東北勢は弱い…。古くから高校野球界で言われ続けてきたイメージは変わりつつある。第104回全国高校野球選手権の準決勝で、…

 東北勢は弱い…。古くから高校野球界で言われ続けてきたイメージは変わりつつある。

第104回全国高校野球選手権の準決勝で、甲子園大会史上、初めてとなる東北勢同士の対決が実現した。仙台育英(宮城)が聖光学院(福島)に18-4で勝ち、決勝に進出した。大会を通しても、東北6県中5校が初戦を突破。一関学院(岩手)は昨夏4強の京都国際を撃破し、みちのく勢が甲子園で躍動した。

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 かつて、東北勢は初戦敗退が当たり前の「弱小地区」として扱われてきた。出場全チームが集合する甲子園大会の組み合わせ抽選会場では、東北勢との初戦が決まった相手から歓声や拍手が起こった。東北の選手たちはだまって下を向くばかり。そんな時代が長く続いた。

「バカにされるのが悔しくて、とにかく厳しい練習をしてきた。東北の劣等感を払拭しよう、と指導者からずっと言われていた」と語るのは1989年夏準優勝の仙台育英エース大越基。延長10回、帝京に0ー2で敗れたが、全6試合完投の奮闘ぶりは、東北人としてのプライドが原動力だった。

7年ぶりの決勝進出となる仙台育英は、春夏合わせて東北勢最多4度目の挑戦となる。ここまで東北勢は全国9地区で唯一、優勝経験がない。1915年夏の第1回大会で決勝に進出した秋田中以来、12度すべて準優勝に終わっている。

東北勢の甲子園決勝成績

【宮城県=4度】
◇仙台育英
1989年夏●0-2帝京
2001年春●6-7常総学院
2015年夏●6-10東海大相模

◇東北
2003年夏●2-4常総学院

【青森県=4度】
◇八戸学院光星
2011年夏●0-11日大三
2012年春●3-7大阪桐蔭
2012年夏●0-3大阪桐蔭

◇三沢
1969年夏●2-4松山商

【秋田県=2度】
◇秋田中
1915年夏●1-2京都二中

◇金足農
2018年夏●2-13大阪桐蔭

【福島県=1度】
◇磐城
1971年夏●0-1桐蔭学園

【岩手県=1度】
◇花巻東
2009年春●0-1清峰

【山形県=0度】

 悲願達成へ、東北勢は一丸となっている。仙台育英の須江航監督は「東北の高校野球は『チーム東北』で歴史を変えよう、弱いレッテルをくつがえそう、と協力している」と話す。隣県の指導者同士で情報共有し、強化試合を組む。雪国のハンディは練習環境の工夫と施設の充実などで乗り越え、戦力的にも有望選手が関東や関西から集まり、全国の強豪校とも互角に渡り合うチームが増えた。

2018年夏に公立農業高校の金足農(秋田)が準優勝して旋風を起こしたように、私立校だけでなく、東北全体のレベルが底上げされている。また、大谷翔平、佐々木朗希といった怪物選手を次々と輩出しているのも東北の地。全国常連となった盛岡大付(岩手)関口清治監督は「甲子園抽選会のときに『東北勢とは当たりたくない』と言われるようになった」とこれまでとの違いを実感している。

上位進出が見慣れた光景となり、もはや東北を弱小地区と思う人のほうが少ないかもしれない。そんな東北勢に立ちはだかる最難関のハードルが「日本一の壁」。決勝戦12連敗の「呪い」から解き放たれたとき、本当の意味で東北が一本立ちできる。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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