弟の哲星は178球完投、兄の哲太はランニング弾 市船橋を15年ぶり6度目の夏の甲子園へ導いたのは、“森本ツインズ”だった…

弟の哲星は178球完投、兄の哲太はランニング弾

 市船橋を15年ぶり6度目の夏の甲子園へ導いたのは、“森本ツインズ”だった。27日にZOZOマリンスタジアムで行われた、第104回全国高校野球選手権の千葉大会決勝。エースの左腕・森本哲星(てっせい)投手(3年)は春夏連続出場を狙う強豪・木更津総合の強力打線に13安打されながら、9回178球6失点完投。双子の兄で「3番・中堅」の森本哲太(てった)外野手(3年)は、9回に中堅フェンス直撃のランニングホームランを放ち、守備でも持ち前の強肩で弟を援護した。

 炎天下で9回を投げ切り、チームを甲子園に導いたエースの哲星は「全ての高校球児が憧れる舞台なので、うれしいです」と満面に笑みをたたえつつ、強豪がひしめく千葉を勝ち抜いたとあって「正直言って、行けるとは思っていませんでした」と本音を漏らした。

 決勝は前日の26日に行われるはずだったが、雨天で順延された。前日発表されたスタメンでは背番号10の坂本崇斗投手(3年)が先発するはずだったが、一夜明け、海上雄大監督は「1」を背負う哲星に託した。「何点取られても、何球投げても、おまえが最後までいけ、と監督さんから言われていて、僕も投げ切ってやると決めていました」と哲星は明かす。今大会では専ら試合中盤からリリーフを務め、先発はこれが初めてだった。

“苦投”の哲星を、哲太が中堅守備でアシストしたのは、6-5の1点リードで迎えた7回だった。1死二塁から9番打者に中前打を浴びたが、二塁走者は三塁でストップ。続く1番打者にもセンターの定位置付近へ、あわや同点犠飛のフライを打ち上げられたが、哲太は本塁へ絶妙のワンバウンド送球。ここでも三塁走者を釘付けにした。木更津総合は結局この回に追いつくことができず、逆に市船橋が8、9回に突き放した。

左腕・哲星「哲太と競い合ってきたから今の自分がある」

 哲太の強肩は当然、木更津総合サイドも承知の上。だからこそ本塁に突入することができなかったのだろう。哲星も「最近は、センターにゴロを打たれる分には、二塁走者を返されることが少なくなりました。センターに打たせれば何とかなる、打たせるならセンターと思っています」と、兄への全幅の信頼を口にした。

 そして9回、先頭で第5打席に入った哲太は、打球がフェンスを直撃し転々とする間に、俊足を飛ばしてダイヤモンドを1周。哲星は「9回に打つのではなく、序盤に打ってほしかった」と、1点ビハインドの2回2死満塁で一邪飛に倒れていた哲太をからかった。

 森本ツインズは鳥取県出身。小学3年から野球を始め、地元のスポーツ少年団、南部町立南部中を通じて同じチームでプレーした。小学5年から中学3年までは、哲太が捕手で“双子バッテリー”を組んでいた。首都圏への引っ越しを機に、千葉の名門・市船橋に入学し、同学年にプロ注目の捕手・片野優羽(3年)がいることもあって、哲太は外野手に転向。「強豪ぞろいとわかっていて千葉に来た。来たからには甲子園に行こうと2人で話していたので、夢が1つかないました」と哲太が口元をほころばせた。

 哲星は「哲太は小さい頃からライバル。哲太より上になってやろうと競い合ってきたからこそ、今の自分があると思っています」と話す。お互いに、負けてなるかと対抗意識を燃やし、一方で誰よりも信頼し合っている。哲太は右投右打、哲星は左投左打。顔はよく似ているが、利き腕も持ち味も違い、だからこそ1+1が2では収まらない。甲子園でどんな伝説を紡いでくれるのだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)