振率は4.81、通算でも5.08とかなり控えめで、典型的な打たせて取るタイプの投手と言える。そうなれば被打率の重要性も高まるが、2020年は被打率.311と打ち込まれ、防御率も5.45と苦しんだ。しかし、2021年以降は被打率が.222前後と大幅に改善されており、防御率にもダイレクトに反映されている。

 奪三振を与四球率で割って求める、制球力を示す指標の「K/BB」は、一般的に3.50を上回れば優秀とされている。先述の通り、奪三振数は多くない。それにもかかわらず、2022年のK/BBは4.64と、極めて優秀な水準に到達。制球力が群を抜くものであることを示している。

 そして、与四球率と被打率の双方が大きく改善されたことにより、1イニングごとに出した走者の数を示す「WHIP」も年々向上を続け、2022年は1イニング1人未満となっている。そもそも走者を出すケースが少ないからこそ大量失点の可能性も低いという、好循環が生まれているのだ。

さまざまな球速の変化球を使い分け、打者を手玉に取る

 最後に打席の“結果球”の割合を。與座は120~130km/h台の速球に加え、スライダー、シンカー、チェンジアップ、カーブといった多彩な球種を操る。その中でも、割合としては直球が約55%と半数以上を占めており、あくまで投球の軸は速球であることがうかがえる。

 また、スライダーとシンカーという逆方向に曲がる2つの球種は、それぞれ時速120キロ前後というほぼ同じ速さで変化する。スライダーは24.8%と全体の約1/4に達し、シンカーも8.6%と一定の頻度で投じている。速球に近い球速から変化するこの2球種は、打たせて取る投球に適している。それだけに、決め球に使う割合が多いのも納得だ。

 また、この2球種より少し遅い110〜120キロ台のチェンジアップに加え、時には100キロを下回ることもあるカーブも、投球のアクセントとして用いている。カーブは約9%と、結果球となる割合はシンカーよりも多い。與座投手としても、独特のスローカーブには一定の信頼を置いていると考えられる。

 速球を軸としながらさまざまな変化球を使い分け、あらゆる球がストライクゾーン内に制球される。打者としては幅広い球速帯に備えなければならず、狙い球が外れると打ち損じの可能性が高くなってしまう。これらの数字からも、優れたコントロールを生かした緩急自在のピッチングで凡打の山を築き、文字通り打者を手玉に取っていることが伝わってくる。

本格派が多いローテーションの“異才”優勝争いでも要注目

 待っても四球になる可能性は低く、かと言って早打ちに出ればその術中にはまる。下手から繰り出される独特の球筋も相まって、相手打線にとっては非常に対策をとりづらい投手となっている。今回紹介したさまざまなデータを見る限りでは、その投球は打たせて取る投球の“到達点”の一つと言えるかもしれない。

 現在、西武の先発陣には高橋光成投手、松本航投手、今井達也投手ら、本格派に分類される投手が多い。緩急をつけられる與座の台頭は、今後の投手陣を占う上でも非常に大きな要素となってきそうだ。

 與座は2018年に西武入りしたものの、同年からのパ・リーグ連覇には貢献できなかった。今季こそ、自らの活躍でチームに歓喜をもたらすことができるか。変幻自在のピッチングに要注目だ。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)