先日開催された、高校生日本一を決める「ITADAKI ダブルダッチ甲子園 2022」。最注目となるショーケース部門において、見事優勝を果たしたのは高校1年生の「狛夢病愛」(コマユメア)。
ダブルダッチの最少人数となる3名でステージに立った彼女たちだが、その独自色あふれる世界観で、2階のギャラリーまで大勢のオーディエンスを魅了した。
そんな彼女たちに今回、FINEPLAY編集部がインタビュー。彼女たちの強さの裏側には、パフォーマンスからは伺い知れない思いと、強く結ばれた絆があった。
左から コナミ・マユカ・ナツキ / Photograph by しば
納得いく「勝ち」を目指して
優勝という結果を手にし、満足感も持ちつつも「信じられない」と、優勝旗の重みを感じる3人。特徴的なパフォーマンスが生まれるまでの経緯と、彼女たちが思う「勝因」について訊いた。
―まずは優勝おめでとうございます。今の率直な気持ちはどうですか?
マユカ:
信じられなかったです。
結果発表で名前を呼ばれたとき、お母さんたちも想定外で「えっ?えっ?」ってなっていて(笑)。
コナミ:
最初から優勝を目指してITADAKIにも出場しましたが、いざ優勝するとなると…。今もまだ信じられていないです。
―ITADAKIには上級生のチームも数多く出場する中で、1年生の段階で優勝を目指していたチームはそう多くなかったのではないかと。どうして優勝を目指すに至ったのでしょうか。
コナミ:
私たちは高校生になる前からダブルダッチをやってきたのですが、やはり勝てなかったり、納得いく「勝ち」の経験も少なかったので、もしかしたらそういう理由なのかも知れません。負けた悔しさを知っているから、余計に「勝ちたい」と思えたのだと思います。
コナミ / Photograph by しば
マユカ:
進級して高校生になったから、そこで結果を残すということは3人の目標でした。
―3人とも高校生になる前からダブルダッチを始めていたんだ。
ナツキ:
マユカとコナミは小2で、私は中1から始めていました。歴としてはマユカ・コナミが7~8年くらいで、私が4年くらいになりますね。
―かなり長いんだね。「狛夢病愛」としてのチーム結成はいつ?
ナツキ:
今年の5~6月くらいですね。結成してすぐに「この雰囲気でいこう」とは決まっていました。
コナミ:
“地雷系女子”といいますか。
ふわふわしていてアイドルっぽさがあって、だけど少し重たくてメンヘラっぽいような(笑)。
Photograph by しば
コナミ:
私たちはボーカロイドや歌い手さんが好きで、色々と曲の案が出たときに、そういった雰囲気の曲が候補として出ていたんです。そして『ダーリンダンス』という曲が1曲目として決まった時点で、この路線で行こうと(笑)。
マユカ:
先ほども言いましたが、私たちは納得いく「勝ち」を掴めていなかったんです。
だから今まで通りのいわゆる「王道系」のパフォーマンスだと、勝ち上がるのは難しい。新しいものにチャレンジする必要性を感じていたんです。
―みんなの中では「優勝」を口に出来るくらい、相当悔しい思いを経験してきたんだ。
コナミ:
そうですね。一番大きかったのは昨年の夏の大会で、出場した同じスクールの後輩に負けてしまったことです。
マユカ:
他にも予選は1位通過、でも本戦では5位みたいな。「ここぞ」って時に勝てていなかったことは悔しかったですね。
確かに経歴だけ見れば「勝ち」は多いのかも知れないけど、ミスが多かったり、私たち自身納得のいくものではなかった。
ナツキ:
不思議なくらい大事なところで勝てていなかったよね(笑)。
だからこそ「王道」から離れて、私たちのやりたい路線で突き進むことを選びました。
ナツキ / Photograph by しば
「やりたい」を戦略に
諸説存在するが、この「地雷系女子」というのは一般的に「表向きは魅力的なのに、付き合ってみると依存気質があるなど、ダークな内面を持っている女性のこと」とされている。
可愛らしい見た目とは裏腹に、そうした“毒”のような部分もパフォーマンスの中で魅せ切った彼女たちは、意外にも戦略的に「やりたいこと」を選び取っていた。
狛夢病愛 / 写真提供: ITADAKI 実行委員会
―なるほどね。戦略を立ててパフォーマンスを作っていたんだ。
コナミ:
そうですね。コンセプトと表現にはこだわって作りました。
―ダブルダッチでは珍しいジャンルだと思うのですが、そこに抵抗はなかったのでしょうか。
コナミ:
無かったですね。むしろ逆にやりたかったし、みんな賛成していたよね。「やりたい、やりたい」で突き進んでいくと、どんどん新しいアイディアが出てきて。
ナツキ:
「やる?やる?やろっか!」みたいな。
―それは素晴らしいね。やりたいことを戦略として掲げたことが功を奏したと。
先ほど「コンセプトと表現にこだわった」と話してくれましたが、あの世界観を作る上での工夫があれば教えてください。
マユカ:
自分たちが普段好きで聴いているような曲だったので、まず改めてしっかり聴き込みました。それからダブルダッチだけでなく、雰囲気作りに役立つような動画も観ましたね。
コナミ:
衣装だと、世の中的に“地雷系女子”感のある洋服が存在するので、そういう服を売っているお店に行きました。すぐに一式揃いました(笑)。
マユカ:
そういう世界観を作り込む工夫をしていくなかで、最後のインパクトある曲はさなりコーチが提案してくれました。
コーチのSANARIと / Photograph by しば
マユカ:
あと細かい振り付けの部分は、友人が協力してくれています。ダンスが上手い子がいて、ダブルダッチをやりたいんだけど、自分がプレイヤーとしては難しいということで、振り付けの部分を協力してくれています。
―そうなんだ。コーチや友人の協力もあって作り上げられていたんだね。
ナツキ:
あと、私たち3人はそれぞれ得意分野が違うので、それを活かした分担が出来たことも大きかったです。ロープの扱いが得意なマユカと、ステップが得意なコナミ、そして私はスピードが跳べて。
―やっぱりチームスポーツだから、その役割が明確になっていて、それを活かしたショーが作れるというのは大きな強みだね。
練習中の雰囲気はどんな感じだったんでしょうか?
コナミ:
チーム仲はとっても良いです。普段からよく遊んでいます。
ナツキ:
特に何をするわけでもなく、ずっとおしゃべりしています(笑)。
―それは仲良しになるね(笑)。逆に練習していて大変だったことはありましたか。
ナツキ:
やりたいことを出して、後はどのように繋ぎ合わせるかだけだったので、進展的には楽でした。
ただ練習のスケジュールが合わないことは大変でしたね。元々小学校・中学校が同じだったのですが、高校はバラバラになってしまったので。
―「どのように繋ぎ合わせるか」という話も少しありましたが、練習自体はどのようなことをやっていたのでしょうか。
コナミ:
好きなダブルダッチのチームの技を参考にして、自分たちがやりやすいように改造したり、あとは何も考えずにロープを回して、思い付いた技を形にしたり、自分の好きな縄技を組み合わせて“新技”を作ったりしていました。
―どんどんアイデアを出していく作業ということだよね。「思い付いたけど恥ずかしくて言えない」みたいなことは無かった?
マユカ:
それは無いですね。みんなで色々おしゃべりしながら、意見を出し合って作っています。
マユカ / Photograph by しば
2人が居てくれたから
練習の甲斐あって、本番では見事1位を掴み取った狛夢病愛。優勝という結果には満足しつつも、心境を訊くと彼女たちの飽くなき「野心」と、3人の強い絆を覗かせていた。
狛夢病愛 / 写真提供: ITADAKI 実行委員会
―今回パフォーマンスを終えた時の気持ちはどうでしたか。
マユカ:
楽しかったけど演技は悔しいですね。前半は縄が乱れてしまったのと、見せ場のスピードは魅せ切れなかった。
ナツキ:
でもステップは通せたし、めちゃくちゃ練習していた2曲目以降はしっかり通せたことは良かったです。
実際のパフォーマンス動画がこちら
― 確かに雰囲気に頼り切るんじゃなくて、「おおっ!」と唸るような技も多かったね。練習していて、なかなか成功しない“しんどさ”みたいなものはあったのかな。
コナミ:
それはありました。喧嘩とかはありませんが。
ナツキ:
私がちょっと落ち込んでしまうことはありますが、いつもそういう時はコナミが笑わせてくれるんです。
マユカ:
コナミは面白いこと好きだもんね(笑)。
―きっと野心的なみんなのことだから、まだまだ「勝ち」を目指して突き進んでいくと思うんだけど、みんながこれから目指すことについても聞かせてもらいますか。
コナミ:
まずは直後に控えている、8月の「Double Dutch Delight」という夏の学生大会に出場して、日本一になりたいです。
そしてその後の国際大会に駒を進めて、そこでも1位になりたい。
マユカ:
恐らくそのあとは、クラブの中でまたチームを再編成することになると思うので、この3人で突き進められるところまで行ってみたいです。
ナツキ:
私も2人と同じ考えですが、私自身、自分の能力だけでは勝てないと思っています。
私が勝ったとしたら、それはチームメイトのお陰です。チームメイトが居てくれるお陰で私もここにいられるから、私が出来ることはダブルダッチを楽しむこと。
涙ながらに感謝を口にするナツキの涙を、そっと拭うコナミ / Photograph by しば
コナミ:
ナツキがそう言ってくれましたが、マユカと私は逆にナツキに支えられていました。練習で上手くいかないこともあったけど、この3人だったから優勝の夢を叶えられたと思います。
マユカ:
本当にそうだね。
優勝旗を掲げ「重いね」と語り合う3人は、既に次のステージを見ていた。強い絆と思いで結ばれた彼女たちは、これからも多くのオーディエンスを惹きこんでいくに違いない。
信頼し合う仲間と創る物語。彼女たちの飽くなき挑戦は、楽しそうな笑顔と共にこれからも続いていく。
Photograph by しば
大会概要
「ITADAKI ダブルダッチ甲子園 2022」
日時 : 2022年 7月24日(日)
時間 : 開演 13:30 / 終演 19:00 予定
会場 : 川崎ルフロン
主催 : ITADAKI 実行委員会
共催 : 川崎市 / INTERNATIONAL STREET FESTIVAL KAWASAKI 実行委員会
主管 : 有限会社OVER THUMPZ
協賛 : ポカリスエット / ヘインズブランズ ジャパン株式会社
協力 : スキルハック / JSDDL (日本学生ダブルダッチ連盟)
後援 : 一般財団法人 日本ジャンプロープ連合 (JJRU)
協力メディア : FINEPLAY
The post 「仲間が居てくれたから」 ITADAKI 2022 優勝“狛夢病愛”インタビュー first appeared on FINEPLAY.