関東インカレ1万mでは6位という結果に終わった平林清澄「うーん、勝ちきれないですね」 平林清澄(國學院大・2年)は、悔しさを噛みしめていた。 ホクレンディスタンス網走大会の1万m、平林は島﨑慎愛(4年)とともに出場。「28分台ひと桁、あわよ…



関東インカレ1万mでは6位という結果に終わった平林清澄

「うーん、勝ちきれないですね」

 平林清澄(國學院大・2年)は、悔しさを噛みしめていた。

 ホクレンディスタンス網走大会の1万m、平林は島﨑慎愛(4年)とともに出場。「28分台ひと桁、あわよくば27分台」を狙って、序盤から先頭に立ち、積極的にレースを引っ張った。攻めのレース展開を見せるのは1年生の時からだ。大学駅伝デビューとなった昨年の出雲駅伝では、襷をもらった時から前を追い続け、後半失速したが、その攻めの走りは多くのランナーや指導者に印象づけた。そして「攻めの平林」というスタイルを結果に結びつけたのが、今年の学生ハーフだった。終始、先頭グループに位置し、14キロ地点で仕掛けて前に出ると、そのままトップで駆け抜け、中西大翔(4年)とともにワンツーフィニッシュを実現した。

 網走の地でも、そのスタイルは変わらず、先頭集団の前でレースを展開した。だが、残り2周になった時、うしろについていた中野翔太(中大・3年)に抜かれ、28分12秒16の4位に終わった。

「中野さんに抜かれた時に力みが出て、そこから崩れてしまいました。ラストのスピードに加え、粘りきれないというのが大きく出てしまった感じです。......勝ちきれないですよね。それを求められているんですけど、そこがまだ足りない。学生ハーフで勝ちきれたところから一瞬、調子にのって、その後は自分のため、チームのためにという思いで走ってきたんですけど、勝ちきれない。それを駅伝まで、どう修正するのかが大きなポイントです」

 平林は、自分に言い聞かせるように、そう言った。

 今年、平林のレース展開は、かなり研究されている感がある。それは、平林自身も強く感じていると言う。

「関東インカレも岸本(大紀・青学大4年)さんに抜かれた時点で僕の走りをわかっているんだろうなって思いましたし、今回も中野さんがうしろについてきてラスト勝負だろうなっていうのはわかっていました。そこなんですよね。わかっているけど、勝てない。それにはラストのスピードが必要なんですけど、それって簡単に身につくようなものではないので......。でも、それをやらないと勝ちきれないので身につけたいし、そうしてどんなレースでも勝ちきれる選手になりたい。それができるのが田澤(廉・駒澤大4年)さん、三浦(龍司・順大3年)さんであり、強い選手の条件だと思っています」

 中大の中野が「平林君はロングスパートは得意だけど、ラストは自分に分があるので、うしろについていけばラストで勝てると思いました」とレース後、語ったように、平林のレース展開は完全に読まれていた。それでもラストで負けないスピードがあれば勝ちきれるが、関カレも今回もラストで負けた。「ラストの練習はしている」と平林は言うが、どこまで上げられるのか。27分台を出せる感覚とともに、ラストの粘りとスピードがつけば、駅伝の結果にもつながる。

「昨年、出雲(駅伝)では自分のところ(6区)で抜かれて4位だったので、まずはその悔しさを出雲で晴らしたいですね。そこでいい走りをして、いい流れにのって全日本、箱根での区間賞につなげていきたいです。箱根は、昨年は9区だったので、今年は上位選手と競える区間で走りたいですけど......チームでの役割があるんで、任された区間で結果を出していきたいです」

 万全の調子で箱根に臨められれば、往路の主要区間を任されるだろうが、そのためには出雲で借りを返し、スピードとともに勝ちきる強さが必要になる。駅伝はタイムではなく、勝ちきる強さが求められるからだ。だが、平林のこれまでの走りを見れば、いずれ課題をクリアしていくだろう。走り自体は好調で、着実に強さが増している。

主将の中西大翔は好調

 主将の中西も調子のよさを維持している。ロードシーズンの締めとなる学生ハーフで2位に入ると、トラックシーズンの関東インカレ1万mでは平林より先着して28分35秒87で5位入賞。ホクレン深川大会の1万mB組では28分30秒47で日本人トップの3位、網走大会の5000mでは13分38秒45で自己ベストを更新した。

「次、もう1回5000mを走ったらもっとタイムが出そうだなというレースができたんで、すごくいい経験になったと思います」

 中西は、笑みを浮かべて、そう言った。

 昨年は、故障で苦しみ、自己ベストから離れていたが、今年は外さないレースが続いている。好調の要因は、どういうところにあるのだろうか。

「今年は、最終学年として引っ張っていきたいという思いが強かったので、すごくいい練習ができていて、それが少しずつ形になってきました。あと、(練習を)やりすぎてしまうと疲労がたまってスピードにキレが出なくなるので、落とすところは落としてメリハリをつけるところとセルフケアを徹底してやっているのが大きいですね。ストレッチポールで毎日15分から30分ほどケアしていますが、ポイント練習後にやるとかなり筋肉がやわらぎます」

 アフターケアに時間をかけることで疲労を取り、翌日の練習の準備をする。もちろんケガの予防にもなる。その結果、質の高い練習を常時こなせるようになり、それがレースで結果として出ているのだろう。トラックシーズンは「個人的には80点」と中西は語ったが、充実した様子が言葉や余裕のある表情からもうかがえる。

 だが、チームのことになると少し険しい表情を浮かべた。

課題は中間層の強化

 関東インカレの時、中西はこう言っていた。

「チームの完成度はまだ60%ぐらいです。関カレの翌週にある法政大の記録会に多くの中間層の選手が出場するので、そこで力を証明してほしいと思っています」

 法政大学記録会の5000mでは中西がペーサーをつとめるなどしたが、暑さの影響もあってか、16人が出走して自己ベスト更新は3人しかおらず、「ダメでしたね」という結果に終わった。

「ホクレン後の網走学連記録会(7月18日)に伊地知(賢造・3年)、坂本(健悟・4年)、藤本(竜・4年)ら主力のひとつ下の上位層が参加するので、そこで自己ベストを求めています。また、中間層は富士裾野でのレース(7月16日)に参加します。故障していた選手を含め、みんな、どのくらい上げてくるのか。上半期、チームとして全員の自己ベストを目標に掲げているので、それをしっかりクリアしてほしいですね」

 果たして富士裾野でのレースでは5000mと1万mに22名の選手が出場したが、自己ベストを更新したのは5000mで13分59秒33を出した三潟憲人(2年)ひとりだった。網走学連記録会では、5000mで青木瑠郁(1年)が13分48秒61で自己ベストを更新。1万mでは、伊地知が28分29秒95、藤本が28分53秒77、坂本が28分54秒53で、それぞれ自己ベストを更新した。また、1万m初レースの高山豪起(1年)が29分39秒31、嘉数純平 (1年)が28分58秒44というタイムを出して、ルーキーとして上々の走りを見せた。裾野と網走で明暗が分かれた結果になったが、中間層の強化はこれからも継続していくことになる。

「チームとしては、まだまだですね。夏合宿のテーマはまだ決まっていないですけど、ひとり1000キロ以上走ることが軸になってくると思います。3部練、休みなしで、がちがちに走り込んでいきたいと思います」

中西は決意を秘めた表情で、そう言った。

今年の國學院大は中西主将を始め、島﨑、伊地知、平林、山本歩夢(2年)の5人が軸になり、チームのアベレージを高めており、藤本、坂本ら4年生も調子を上げている。だが、箱根駅伝を上位で戦うにはその次の戦力の台頭が必要になる。2年生、1年生を、どれだけ駅伝メンバーに押し上げていけるか。夏合宿で平林、山本らが引っ張る2年生の踏ん張りが大きなキーになりそうだ。