イチロー氏から授かった黒いバットを甲子園のベンチへ イチローバットが力を貸した。第104回全国高校野球選手権大会は11日…

イチロー氏から授かった黒いバットを甲子園のベンチへ

 イチローバットが力を貸した。第104回全国高校野球選手権大会は11日、甲子園球場で第6日を行い、第2試合では高松商(香川)が佐久長聖(長野)に14-4と大勝した。出場した全11選手が安打を記録、計16安打という猛攻を見せられたのはなぜか。長尾健司監督は「お守りをベンチに置いていました」と、特別なバットとともに戦っていたことを明かした。

 第2試合開始前、一塁ベンチへ移動する高松商の選手団を先導する長尾監督は、ノックバットではなく黒いバットを握りしめていた。昨年12月にイチロー氏(現マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)から指導を受けた際に授かった“イチローバット”だ。香川大会中は学校で大切に保管されていたが、大舞台には持参した。

 指揮官は「お守りとして持って来たんです。バットに触れてからネクストへ行っている選手もいましたよ」と試合中の様子を振り返る。プロ注目のスラッガー浅野翔吾外野手(3年)の高校通算65号、66号連発に続き、香川大会では打撃不振に陥っていた4番・山田一成内野手(3年)もチーム3本目の本塁打を左中間へ放り込んだ。「全打席出塁」を目標に掲げる浅野も4打数3安打4打点、2四死球と大活躍し、香川大会以上の存在感だった。

 一方、守備では合計4失策。「守備は全然ダメだったけど、イチローさんに教わったということが選手たちの落ち着きになっていました。攻撃は凄く良かった」と指揮官はここでもお守りの効果を実感している。「もちろん次の試合へも持っていきますよ」と、九州国際大付(福岡)との3回戦へと燃えていた。

イチロー氏の教え「常に全力の中でカタチを作る」を実践

 昨年12月にイチロー氏の指導を受けて以降、ナインは「常に全力の中でカタチを作る」をスローガンに掲げ、戦ってきた。これはイチロー氏からの“言葉”が原型だ。長尾監督によれば「イチローさんももう40歳を超えているので、全力で打撃練習をするとすぐに疲れを感じるんだそうです。でも、そこからが勝負。どんなに苦しくてもカタチを作る。そこでカタチを作れない選手は崩れていく」とのアドバイスがあったという。

 さらにイチロー氏のスタッフが何気なく口にした「イチローさんは高校生が相手でも本気で身体を仕上げてきます」という言葉をきっかけに、監督自身がまず動いた。連日午後4時には夕食を終わらせる厳しい食事制限を課し、体重98キロから20キロ以上の減量に成功した。

 また「近い距離でボールを投げるのが苦手だった」という浅野は、イチロー氏とのキャッチボールを経験してから「近距離でも力を抜かずに投げるようになりました。チームでもキャッチボールの雰囲気が変わったと思います」と変化があった。「簡単なことも一つ一つ大切にしないといけないと教わりました」と、貴重な2日間を胸に刻んでいる。

 昨夏は3回戦で優勝した智辯和歌山に破れ「イチローさんに教えていただいて、強くなったんだろうなと思うと、うちにも来てほしい」とラブコールを送った長尾監督。実現した直接指導を経て「選手たちの落ち着きにつながっていると思う。イチローさんが来て、やってきたことが間違ってなかったんだなって」と自信を持った。大切なお守りも味方に、今夏はどこまで勝ち上がれるか。(喜岡桜 / Sakura Kioka)