JBCFサイクルロードシリーズの最上位に位置するJプロツアーの第9戦、「第20回石川サイクルロードレース」が、福島県石川郡の石川町において7月17日に開催された。海の日の連休を利用した福島3連戦の2戦目となり、今年20回目の開催となる伝統あ…

JBCFサイクルロードシリーズの最上位に位置するJプロツアーの第9戦、「第20回石川サイクルロードレース」が、福島県石川郡の石川町において7月17日に開催された。
海の日の連休を利用した福島3連戦の2戦目となり、今年20回目の開催となる伝統あるレースで、国内のロードレース界では7月の風物詩的な存在だ。この地区にある学校法人石川高等学校はスポーツの名門校で、自転車競技部からも、オリンピアンを含む多くのロード、競輪選手を排出している。

「ジェットコースター」とも評される名物コースは、1周13.6km。アップダウンとカーブが連続する厳しいもの。開催時期となる7月半ばの福島は、湿度の高い暑さに見舞われることも多く、サバイバルレースとなることも多い。
午前中に開催された別クラスのレースでの事故への対応の影響を受け、1時間ほどスタートが遅れる事態に。レースはコースを10周する設定であったが、この遅れを受け、7周95.2kmの開催に短縮。レース内に2回予定されていた中間スプリント賞は、2周回完了時の1回のみとされた。
1時間押しとなったスタートラインには、最前列に個人総合首位を示す赤いプロリーダージャージを着た小林海(マトリックスパワータグ)とU23の首位を示すホワイトジャージ姿の山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が並ぶ。頭上には青空が広がり、暑さとの戦いになることも予想された。



赤いリーダージャージの小林海(マトリックスパワータグ)、ホワイトジャージの山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)を先頭に1時間遅れのレースがスタートした

距離の短縮を受けてか、レースは1周目から1周を19分台で走るハイペースで進行した。3周目には、TEAM BRIDGESTONE Cyclingが集団前方に集まり、コントロールを試み始めたが、これを嫌ったアタックがかけられ、集団はまとまらず、活性化したまま。代わりに先頭に立つチームも現れず、混沌とした状況のまま、レースは進んでいった。
5周目、動きが生じた。JCLの昨年の個人総合優勝選手である山本大喜(キナンレーシングチーム)とレオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)、全日本優勝経験も持つ入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)という実力者3名が抜け出し、先行を始めた。



山本大喜(キナンレーシングチーム)、レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)、入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)

この危険な動きを許すはずがなく、TEAM BRIDGESTONE Cyclingと愛三工業レーシングチームが集団をペースアップし、3名を飲み込んだ。



飛び出した3名を吸収し、そのまま先頭を固めるTEAM BRIDGESTONE Cyclingと愛三工業レーシングチーム

強力なスプリンターを抱えており、スプリント勝負に持ち込もうとするであろうこの2チームの動きを見て、また新たな動きが生じた。キナンレーシングチームが先頭に集結し、ペースアップを始めたのだ。



強烈なペースで集団を牽引し、選手たちをふるい落としていくキナンレーシングチーム

このハードなコースでハイペースを強いられ、耐えられなくなった選手たちが続々とこぼれ落ちていく。翌周回に入る頃には、先頭は一気に10名ほどにまで絞り込まれていた。
ここから、小林とトマ・ルバ(キナンレーシングチーム)が先頭に立ち、さらにペースアップ。この動きに耐えられたのは、小林とルバ、山本大喜とキンテロのみだった。



終盤の展開に残ったのは小林とキンテロ、トマ・ルバと山本大喜(キナンレーシングチーム)の4名

※熾烈なサバイバルレースの結末は……!?
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2名のみとなり、協調しながらゴールを目指す小林とルバ

上りに入ると、キンテロが遅れて3名に。ここから山本大喜も遅れ、小林とルバの2人の先行体制になった。2人は協調し、先頭交代をし、相手の出方を見ながら周回をこなしていく。



山本大喜が2名に合流し、ここで一気に形勢が変わる

ラスト6km、なんと山本大喜が間合いをはかっていたかのように単独で追い上げ、2名に再び合流した。2対1となり、最後の最後に有利になるキナン勢。ラスト2kmでルバが遅れ、小林と山本大喜の一騎討ちに。



ラスト2km、序盤から積極的に動き続けてきたルバが、ついに堪えきれずに遅れる



小林と山本大喜のスプリント勝負に

最後は上りスプリントでの勝負となった。先に仕掛けたのは小林だったが、追い上げた山本大喜がここに並び、フィニッシュラインに飛び込んだ。勝利を確信した山本大喜はガッツポーズを決めたが、二人ほぼ同時に飛び込んでおり、勝利の行方は映像判定に持ち越された。判定結果は、山本大喜の優勝。山本大喜は改めて、勝利のガッツポーズを決めたのだった。



勝利を確信した山本大喜がガッツポーズ。映像確認後、山本の勝利が宣告された

会心の笑顔で表彰台に立った山本大喜は、「序盤から動き続け、さらにアシストに回ってくれた『トマさん』のために、なんとしても勝ちたかった」と思いを語った。勝利の喜びを語り、翌日のレースもチームが得意な形に持ち込みたいと連勝への意欲を見せた。



サバイバルレースを経て優勝争いを展開した3名の表彰台。死闘を見せた3名に惜しげない拍手が贈られた

表彰台の2名は交流戦としてのスポット参加であり、小林のランキングに変動はないが、初戦から積み上がってきたマトリックスパワータグ、小林の優勝カウントは、前日に続きストップ。リーグに漂っていた停滞した空気感にも変化が生じてきた。



リーダージャージを守った小林と山本

U23のランキングにも変動はなく、山本が首位を守っている。3連戦の最終日は、隣接する古殿町に舞台を移し、古殿ロードレースが開催される。流れが変わった感のあるこのリーグで、活性化された各チームがどう動くのか、楽しみが増していった__。

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【結果】第20回石川サイクルロードレース(95.2km)
1位/山本大喜(キナンレーシングチーム)2時間19分3秒
2位/小林海(マトリックスパワータグ)+0秒
3位/トマ・ルバ(キナンレーシングチーム)+6秒
4位/安原大貴(マトリックスパワータグ)+46秒
5位/入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)+54秒

【スプリント賞】
安原大貴(マトリックスパワータグ)

【敢闘賞】
該当者なし

【Jプロツアーリーダー】
小林海(マトリックスパワータグ)

【U23リーダー】
山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)

画像提供:一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟

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