830グラムと適度に重いバット、選手も「このバット、振りやすい」と実感 芯で捉えた打球はしっかりと外野の頭を越えていった…
830グラムと適度に重いバット、選手も「このバット、振りやすい」と実感
芯で捉えた打球はしっかりと外野の頭を越えていった。プロ野球選手も使う木製バットをポニーリーグは今季から一部の試合で導入。選手も徐々に対応してきたようだ。22日に開幕した中学1年生の「マルハンインビテーション大倉カップ 第46回全日本選手権ポニーブロンコ大会」では、痛烈な打球も見られた。昨年まで小学生だった子が木製バットをしっかりと扱えている印象を受けた。
26日に千葉・ゼットエーボールパークで行われた長崎ポニーベースボールクラブと埼北ポニーペガサスジュニアの準決勝は、6-5で埼北に軍配が上がった。両チーム合わせて安打は15本。初回に左翼の頭上を越す先制三塁打を放った長崎の高峯海士郎くんは「芯に当たれば(金属バットと)同じ」感覚だという。
「(芯に当たれば)フェンス近くまでは飛んでいきます。あと、このバット、振りやすいです」
今大会ではポニーリーグ独自のバットが使用されている。重さの違う2種類のバットが用意されており、中学1年生の多くは830グラムを使用している。1年生でも安打が出て得点が取れる理由について、決勝進出を決めた埼北の幸田康彦監督は「重さの丁度良さ」を挙げた。
「この世代に合う重さのバットってあまりないです。高校用だと重すぎるし、軽すぎても飛ばない。丁度いい重さで芯に当てる技術と、しっかり振ることの両面を意識できるのではないかと考えています」
埼北は今大会4試合で計37安打を放っている。しかし、幸田監督によると練習メニュー自体は金属を使用していた時と変えていないという。練習試合ではすべて木製を使用し実践で慣れていった。打撃には力を入れていたが「こんなにも打てるようになるんですね」と選手の“対応力”に驚いていた。
折れた本数にも技術の向上が反映「長期的に見たら持続可能」
対応力は、折れる本数にも反映されていた。世間一般で言われている「木製は折れるから経済的ではない」という定説。那須勇元事務総長は懐疑的だった。
「本当に経済的ではないのか。感覚ではなく、数値で実際に検証してみるべきではないかと。そして、協会で管理して販売することにしました」
5月から各チームにそれぞれ2本ずつ提供。その後は、折れた分だけ販売することにした。すると、大会が始まった5月ごろは折れて再購入の連絡が何度もきたが、6月、7月は減少していった。
「導入したときは、正しい木目で打たずに折れるケースがありましたが、今ではほとんどなくなりました。慣れてきた成果だと思います」と那須氏も手応えをつかんでいる。すでに8月の3年生が出場する第26回コルト選手権大会でも木製バットの使用が決まっている。
「3年生は初めての使用なので、おそらく最初は折れると思います。ただ、長期的に見たら持続可能だと考えています」
中学生には無理、折れるから経済的ではない。それらの意見は試してみるまで分からない。木製バットを使った子どもたちの可能性は、大人の想像をはるかに超えていた。(川村虎大 / Kodai Kawamura)