「プレーする機会を与えて下さった彼に、生涯感謝しています」 マリナーズで現在、会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイ…

「プレーする機会を与えて下さった彼に、生涯感謝しています」

 マリナーズで現在、会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏が27日(日本時間28日)、シアトルで行われたガーディアンズ戦の前に、球団殿堂入り式典に臨んだ。英語で約17分に及ぶスピーチはジョークや秘話がてんこ盛りで、満員のスタンドは笑いに包まれた。さらに自身を支えてくれた人々やシアトルの街への感謝、若い野球選手たちへのメッセージを口にしている。ここでは全文の日本語訳を掲載する。

「ワッツアップ、シアトル!」

「ありがとうございます、ジョン(スタントン会長)。今夜ここに立てていることを光栄に思います。また、ここに立っていることは、あそこに戻って座っているよりも安全です。なぜなら、先ほどの動画でご覧のように、(ケン・グリフィー)ジュニアが椅子に接着剤をつけていたかもしれないから。もちろんやったよね。私にスピーチをさせるジュニアなりのやり方に違いありません。というわけで始めましょう」

「22年前、シアトル・マリナーズの一員になって、私の人生は完全に変わりました。この球団とこの街には、感謝してもしきれません。ご参加いただいたハワード(リンカーン元CEO)とジョンに感謝申し上げます。ジェリー(ディポト編成本部長)とケイティ(グリッグス経営本部長)にも感謝を。チャック・アームストロングもここに来てくれたことに感動しています」

「ここにはいない人にも言及しなくてはいけません。ミスター・ヒロシ・ヤマウチ(山内溥=元任天堂社長、故人)です。彼はマリナーズの長年のオーナーでした。初の日本人野手としてシアトルでプレーする機会を与えてくださった彼に、生涯感謝しています」

マリナーズ殿堂入りメンバーが列席、マルティネスやモイヤーに感謝

「今夜ここに来る時間を作ってくれた、数多くのマリナーズ殿堂入りメンバーからの温かいサポートに感動しています。アルビン(デービス=元近鉄)と知り合いになれたのは喜びでした。あるときファンが私に叫びました。『ヘイ、お前とアルビンが一緒にプレーしているのを見るのが好きだったぞ』と。初めは侮辱されたと感じました。『カモン、マン! 私をいくつだと思ってるんだ?』と思ったのです。彼は私がここに来るずっと前に引退していたんです。でも、アルビンがとても優しい人間なので、彼のチームメートになれたら素敵だっただろうなと思ったのです。だから、私はそのファンを正しませんでした」

「最初のチームメートのうちの3人がここに来てくれています。エドガー(マルティネス)! あなたは最も謙虚なプロフェッショナルであり、引退しても変わっていません」

「ダン(ウィルソン)。あなたはフィールド上での私たちの鉄の捕手であり、クラブハウスでの私たちの鉄の支えでもありました」

「そしてジェイミー(モイヤー)! はるばる来てくれてありがとう。左腕として、あなたはとても賢い人でした。でもとてもおしゃべりでもありました。初めて会ったとき、あなたは英語で30分間もしゃべり続けました! そして、私はあなたが言っていることが全く分かりませんでした。今、私の英語は少し上達しましたが、いまだにあなたが言っていることはほとんど分かりません。それでも、あなたは49歳になるまでプレーを続けました。私がとても敬服しているところです」

「この新しいマリナーズのチームに加わることができて、光栄に思います。ここに来て直接私を歓迎してくださった皆様に感謝いたします」

アイドル「ジョージ」との日々「彼は真のプロフェッショナル」

「そして、私が『ジョージ』と呼びたい人がいます。あなた方は彼のことをケン・グリフィーJr.としてご存じでしょう。私がアメリカに来る前から、彼は私のアイドルでした。しかし、2009年に彼はシアトルに戻ってきて、ついに私は彼のチームメートになることができました。イエス。彼は冗談好きな人です。でも私にとって彼は真のプロフェッショナルでもあります。彼は表現しきれないほど多くの方法で私を助けてくれました。彼のチームメートでいられたことは、本当に私のキャリアのハイライトの1つです」

「マリリン。あなたの夫であり、伝説的な実況アナウンサーであるデーブ・ニーハウスのレガシーを引き継いでくれてありがとうございます。マーイ・オー・マーイ!(と、ニーハウスの真似をして絶叫)」

「そしてリック(リズ実況アナウンサー)。ホーリー・スモークス!(リズの定番フレーズ)ここに来てくれてありがとうございます」

「私の妻、弓子がここにいてくれて嬉しく思います。この栄誉は彼女なしでは不可能でした。この瞬間までの旅路の中で、彼女は私と一緒に全てのチャレンジ(困難)に立ち向かってくれました」

「長年の通訳、アレン・ターナーに感謝します。彼の家族がここにいてくれて嬉しく思います。キャリアを通して、彼らは私に素晴らしいサポートを与えてくれました」

「長年、素晴らしい助けを差し伸べてくれた多数の人たちにも感謝します。その人たちは今夜、このスタンドにいます」

「私のシアトルでの最初の監督、ルー・ピネラがここに来れなかったのは残念です。私のここでの最初の思い出の1つは、彼によって作られたものでした。私にとって最初の開幕戦で勝利した後、クラブハウスに戻るとルーが私にキスしてきました。(右唇横のほおを指しながら)ちょうどここ、ほおに。監督が大きく、湿ったキスをしてきたのです。日本ではないことなのでショックを受けました。正直言うと怖かったです。心の中で思いました。これがアメリカの習慣なら、ここではうまくいかないかも、と。思い出してください。あの年私たちは116勝を挙げたのです。私は監督から116回キスされる準備はできていませんでした。ありがたいことに、私は継続することができました。そうできたことを嬉しく思います」

「引退しても、野球とシアトルが心から離れることはありません」

「現役選手としては引退しても、野球とシアトルが私の心から離れることは決してありませんでした。野球は永遠に私の魂であり、私の使命は、選手とファンの両方がこの特別なゲームを楽しみ続けられるよう、その一助になることです。今、私はスタントン会長付きの特別補佐という任をありがたく受けています。スプリングトレーニングとシーズン中に、選手たちと一緒に仕事できるポジションです。たいていの日は、私はいまだにマリナーズのユニホームを着ています。誇りを持ってそうしています」

「私たちの選手みんなに知っておいてほしいのは、ベストを目指して戦うあなたたちに私が寄り添っているということです。私がシアトルに来たとき、私は27歳でした。当時、アメリカでのキャリアが19年も続くなんて、今日もまだシアトルにいるなんて想像もできませんでした」

「それを念頭に置いて、現役の選手たちに言いたいことがあります。あなたたちの将来もまた、あなたたちが想像できないような可能性を秘めています。だから、自分自身に限界を設けず、ベストを尽くしてそれを大事にしてください」

「もし、日本から来た、痩せこけた小柄な男がこのユニホームを着て競争することができるなら、そして今夜この名誉を受けるためにあなたたちの前に立つことができているのなら、あなたたちにできないという理由は何もありません」

「もちろん、あなたたちは苦難やフラストレーションに直面することになるでしょう。私は知っています。私も毎年直面していたから。自分自身に限界を設けず、そういった日々の困難に打ち勝つという欲望と情熱を見つけなければいけません。それがあなたのポテンシャルを最大化する方法です。その後に、想像もできなかったことに到達することができるのです」

ファンへの感謝「これからも私は全力を尽くし続けます」

「そして最後に、傑出したシアトルのファンたちへ。あなたたちは21年前、新人選手だった私に大きな声援を送ってくれました。そして、その声援は決して止むことがありませんでした」

(イチローコールが続く)

「2018年に戻ってきたとき、まるでここを一度も離れたことがなかったかのようでした。あなた方が私を迎えてくれたときの情熱が、私の心に響きました。私のキャリアにおける最高の瞬間の1つであり、あのときの気持ちは決して忘れません。シアトル・マリナーズの一員としてあなた方のためにプレーしてきたことは、私の最大の栄誉です」

「あなた方とマリナーズのために、これからも私は全力を尽くし続けます。ありがとうございました」(Full-Count編集部)