旭川大は初回に犠飛で先取点、3回には藤田が2ランを放ち序盤に3点リード 高校野球はやってみなければ分からない。絶対王者に…

旭川大は初回に犠飛で先取点、3回には藤田が2ランを放ち序盤に3点リード

 高校野球はやってみなければ分からない。絶対王者に立ち向かった“道産子軍団”が甲子園を沸かせた。10日に行われた第104回全国高校野球選手権大会第5日目の第1試合。旭川大(北北海道)が3度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭(大阪)に3-6と惜敗。下馬評は低くも互角の戦いを演じ、ナインたちは胸を張って聖地を去った。

 大会前の評価はA、B、Cの中でも最も低い「C」ランク。各メディアが試合前に出す見どころでも大阪桐蔭が断然有利の状況だった。それでも、現校名で臨む最後の夏に最高の試合を大観衆に見せつけた。

 初回に先頭の近藤伶音外野手(3年)が相手の意表を付くセーフティバントで出塁すると、その後に満塁となり5番・山保亮太外野手(3年)が中犠飛を放ち先取点。3回には藤田大輝内野手(3年)が右翼席へ2ランを放ちリードを広げた。

 終盤は大阪桐蔭打線の一発攻勢と粘りで逆転を許したが、旭川大の打線も10安打を放つなど、引けを取らない打撃を見せた。5回に無死一、二塁、8回に無死二、三塁、そして3点を追う9回には2死満塁。絶対王者を最後まで猛追する姿に高校野球ファンは心を躍らせた。

2番手で登板した山保「最後まで全力で戦えば、強い相手にも良い試合ができるんだよと伝えたい」

 6回8安打4失点(自責3)の力投を見せたエース・池田翔哉投手(3年)は「相手は日本一なので甘い所は打たれる。低めの意識を徹底していた。変化球のほとんどが低めに決まったし、高校生活で一番良い投球だった。100点です」と、敗れても笑顔。

 打っては先制犠飛を放ち、2番手で登板した山保も「どれだけ世間は大阪桐蔭が大差で勝つと思っていても、自分たちが今までやってきたことを信じて。最後まで全力で戦えば、強い相手にも良い試合ができるんだよと伝えられたと思う」と胸を張った。

 旭川大はこれまで夏の甲子園に10度出場。2018年には佐久長聖(長野)に延長14回タイブレークの末4-5でサヨナラ負け。2019年は奥川恭伸(現ヤクルト)を擁する星稜に0-1で敗れるなど、接戦を演じている。

 選抜王者と互角の戦いを見せたが、端場雅治監督は「結果から言うと良くやってくれたが、勝負ごとなので勝ちたかった。うちが大阪桐蔭に勝つには、100%の試合ができないと勝てない。ミスが出たところに最大の敗因がある」と、至って冷静に試合を振り返っていた。

大阪桐蔭・西谷監督「向こうは攻めてくる。こっちは受けてしまう形になってしまった」

 大阪大会を危なげなく勝ち上がり、3度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭を相手に誰がこの展開を想像できたか。全国からトップレベルの選手が集まる“最強軍団”を相手に、ベンチ入り全18人が北海道出身の“道産子軍団”が見せた1戦に甲子園はこの日、一番の盛り上がりを見せていた。

「しぶとく粘り強い野球がうちの身上。そういう野球を前半は相手にされて苦しくなった。向こうは攻めてくる。こっちは受けてしまう形になってしまった」

 甲子園春夏通算62勝目を挙げた西谷浩一監督にそう言わしめるほど、旭川大ナインが見せた一投一打は光り輝いていた。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)