フランス・パリで開幕した「全仏オープン」(本戦5月28日~6月11日/クレーコート)は、すでにセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)、マリア・シャラポワ(ロシア)を欠いていたが、今、世界ナンバーワンのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)をも失うこ…

 フランス・パリで開幕した「全仏オープン」(本戦5月28日~6月11日/クレーコート)は、すでにセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)、マリア・シャラポワ(ロシア)を欠いていたが、今、世界ナンバーワンのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)をも失うことになり、女子の部では誰もが優勝のチャンスを擁している、という感覚がいっそう強まることになった。

 今季のケルバーは、世界ランキング1位の選手らしいプレーがまったくできていない。そしてこの日曜日に彼女は、テニスがプロ化して以来、全仏オープンの1回戦で敗れた初の女子第1シードとなってしまった。

 昨年、WTAランキングでセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)の連続首位の記録に終止符を打ったケルバーは、この日、世界40位のエカテリーナ・マカロワ(ロシア)に2-6 2-6で敗れ、本戦初日の昼食時前に、もうロラン・ギャロス(全仏)のレースから去ることになった。これは、2016年には最初の3つのグランドスラム大会で決勝に進出していたケルバーにとって、このところの早期敗退の最新のものだった。「今年は特に(WTAの)大きな大会とグランドスラム大会での期待は、ずっと大きくなっている。また、自分には何ができるか、昨年の自分が何をやってのけたかを知っているがゆえに、自分からの期待も本当に大きくなっている」とケルバーは言った。「でも今、私は自分をふたたび見出さなければいけないのだと思う」。

 自分がつくった歴史について知らされたとき、マカロワは「まあ」と、言った。「それはすごいことだわ」。

 もっとも最近のケルバーの様子を鑑みると、そうすごくはないかもしれない。

 2016年のケルバーは、全豪オープンと全米オープンで優勝し、ウィンブルドンでも準優勝して、テニス界の頂に浮上した。しかし今年は、より困難に満ちていた。彼女は今季ここまで19勝13敗で、ここ6試合で4敗している。「負けてばかりいるときには常に、プレーを楽しむのが難しくなるものよ」とケルバーは言った。「昨年も常にアップダウンはあったけれど、今現在、私は言うまでもなく"ダウン"の状態にいる」 23度グランドスラム・チャンピオンになったセレナは妊娠中で、来シーズンまでプレーせず、5度グランドスラムで優勝したシャラポワはパリでのワイルドカード(主催者推薦)を拒まれた。今、そのほかの選手たちにとって、全仏の優勝杯を手にするチャンスを信じるための理由が、通常以上に出てきたと言える。「それが今のテニス界ね。誰もが勝つ可能性を持ち、皆が優秀なのよ」とシェルビー・ロジャーズ(アメリカ)は言う。彼女は気温が32度にも上がった日曜日に、マリーナ・エラコビッチ(ニュージーランド)を7-6(4) 6-4で下した。「私は女子テニスのこの時期にプレーできてうれしいわ。皆が強いから、オープン、とまでは言わないけど、とても力が拮抗している」とロジャーズは言った。「圧倒的に強い誰かがいるわけじゃない」。 マカロワに対する試合を通し、ケルバーのストロークは調子が悪かった。マカロワは、2つのグランドスラム大会で準決勝に進出したことがあったが、全仏では一度も4回戦を超えたことがない。マカロワは、全仏のセンターコートでシングルスの試合をプレーしたことは、これ以前に一度もなかったと指摘しさえした(マカロワは2013年に女子ダブルスでは優勝したことがある)。

 ケルバーは第1セットで12本のアンフォーストエラーをおかし、ウィナーはたった4本だけだった。彼女は最後のゲームまでブレークポイントすら握ることができなかったのだが、結局その最終ゲームもマカロワが取った。

 マカロワは第2セットでも、いきなり3-0とリードを奪った。

 ケルバーは、フォアハンドのパッシングのウィナーを放って3-1としたとき、あたかも勝ったかのような雄叫びを上げて、試合の核心に入り込み始めたサインを見せた。しかし挽回の予感も、ほぼそれで終わりだった。最後のゲームでケルバーは7本のブレークポイントを手にするが、マカロワは「自分の感情と戦っていた」にもかかわらず、そのつど巻き返し、最終的にサービスをキープして勝利をつかんだ。

「すごくタフだったわ。彼女は世界1位だし、素晴らしいプレーヤー。彼女はミスしないから、自分でポイントを取りにいかなければならない、と心して臨んだわ」とマカロワは言った。「私はまた、自分の感情とも戦っていたの」。

 第1シードが初戦敗退、というケルバーの不名誉な結果のほかには、2015年の全米オープン準優勝者であるロベルタ・ビンチ(イタリア)が、全仏オープンで4年連続となる1回戦負けを喫した。

 2015年の全米オープン準決勝でセレナを倒し、セレナの年間グランドスラム(同一年に4つのグランドスラムで優勝すること)の達成の希望をつぶしたことで、もっともよく知られる第31シードのビンチは、リオ五輪金メダリストのモニカ・プイグ(プエルトリコ)に3-6 6-3 2-6で敗れた。(C)AP(テニスマガジン)

※写真は「全仏オープン」1回戦でエカテリーナ・マカロワ(ロシア)に敗れた世界1位のアンジェリック・ケルバー(ドイツ)(撮影◎毛受亮介/テニスマガジン)

【ハイライト】アンジェリック・ケルバー vs エカテリーナ・マカロワ/ 1回戦