蹴球放浪家・後藤健生は、世界中を取材で駆け巡る。取材の対象は、サッカーだけにとどまらない。食事を含めた文化面もフィール…

 蹴球放浪家・後藤健生は、世界中を取材で駆け巡る。取材の対象は、サッカーだけにとどまらない。食事を含めた文化面もフィールドワークの対象とする。調査を進めると、日本もフランスも、ある食材でつながっていることが判明した。

■釜山で韓国のホヤをいただく

 韓国でも、ホヤがよく食べられます。三陸のホヤも韓国に輸出されていたのですが、福島原発の事故以降、韓国は輸入を禁止しています。

 2019年の12月にEAFF E-1選手権が韓国の釜山(プサン)で開催されました。

 新型コロナウイルスのパンデミックが始まる直前のことです。僕は、ぶらぶらと街を歩き回っていました。釜山は何度も行ったことがありましたが、影島(ヨンド)には行ったことがなかったのでバスに乗って行ってみました。釜山の港の南側にある大きな島で、橋で本土とつながっており、今では完全に市街地化しています。

 その最南端に太宗台(テジョデ)公園があります。玄界灘に面した岬の先端からは「天気が良ければ長崎県の対馬が見える」と言われています。

 実際、僕が太宗台を訪れた日は幸いにも快晴。本当に対馬がくっきりと見えました。

 その展望台の下の崖に階段が造られています。海辺の岩場まで降りることができるのです。岩場にはオバサンたちが何人もいて魚介類をさばいて商売をしています。その名物がホヤなのです。

 そこで、僕もさっそくホヤのサシミを注文。韓国焼酎のボトルも買って、岩場にしつらえてあるテーブルに座って、ボーッと目の前の海を見ながらホヤをつつきました。12月とはいえ、午後の太陽が温かく感じられました。

■ホヤをロゼ・ワインとともに味わう

 さて、2003年にフランスで毎年夏に開かれているトゥーロン国際トーナメントを観戦に行ったことがあります。各国のユース代表が出場する大会で、最近は「モーリスレベロ・トーナメント」と呼んでいるようですが、昔は本当に地中海に面した港町トゥーロンを中心に開催されていました。2003年には同時期にフランスでコンフェデレーションズカップもあったので2つの大会を見ることができました。

 ある夜、日本から取材に来ていた何人かで連れだってトゥーロンの海岸に出て、この地域で有名なロゼ・ワインを楽しんでいました。

 ブイヤベースが出てきました。

 魚介類や野菜を投入し、さまざまなハーブやニンニクで香りをつけて、サフランで赤い色を付けた南フランスの鍋料理です。入っている食材は、もちろん地元の海で採れた地魚ばかり(のはず)です。

 ブイヤベースの具を順番につついていると、何かとても不思議なものが入っていました。独特の臭いがあります……。

「あれっ、これってもしかしてホ・ヤ?」

 そう、なんとブイヤベースにホヤが入っていたのです。

「人間はその土地の魚介類を(毒性がなければ)何でも食べる」ということは頭では理解しているつもりでしたが、南フランスの海岸で、三陸や釜山のイメージが強いホヤと出会い、宮城の地酒や韓国の焼酎ではなく、プロヴァンス産のロゼ・ワインとともに味わったのはやはり驚きでした。

 本当に、ヒトというのは何でも食べてしまう恐ろしい生物です!

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