中日入団後に内野から外野手に「これは無理と痛感しました」 プロ野球選手を夢見る子どもやその保護者に中日、楽天、オリックス…
中日入団後に内野から外野手に「これは無理と痛感しました」
プロ野球選手を夢見る子どもやその保護者に中日、楽天、オリックスでプレーした鉄平さんが「プロ野球選手になる方法」を伝授する連載「教えて! 鉄平先生!」。最終回の第6回のテーマは「プロ野球選手の苦労とやりがい」。現役生活は苦しさやつらさが大部分を占めるものの、大歓声の中でプレーできる高揚感は何にも代えがたいものがあったという。また、改めてプロを目指す子どもたちへアドバイスを送った。
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前回の連載で、投手断念と左打者への転向がプロになるターニングポイントだったとお伝えしました。プロに入ってからの一番の転機は外野手へのコンバートです。高校ではショートをしていたので、中日には内野手として入団しました。でも、プロに入って周りの内野手を見た時に「これは無理」と痛感しました。レベルは全く違いましたが、プロの打撃と走塁は想像の範囲内で、何とかなるかもしれないという印象でした。一方で内野守備は、努力してもどうにもならないと感じました。
当時の中日は“アライバコンビ”の荒木雅博さんと井端弘和さん、さらに久慈照嘉さんや李鐘範ら名手ぞろいでした。内野手が何気なくアウトにしているプレーは、実はものすごくて簡単にはできません。自分が同じようにやってみると、打球は速いですし、送球しようと打者走者をチラッと見たら、もう一塁の手前まで走っている感覚です。焦って送球すると暴投、アウトにできても間一髪でした。結局、内野手は2年間で失格の烙印を押され、外野手にコンバートされました。自分自身でも厳しいと思っていましたし、早めに判断してくれた首脳陣には感謝しています。内野手としての守備力は全くプロのレベルには達しませんでしたが、打撃に生きる経験があったのも収穫です。
内野守備の練習では、ゴロを捕球する中腰の姿勢で下半身をいじめ抜きます。この時に、足のどの部分で上半身を支えれば、比較的楽なのかポイントを探します。しばらくは太ももに力を入れていたのですが、ある日、足の付け根にもっと強靭な土台があることに気付きました。足の付け根で上半身を支えると、疲れが少ないんです。はまるポイントがありました。これが、打撃の時の下半身の使い方や体重移動につながりました。守備練習の中腰では両足の付け根に同時に力を入れますが、打撃では軸足の付け根に力を入れて、打ちに行く時に踏み込む足の付け根に力を移動します。より下半身を使った打撃ができるわけです。短くまとめましたが、かなり長い期間をかけて習得した動きです。
内野に名手がたくさんいた当時の中日は、外野も強肩がそろっていました。福留孝介さん、アレックス・オチョア、英智さん。肩の強さで勝負しても勝てないのは明らかなので、捕球から送球するまでの動きをいかに速くするかを考えて練習しました。
楽天での主力時代はプレッシャーで「苦しさばかり」
レギュラーを奪うための練習は大変です。ただ、本当にきついのは、試合に出続ける立場になってからです。一番しんどかったのは、間違いなく楽天で主力として試合に出ていた時です。ヒットを打つ、試合に勝つ喜びがある分、駄目だったときの反動は大きくなります。結果を求められるプレッシャーと、そのための努力は苦しさばかりです。結果を出さないといけないわけですが、基本的に結果は出ません。打率3割で成功と言われる世界なので、失敗の方が圧倒的に多いわけです。
ヒットを打った時、盗塁に成功した時、ある程度活躍して試合に勝った時、ホッとする瞬間はあっても、すぐに次の打席や試合がやってきます。試合に出続ける大変さ、目の前の試合に勝つ難しさ、もう2度とヒットが出ないのではないかという不安。暗闇の中で前に一歩踏み出して、そこに地面があったと安心するような心境の繰り返しです。プロ野球生活は、おそらくどの選手も9割5分は苦しさやつらさが占めていると思います。
それでも、0割5分しか味わえないやりがいや喜びが特別だからこそ、努力できます。何万人もの人から注目されて、大歓声の中でプレーできる高揚感は何にも代えがたいものがあります。楽しいと思ったことはありませんが、やりがいは感じていました。子どもの頃から、おぼろげながら思い描いていた夢が叶ったわけですからプロ野球選手になれてよかったと引退してからは思いました。
身をもってプロ野球選手の大変さを知っている私ですが、自分の息子やアカデミーの子どもたちに「プロ野球選手になりたい」と言われたら、明るく満面の笑みで「頑張れよ」と伝えたいと思います。プロになるのはマニュアルがあるわけでも、テストのように合格点があるわけでもありません。方法が明確にはないからこそ、絶対にプロになると重く捉えないでほしいんです。本気でプロを目指す年齢に達する頃になれば、それなりの厳しさ、難しさは絶対に出てきます。放っておいても、頑張らないといけない時期が来ます。それまでは、特に小学生、中学生くらいの子には明るく頑張れよと言いたいです。そして、「プロになりたいなら練習。たまたまなれる仕事ではないよ」と明るく付け加えます。
トップレベルにいる人の共通点は「負けず嫌い」
プロを目指す子どもたちへのアドバイスとしては、まず第4回のテーマでお話した「ご飯を食べる」こと。人間は酸素を吸って成長する草木と違って、食べたものでしか大きくなれません。技術的にプロになる力があっても、体を大きくできずに諦めた人を見てきました。もう1つは、できないことに悔しさを感じてください。小、中学生の時は上手くいかないことや人に負けることがいっぱいあるかもしれませんが、「上達してやる」という気持ちを忘れないでほしいです。その気持ちの強さが、将来の伸びしろにつながります。どんな分野でもトップレベルにいる人の共通点は「負けず嫌い」だと思っています。
私自身も子どもの頃、ものすごく負けず嫌いでした。打ったり走ったりするのは上級生相手でも負けたくなかったですし、並走してランニングする時に、隣の選手より少し前を走っていたくらいでした。プロでは感情を表に出さないタイプに見られていましたが、元々は気持ちを全面に出す選手でした。高校最後の夏の大会で、気合いを入れ過ぎて力んでしまい、最後の打者になってしまった苦い経験から、気持ちをフラットに保たないとパフォーマンスに影響が出ると悟りました。ずっと負けず嫌いをプレーにも出した上で、失敗を経てブレーキをかけるようにしたわけです。
プロに入ってから交感神経と副交感神経の割合を調べたことも、感情をコントロールする考え方につながりました。一般的に交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキの役割と言われています。どちらが、どのくらい優位に働いているか調べた結果、私は80%が交感神経でした。ほぼずっとアクセルを踏んでいる状態と言われました。その時に合点し、自分は日頃からちょっとブレーキを踏むくらいでパフォーマンスを発揮できると確信しました。
全6回に渡って、「プロ野球選手のなり方」をテーマにお話してきました。これまでの自分の経験や考え方を整理する機会になりましたし、たくさんのご意見やご感想をいただき貴重な経験になりました。ありがとうございました。子どもたちがプロを目指すと言った時、保護者の方々には食事や送迎など、できる範囲でサポートしていただけたらと思います。そして、笑顔で「頑張れ」と声をかけてください。この連載が皆さんの参考になり、野球を楽しむ親子が1組でも増えたらうれしいです。
○土谷鉄平(つちや・てっぺい) 1982年12月27日生まれ、大分県大分市出身。津久見高校から2000年ドラフト5位で中日に入団。2006年に楽天へ移籍し、2009年に打率.327で首位打者に輝いた。オリックスへの移籍を経て2015年限りで現役引退。引退後は楽天アカデミーコーチ、2軍外野守備・走塁コーチ、1軍打撃コーチを務めた。現在は球団を離れ、野球解説者として活躍の場を広げている。(「パ・リーグ インサイト」編集部)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)