ACL東地区は準々決勝までが行われ、ベスト4が出そろった。日本からは浦和レッズが勝ち残っているが、ここまでの戦いぶりに…

 ACL東地区は準々決勝までが行われ、ベスト4が出そろった。日本からは浦和レッズが勝ち残っているが、ここまでの戦いぶりにはアジアサッカーの構図が浮かび上がってくる。また、頂点までの道のりも含めて、サッカージャーナリスト・後藤健生がアジアを考察する。

■レベルが上がっているJリーグ

 Jリーグは、ここ数年で非常にレベルが上がっている。

 アンジェ・ポステコグルー(現、セルティック監督)が横浜F・マリノスの監督に就任して、両サイドバックが高い位置に上がるサッカーで一世を風靡したが、それからほんの4、5年でサイドバックの攻撃参加などは日本のサッカーではすっかり標準モデルとなったようで、今ではユース年代のチームでも、女子チームでも普通に行われるようになった。

 また、多少のぶつかり合いではホイッスルを鳴らさない積極的なレフェリングもあって、プレー強度も格段に上がってきている。

 神戸が横浜を破った試合は、そんな現在のJリーグの良さを凝縮させた試合といってもよかった。

■スローテンポだった韓国勢

 その華々しい試合に対して、韓国勢同士のラウンド16はスローテンポなものだった。

 全北と対戦した大邱(テグ)FCは12チーム中9位と苦しい状況にある。降格圏である10位の金泉尚武(キムチョンサンム)とは勝点わずか1ポイントの差である。そして、8月にはアレシャンドロ・ガマ監督が解任され、現在はチェ・ウォンクォンコーチが監督代行を務めていた。

 同じく下位に低迷している神戸が思い切った攻撃サッカーを選択したのに対して、大邱は「守備固め」を選択した。5人のDFがフラットなラインを作って全北の攻撃を跳ね返し続け、ボールを奪うとすぐにロングボールを蹴って前線の2人のブラジル人に預けるのだ。

 トップのゼカは高さも強さもある選手でロングボールを収めてポイントを作れるし、左サイドのセシーニャは中に切れ込んだり、中盤に下がったりと神出鬼没の位置取りをする曲者タイプ。つまり、この2人だけでなんとか攻撃の形を作れるわけだ。

■「Jリーグ以前」のようなサッカー

その大邱を相手に全北が攻めた。120分の試合を通じてポゼッション率では全北が74.3%と圧倒した。だが、全北は大邱の守りを崩せない。攻撃の型に変化がなさすぎるのである。

 右サイドはサイドハーフのハン・ギョウォンに預けて、サイドバックのキム・ムンファンが追い越してクロスを上げる形。そして、左サイドではキム・ボギョンがポイントを作り、サイドバックのキム・ジンスがサポートする形。こちらのサイドでは攻撃のバリエーションも豊富だった。が、チーム全体としては攻めのアイデアに欠けていたと言わざるを得ない。

 それでも、全北は後半開始から35秒で大邱の守備をこじ開けて見せた。中盤でメン・ソンウンが大きく右に振り、右サイドハン・ギョウォンが入れたクロスにワントップのソン・ミンギュが合わせてボレーで決めたものだ。

「これで、全北の勝利が決まり!」と思われた。だが、全北戦の神戸と同じようにその後の試合運びは拙劣で、先制点が決まってから10分後にはロングボールからゼカが抜け出して、大邱があっけなく同点とする。そして、その後も一進一退が続き、PK戦突入かと思われた121分(つまり、延長後半のアディショナルタイム)に、交代で出場したばかりのキム・ジンギュが押し込んで、全北がようやく勝利をつかんだのだ。

 つまり、この試合はリーグ戦で下位に低迷する大邱が引いて守りを固めたのに対して、上位の全北が攻めあぐねたという膠着状態が120分間続いたのだ。守備から攻撃への切り替えも遅かったし、CKやFKからのリスタートも遅く、まるで30年ほど前の(つまり、Jリーグ以前の)サッカーを見ているかのようだった。

■「速さ」のない韓国勢が持っている武器

 だから、僕は準々決勝でも神戸が全北に勝利することができると思っていた。そして、準々決勝の試合で全北の戦い方が大邱戦から大きく変わったわけではなかった。

 たとえば、CKを獲得したような場面でも全北のキッカーはゆっくりと歩いてコーナーに向かう。かつては日本のサッカーもそうだった。FKにせよ、CKにせよ、キッカーがゆっくりとボールをセットし、攻撃側の選手たちが時間をかけてゆっくりと上がっていく。そして、おもむろにリスタートするのだ。

 もちろん、今でもそんなプレーを見かけることはあるが、今では多くのチームがリスタートに時間をかけないようになってきている。横浜などは、ポステコグルー監督が指導して以来、クイックスタートが習慣化されている。

 そんな、Jリーグを見慣れた目で見ると、全北のプレーは実に遅く見えてしまうのだ。

 しかし、韓国のサッカーは「強さ」を持っている。1対1での競り合いでボールを自分のものにする強さ。そして、ゴール前での守備力……。全北はそれを武器に、そして外国人選手の個の力を使って神戸を退けたのだ。

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