妹・千怜が2戦連続V、姉・明愛は53位→33位「次はお姉ちゃん」 女子ゴルフの国内ツアー・CATレディース最終日は、ルーキーで双子姉妹の妹・岩井千怜(Honda)の逃げ切り優勝で終えた。史上3人目となるツアー初優勝からの2戦連続Vを20歳4…

妹・千怜が2戦連続V、姉・明愛は53位→33位「次はお姉ちゃん」

 女子ゴルフの国内ツアー・CATレディース最終日は、ルーキーで双子姉妹の妹・岩井千怜(Honda)の逃げ切り優勝で終えた。史上3人目となるツアー初優勝からの2戦連続Vを20歳47日の最年少で達成した。妹が日本女子ゴルフ史に名を刻んだことで、姉・明愛(Honda)は「次はお姉ちゃん」と言われ続けている。だが、レベルの高いレギュラーツアー。そう簡単にはいかないことは、本人が一番分かっている。不安も抱えているだろうが、母は冷静で「気を遣うことはしない」と明かした。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)

 明愛は、連続優勝して歓喜する千怜を出迎え、「ナイス、ナイス」と声を掛けた。表彰式にも呼ばれ、千怜と並んでインタビューを受け、「(千怜の優勝は)率直にすごくうれしいです。最後のパットは見ていて緊張しました」と言った。「お姉さんも優勝したいですか?」と問われると、「もちろんです」と即答した。

 明愛は、千怜が前週のNEC軽井沢72ゴルフトーナメントでツアー初優勝を飾ると、大粒の涙を流した。理由を聞かれると、「一番身近にいる人が優勝して感動したので」と言った。ただ、彼女をよく知る人たちは「先を越された悔しさ、自分も優勝できるのか、妹に置いていかれる不安もあっての涙だったと思う」と推測している。

 現実に国内女子ツアーは常に混戦で、一打のミスで順位が大きく下がることがある。姉妹にとっての今季初戦、3月の明治安田生命レディスで明愛は予選落ち。最終日は千怜の組を観戦しながら、「みんながうまい。(ツアーの)レベルが高い」とつぶやいた。それでも、5月のパナソニックオープンレディースで7位。千怜より先にトップ10入りを果たし、前半戦終了時点では、メルセデス・ランキングでも千怜をリードしていた。

 しかし、千怜が突然のブレーク。CATレディースでは偉業も達成したことで、表彰式後は本音も口にした。

「やっぱり、時間が経つにつれて『負けていられないな』という気持ちが出てくると思います。自分のゴルフができるまで、ずっと待っていればいいことがあると思うので、頑張っていきます」

母の「明愛に気を遣わない」の真意「1人がいいならもう1人は抜かすしかない」

 子供の頃から競い合ってきた。父・雄士さんによると、小学1年の持久走大会で2人はスタートから抜け出し、学年で1位(明愛)、2位(千怜)だった。

 低学年は明愛が1位のままだったが、5、6年は千怜が1位。ゴルフでもその関係が続き、雄士さんは「2人とも負けず嫌いなので、スコアが悪かった方に『気にするな』と声を掛けていました」と振り返る。CATレディースでも、雄士さんは明愛のキャディーを務めた。ラウンド中は千怜の話は出さず、第2日を終えると、「とにかく明愛が予選を通ってくれて良かったです」と胸をなでおろした。

 だが、最終結果は33位。前週も53位で、観客から「お姉ちゃんも頑張らないと」の声が上がり、ネット上には「今、明愛プロは辛いところ」などのコメントもある。しかし、母・恵美子さんは冷静だった。

「こうなっても明愛に気を遣うことは全然しません。勝負の世界ですから、1人がいいのなら、もう1人は背中を追うか、抜かすしかないのですから。あとはどれだけ本人が努力できるかですし、私はこのまま『2人とも頑張れ』と両方を応援していきます」

 明愛もそんな思いを受け止め、連日、課題のパッティング練習に取り組んでいる。そして、「千怜のおかげで、『自分も優勝できる』という目標をくれました」と言えるようになった。現在のメルセデス・ランキングは59位。現実的に最大の目標を「50位以内に入ってシード権獲得」にしながら、明愛は「チャンスが来たら勝ちたいです」と言った。その時、千怜が上位にいれば、姉妹の夢「2人で優勝争い」が現実となる。

 持久走から続くバチバチのバドル。プロデビュー前から2人を取材してきた私も、焦らずに時を待ちたい。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)