東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルマッチ ボクシングの東洋太平洋スーパーバンタム級(55.3キロ以下)タイトルマッチが26日、東京・後楽園ホールで行われ、挑戦者の元K-1王者・武居由樹(大橋)が王者ペテ・アポリナル(フィリピン)に5回2分…

東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルマッチ

 ボクシングの東洋太平洋スーパーバンタム級(55.3キロ以下)タイトルマッチが26日、東京・後楽園ホールで行われ、挑戦者の元K-1王者・武居由樹(大橋)が王者ペテ・アポリナル(フィリピン)に5回2分7秒TKO勝ちした。プロボクシング転向5戦目で初のタイトル奪取。3つのダウンを奪う圧勝だったが、陣営の大橋秀行会長は前日に不安があったことを明かした。戦績は26歳の武居が5勝(5KO)、27歳のアポリナルが16勝(10KO)3敗。観衆は1420人。

 武居がセンスと強さを見せつけた。2回だ。接近しながら右フックなどを浴びせ、ダウンを先取。再開後も続けざまに連打をお見舞いし、2度目のダウンを奪った。4回にはタイミングのいい強烈な右フックが炸裂。3度目のダウンを奪い、5回の連打で相手がよろめいたところでレフェリーストップとなった。

 試合後のリングでは「大橋ジムの武居です!」と元気よく挨拶した一方、「正直、K-1のベルト返上からもう一回ボクシングでベルトを獲れるか不安だった」と吐露。その後の取材でも「プレッシャーは感じてました。ベルトを獲らないと!って」と明かした。それでも、貫録の5戦連続KO。「当日になったら平気。キック時代の方が緊張があった」と胸を張った。

 2020年12月の試合を最後にK-1を卒業。ボクシングに転向し、21年3月のデビュー戦で初回1分43秒TKO勝ちを収めると、2戦目は初回2分57秒、3戦目は初回59秒、4戦目は2回1分22秒と破竹の勢いを見せてきた。ボクシング転向後は元世界3階級制覇王者・八重樫東トレーナーに師事。八重樫氏は伸びた部分と課題を問われたが、「課題ばかりになってしまう」と厳しさを見せた。

「今日は打ち合いがあって、そこの攻防の緻密さが課題。相手が攻めてこない時にもどう崩していくか。ここまで5試合やってきて、いろんな練習をしてきたけど、つくってきたものは出せたと思う。伸びているし、少しずつボクサーらしくなってきた。一発もあるけど、コンビネーション、連打で倒すこともできれば伸びていくと思う」

大橋会長は絶賛「ディフェンスがザルだとか言われるけど…」

 一方、大橋会長は「魅力は一発のパンチ。強い!」と絶賛。「良い試合。一発ももらっていないんじゃないか。長い試合をしていないとか、ディフェンスがザルだとか言われるけど、そんなことはない。ここまで数分しか試合をしていないので、心配されるのは当たり前。でも、練習量と(K-1を含めた)キャリアがあるし、八重樫トレーナーもいて相乗効果がある」と信頼を寄せた。

 しかし、前日は無用な不安があったという。計量を終え、大橋会長は同門の井上尚弥、八重樫氏と食事。「相手のパンチ、一発が凄いですよ」。2人から突然告げられた。過去、アポリナルは井上のスパーリングパートナーとして大橋ジムで練習。前日になって改めて言われたことで、大橋会長は「なんで前日に言うんだろうか。ブルーになりましたね。凄い不安に」と前夜は頭を抱えたという。

 それでも、愛弟子の武居は不安を一蹴する強さを発揮。次戦は年内の防衛戦を見据えている。大橋会長が「キャリアを積ませたい。今日も本当は判定にしてほしかった。その方が将来のためになるので」と未来の世界王座戴冠も視野。ボクシングでもベルトを手にした武居も「これから他の選手に狙われるんじゃないか。負けられないです。強くなっていつか世界チャンピオンに」と成長を誓った。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)