パナソニックパンサーズ・清水邦広インタビュー 前編『ハイキュー‼』の魅力について 8月13日、14日に大田区総合体育館で開催される、マンガ『ハイキュー‼』とV.LEAGUEのコラボマッチイベント「ハイキュー‼×V.LEAGUE ALLSTA…
パナソニックパンサーズ・清水邦広インタビュー 前編
『ハイキュー‼』の魅力について
8月13日、14日に大田区総合体育館で開催される、マンガ『ハイキュー‼』とV.LEAGUEのコラボマッチイベント「ハイキュー‼×V.LEAGUE ALLSTAR SPECIAL MATCH "THE VOLLEYBALL"」。14日はV.LEAGUE「DIVISION1 MEN」のチームから選抜された選手たちによるエキシビションマッチが行なわれるが、そこに出場する予定のパナソニックパンサーズの清水邦広に、『ハイキュー‼』の魅力、気になるキャラクター、現役選手も「勉強になること」などを聞いた。
『ハイキュー‼』について語った、パナソニックパンサーズの清水選手
photo by 中西美雁
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――『ハイキュー‼』のどこに魅力を感じますか?
「すべてが心に響くというか、1巻から入り込んでいけるところがすごいですね。僕たちのような現役の選手にとっても勉強になるような、本当に現実に近い描写が多いです。烏野高校の日向翔陽、影山飛雄だけじゃなく、みんなが主人公。ポジションに関係なく、すべての登場人物にストーリーがあるところに引き込まれます」
――作中に出てくる超人的なプレー、例えばミドルブロッカーの日向とセッターの影山が見せる「変人速攻」なども実現可能なプレーなんですか?
「ああいうプレーもありますよ。パナソニックパンサーズでいえば兒玉康成選手、サントリーサンバーズの小野遥輝選手なども打つタイミングが早いミドルブロッカーで、トスが上がる前にジャンプしていることが多い。少し高さはなくなりますが、相手のブロックが完成する前に決める攻撃はすごく有効です。
その他だと、試合中の駆け引きもリアルですね。白鳥沢学園戦でエースの牛島若利を止めるために、烏野の月島蛍が最初はスパイクのラインを開けておいて、いざという時に締めるといった場面もそう。思わず『わかるなぁ』となってしまいますし、Vリーグの試合を見ているような感覚になります」
――清水選手がトスを上げてもらうとしたら、セッターは誰がいいですか?
「青葉城西高校の及川徹ですかね。影山もいいんですが、彼はどちらかというと2アタックもする"攻撃型"なセッター。一方で及川は、アタッカーに気持ちよく打たせる選手という印象があります。普段よりも打点が高くなるというシーンを見ると、『あのトスを打ってみたい』となりますね。
もちろん、影山のようにピンポイントに合わせてくれるセッターもいいんですけど、及川は持っているものを引き出してくれそう。トスはそんな感じなのに、サーブは強いというギャップも魅力的です」
清水選手が挙げた、牛島を止めるための月島の駆け引き(c)古舘春一/集英社
――選手にとって勉強になる部分があるとのことですが、具体的にはどんなことですか?
「日向が1年生選抜の強化合宿に忍び込んだ時に、練習には参加させてもらえなかったけど、ボール拾いをしながら他の選手たちのプレーを観察するところもそうですね。自分でやるだけでなく、しっかり"見る"ことの重要性がよくわかる。バレー部の学生でチームの主力ではない選手にとっても、どんな点を観察して自分のプレーに生かすのか、すごく参考になる場面だと思います。
僕自身、これまでに大きなケガを何度も経験して、外からチームメイトを見ることも多かったですから。そういった時は悔しさ、焦る気持ちもありますが、プレーはできなくても成長につながるヒントを見つけることはできる。その大事さも教えてくれていますね」
――清水選手が気になるキャラクターはいますか?
「牛島は同じサウスポーですし、『似ている』と言われることもあるんですが......彼はすごすぎます(笑)。烏野との試合ではひとりで40点も取っている。僕も高校時代(福井工業大学附属福井高校)は得点をバンバン取りにいっていましたけど、そこまで得点した試合があったかは覚えていません」
――それくらい打数が多くなると疲れもかなり溜まりそうですね。
「僕の場合はスタミナには自信があったので、どれだけトスを上げられても大丈夫でした。朝から晩まで練習試合をして100、200本くらいスパイクを打っても、翌日も同じくらい打てていましたね。高校時代は疲れを感じることはなかったです」
――『ハイキュー‼』でも厳しい練習のシーンが描かれていますが、それを読むと当時を思い出しますか?
「思い出す部分もありますが、『ハイキュー‼』の選手たちのほうが効率がいい練習をしていますね。僕らが高校生だった頃は科学的なトレーニングもそこまで確立されていなかったですし、"根性"が重視された時代だったので、キツい練習をすればするほどうまくなる、という感じでしたから。僕も作中にあるような細かい技術の練習をできていたら、もっといい選手になれたかもしれませんね(笑)」
――先ほど月島の話が出ましたが、音駒高校の黒尾鉄朗などからブロックを教えてもらうシーンもありますね。別高校の選手と練習をすることは、実際にもあるんですか?
「練習試合をすることはあっても、一緒に練習することはなかったです。パンサーズのチームメイトだった福澤達哉選手(昨シーズン限りで引退)がいた洛南高校(京都)や星城高校(愛知)などと2泊3日くらいで合同合宿することもありましたが、選手同士で仲がいいことはなかったですね。完全にライバルで、そういう敵対心が力になっていました。
だから、あのブロックを教えるシーンは新鮮でもありました。今の子たちは互いに教え合うことも多いんですかね。いずれにせよ、成長するための方法がたくさんあることはいいことだと思います」
――ちなみに、JTサンダーズ広島の小野寺太志選手(日本代表)は、角川学園高校1年の2mエース、百沢雄大のことを「自分がモデルかもしれない」と話していました。高身長というだけでなく、競技をやりだしてから短期間で活躍しだしたという部分も似ていますね。
「確かにそうかもしれません。考えてみると、今の日本代表には『ハイキュー‼』の登場人物とイメージが近い選手も多いですね。例えば鴎台高校のエースである星海光来は、約170cmという身長のハンデをジャンプ力や技術で凌駕する。代表メンバーでは、西田有志選手や髙橋藍選手も男子バレーのアタッカーとしては小さいかもしれませんが、それをモノともしないプレーを見せてくれます。
『ハイキュー‼』のファンで実際の試合をまだ見たことがないという方も、Vリーグの試合を見ると『あのキャラクターと似ている。あのプレーと同じだ』という視点でも楽しむことができると思いますから、ぜひ会場に足を運んでほしいですね」
――今回のコラボマッチへの意気込みを聞かせてください。
「『ハイキュー‼』という素晴らしい作品とコラボができるのはうれしいですし、一緒にバレーボールの熱を高めていく大きなチャンスです。もちろん本気のプレーを見せながら、さまざまな仕掛けも用意して、作品のファンの方にも楽しんでもらえたらと思います」
(後編:大学生Vリーガーたちへの助言と闘争心。自身とバレー界のために、ビーチバレーとの「二刀流」にも意欲>>)