全国高校総体サッカー男子、矢板中央が東山をPK戦の末に破り初のベスト8進出 徳島県で開催されている全国高校総体(インター…

全国高校総体サッカー男子、矢板中央が東山をPK戦の末に破り初のベスト8進出

 徳島県で開催されている全国高校総体(インターハイ)のサッカー男子は26日に3回戦を行い、矢板中央(栃木)は東山(京都)を1-1でもつれ込んだPK戦の末に5-4で破り、初のベスト8進出を決めた。冬の全国高校サッカー選手権ではベスト4に進んだ実績を持つが、苦手としていた夏のインターハイでようやくベスト16の壁を超えた。

 特に目立っているのが、左DF木村匠汰(3年)のロングスローだ。開始4分、右サイドから木村が放ったロングスローを主将のMF田邉海斗(3年)が頭で合わせて先制。試合終盤に同点ゴールを許してPK戦にもつれ込んだが、東山の5人目がミスしたのに対し、矢板中央は5人全員が成功。接戦をものにして、新たな歴史の扉を開いた。

 対戦相手の東山は、昨冬の全国高校サッカー選手権で8強。優勝した青森山田(青森)を最も苦しめたチームで、2年生が多かったため主力がほぼ残っている注目チームだ。攻撃の主軸であるMF阪田澪哉(3年)は、来季のセレッソ大阪加入が内定している。技術力の高い攻撃陣が魅力だ。

 対する矢板中央は、泥臭く球際で戦う守備で応戦。リードした後も相手の攻撃をはね返し続けた。高橋健二監督は「今年、スタート段階では厳しいと周りから言われていたし、1人ひとりのレベルを見ると、私も厳しいという印象だった。でも、選手が練習を真面目に取り組んだ。技術はなくても、矢板中央の伝統を一番出し切ったゲーム」とチームを評価した。対人の強さ、左足のロングキックで堅守速攻を体現していた最終ラインの1人が、ロングスローの名手である木村だ。

 先制点を生み出したロングスローは、現代の高校サッカーでは各チームの“標準装備”となっている飛び道具だが、今季の矢板中央は一味違う。1回戦の三田学園戦(兵庫/3-0)で決めた2点目は、木村のロングスローのこぼれ球から生まれた。さらに2回戦の徳島市立戦(徳島/2-1)でも、FW若松優大(3年)のヘディングシュートをスローインでアシストしており、3試合連続で木村のロングスローからゴールを奪っている。

 この日の東山戦では、先制後に木村のロングスローを田邉が頭で合わせて、クロスバーを叩く惜しい場面もあった。タッチラインから遠いサイドのゴールポストまで届くという飛距離だけでなく、力強くてスピードのあるライナー性の軌道も特長。高橋監督は「私が今までに指導した選手の中では、一番飛ぶ。日本の高校年代ではトップクラスじゃないかと思う。プリンスリーグ関東でも(木村ほどのスローインは)見たことがないし、全国にもいないでしょう。そういう武器がある」と高く評価した。

入学直後から「こいつやべえな」と強烈なインパクト

 木村がロングスローを投げ始めたのは、全国屈指の強豪として知られる江南南サッカー少年団でプレーしていた小学生時代。遊びで投げてみたら思っていた以上に飛んだというのが、きっかけだ。保育園で体操教室があり、ブリッジなどを行っていたことから体が柔らかく、182センチの長身を存分に生かして投げる。主将の田邉は「1年生だけで自主練習みたいな時に、匠汰が一発ボーンと投げて、こいつやべえなとみんながどよめいていた。本当に凄い」と入学時から強烈なインパクトを放っていたことを明かした。

 木村は「ロングスローは自信があります。柔軟性が大事なので、ストレッチは毎日やっています」と話した。特に反動を生かすため、腰は念入りにストレッチを行っているという。

 最大7日間で6試合という厳しい連戦。27日は唯一の休養日だ。念入りに体をほぐし、28日に行われる準々決勝に挑む。相手は、優勝候補の前橋育英(群馬)。木村のロングスローが4戦連続でゴールを生み出せば、強敵撃破の可能性はぐんと高まる。矢板中央が誇る、全国屈指の飛び道具に次戦も注目だ。(平野 貴也 / Takaya Hirano)