帝京戦の初回に幸運な先制適時打、3回に高め速球を左翼席に運んだ 15歳の4番打者が躍動した。二松学舎大付の片井海斗内野手…

帝京戦の初回に幸運な先制適時打、3回に高め速球を左翼席に運んだ

 15歳の4番打者が躍動した。二松学舎大付の片井海斗内野手(1年)は28日、神宮球場で行われた第104回全国高校野球選手権東東京大会準決勝の帝京戦に「4番・一塁」で出場。初回に先制タイムリー、3回に左翼席へ公式戦初本塁打を放つなど、4打数3安打2打点と活躍した。チームも7-4で勝ち、3季連続の甲子園出場へ王手をかけた。

 175センチ、96キロ。ややずんぐりした体形の1年生が、大仕事をやってのけた。初回1死二、三塁のチャンスで迎えた第1打席では、打ち上げた飛球を相手の二塁手が見失い、幸運な先制適時打に。「ラッキーでした」と照れ笑いを浮かべた。

 そして、3回2死走者なしで迎えた第2打席で驚異的な打撃を披露する。帝京先発の最速145キロ右腕・高橋蒼人投手(2年)が投じたボール気味の内角高めの速球を、大根切りのようなスイングでとらえ、左翼席へ放り込んだのだ。高校入学後7本目、公式戦では初の本塁打だった。

 市原勝人監督も「あの打撃は予想外。140キロ半ばの球を空振りせず、上からかぶせてよく打ちましたね」と目を丸くする。5回戦の錦城学園戦から4番に抜擢し3試合目だったが「試合ごとになじんできています。1年生が活躍すると、ベンチがワッと盛り上がる。1年生の活躍で勢いに乗ったチームは他県にもあるので、ウチもそうなってくれるといいなと思います」としてやったりだ。

市原監督「誠也は1年生の時はあまり打たなかった」

 二松学舎大付OBで、片井の12年先輩にあたる現カブス・鈴木誠也外野手と比べても、遜色のない才能の持ち主と言える。市原監督は「誠也は1年生の時はあまり打たなかったので、(1年生の時点では)片井の方が結果が出ている気がしますよ」とおどけつつ、「そもそも、あの頃の高校1年生には140キロ半ばのボールは打てなかった。一般的に中学生のレベルが上がっているのだと思います」と話した。

 鈴木誠也の野球に対する真摯な姿勢は、市原監督を通じて叩き込まれているが、個人的に中学2年の頃から手本にしているのは巨人・岡本和真内野手の打撃だという。「テークバックから最短距離でバットが出ている。岡本さんのように逆方向(右翼方向)へも大きい当たりを打てるようになりたいです」。

 目指すは、左翼、中堅、右翼どこへでもスタンドインさせることができる長距離砲。その点では、アウトにはなったが5回無死一、二塁での第3打席で中堅右のフェンスぎりぎりまでフライを飛ばし、二塁走者をタッチアップで三塁へ進めた打撃にも手応えがあった。

 2006年8月31日生まれ、満15歳の右投右打のスラッガーは、埼玉県朝霞市の自宅を離れ、寮生活を送っている。今大会での4番抜擢には「びっくりしました」と言うものの、中学時代にも狭山西武ボーイズで務めていた“定位置”とあって「やっぱり、しっくりきます」と屈託がない。一方で「甲子園のイメージは、全然湧きません」と苦笑する。昨夏や今春には、まだベンチにも入っていなかった若武者が、チームを3季連続の聖地へ導こうとしている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)