東海大相模との決勝戦をサヨナラ勝利で制し甲子園へ ライバル対決を制したのは、横浜だった。0-0で迎えた9回2死二塁、萩宗…
東海大相模との決勝戦をサヨナラ勝利で制し甲子園へ
ライバル対決を制したのは、横浜だった。0-0で迎えた9回2死二塁、萩宗久外野手(2年)が外のスライダーを右前に運ぶと、二塁ランナーの岸本一心外野手(3年)が生還。この瞬間、2年連続20度目の夏の甲子園出場が決まった。横浜スタジアムで行われた第104回全国高校野球選手権神奈川大会決勝戦、東海大相模を相手に1-0、サヨナラ勝利を収めた。
就任3年目を迎えた横浜・村田浩明監督は、ベンチ前で顔を覆い、片膝をついて泣いていた。立ち上がるまでにおよそ20秒。涙が止まらなかった。
「とにかく、苦しかった。それが一番です。秋はコロナで出場辞退、春は部内でごたごたがあり、世間を騒がせてしまった。そんな中、キャプテンの玉城(陽希)を中心に一致団結して、本当によく戦ってくれました。今日の杉山(遥希)の好投も、玉城のリードがあってのもの。東海大相模戦に向けての準備を念入りにやったうえで、玉城が冷静に配球をしてくれました」
杉山と玉城のバッテリーは、これまでほとんど見せていなかった左バッターのインコースのストレートを要所で配した。左腕は9回2安打完封と最高のピッチングを見せた。
東海大相模のエース庄司裕太投手(3年)に対しては、「左バッターが打つのは難しい。カギを握るのは右バッター」という考えのもと、これまでは6番・山崎隆之介内野手(左打者=3年)、7番・萩(右打者)で組んでいた打線を入れ替えたことが、最後に生きた。
指揮官が準備したのは、戦い方だけではない。決勝前の高揚感から、4時に目が覚め、パソコンの前に向かった。
「部員71名全員に手紙を渡しました。一番伝えたかったのは、『3年生のためにやろう』。この3年生が、横浜高校の野球部をつないでくれたので。泥臭く、がむしゃらに頑張ってくれて、本当に『こいつらを勝たせてあげたい』と思わせてくれるチームに成長しました」
横浜の伝統をつないだ3年生の力
3年生が入学する前、横浜の監督は正式に決まっていなかった。前体制で不祥事があり、高山大輝コーチ(現部長)が代行監督に。その影響で、進路を変更した中学生もいた。
こうした中で横浜を選んだのが、現在は主力に成長した玉城や岸本、大坂啓斗外野手、板倉寛多内野手らである。だからこそ、村田監督は「3年生が、横浜高校の野球部をつないでくれた」と表現する。
3年前のことを、岸本はこう明かす。
「横浜に入学することがほぼ決まっていた人たちのグループLINEがあって、玉城が『監督は代わるけど、俺たちは変わらないよな』と書き込んでいて、その言葉が決め手になりました。最初から玉城の存在感が大きくて、一言で表現すれば『漢気があるやつ』です」
玉城が、横浜入学を決意したのは小学6年時まで遡る。横浜DeNAベイスターズジュニアに選ばれたとき、監督を務めていたのが横浜OBの鈴木尚典氏(現DeNA1軍打撃コーチ)だった。
「尚典さんに、『横浜高校を目指せよ』と熱い言葉をもらって、横浜でプレーをして、甲子園に行きたいと思うようになりました。中学では、横浜とつながりの深い中本牧シニアに入って、OBの久保木(大輔)コーチに出会い、さらに横浜への想いが強くなりました」
1年時から試合経験を積んだが、2年夏の3回戦でアクシデントに遭った。ファーストを守っていた玉城は、ファウルボールを追いかけたときにフェンスに激突。のちに脳震盪の後遺症が現れ、2か月ほど練習から離れた。グラウンドに来ても、声を出すだけの日々が続いた。
「野球ができないもどかしさがあって、グラウンドに行くのがイヤになるときもありました。その中で、ほかの3年生がよく引っ張ってくれた。苦しかった時期を耐えたことが、優勝に結びついたのかなと思います」
応援席への挨拶を終えると、スタンドで応援するメンバー外の3年生のもとに笑顔で駆けていった。
「自然に、『あいつらのところに行きたい』と思いました。メンバーを外れた3年生がバッティングピッチャーやボール拾い、グラウンド整備をしてくれたから、この優勝がある。『ありがとう!』と伝えたいです」
2年連続の夏の甲子園。キャプテンは力強い言葉で締めた。
「行くだけでは意味がない。横浜高校という看板を背負って、甲子園でも一戦必勝で勝ち抜いていきたいです」
新チームから掲げてきたスローガンは『結束力』。3年生を中心にひとりひとりが束になり、6度目の全国制覇に挑む。
○著者プロフィール
大利実(おおとし・みのる)1977年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、スポーツライターの事務所を経て、フリーライターに。中学・高校野球を中心にしたアマチュア野球の取材が主。著書に『高校野球継投論』(竹書房)、企画・構成に『コントロールの極意』(吉見一起著/竹書房)、『導く力-自走する集団作り-』(高松商・長尾健司著/竹書房)など。(大利実 / Minoru Ohtoshi)