ポカリスエット「エールキャラバン2022」で香川・坂出商を訪問 女子バレーボール日本代表として2012年ロンドン五輪で28年ぶりに銅メダルを獲得し、昨年の東京五輪でも主将として活躍した荒木絵里香さんが現役高校生と触れ合った。7月14日、香川…

ポカリスエット「エールキャラバン2022」で香川・坂出商を訪問

 女子バレーボール日本代表として2012年ロンドン五輪で28年ぶりに銅メダルを獲得し、昨年の東京五輪でも主将として活躍した荒木絵里香さんが現役高校生と触れ合った。7月14日、香川県の坂出商を訪問し、女子バレーボール部など約80人の生徒たちを相手に特別授業を実施。今夏のインターハイに初出場する女子バレーボール部に直接指導も行った。「学生の期間は限られている。仲間と一緒に頑張ることで成長のきっかけにしてほしい」と坂出商と全国の高校生にエールを送った。

 長らく日本女子バレー界を牽引し、昨年の東京五輪後の9月に現役引退を表明した荒木さん。引退後は最終所属先だったトヨタ車体クインシーズのチームコーディネーターに就任し、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に入学するなどさまざまな可能性を模索している。1児の母として奮闘する一方、バレーボールの普及活動にも尽力。活動の範囲を広げている。

 そんな日本バレー界の“レジェンド”にとって、こうした高校生との触れ合いは貴重な経験とあって、生徒以上に緊張の面持ちで学校に到着。それでも、体育館に集まったバレー部、陸上部、バスケットボール部、バドミントン部、弓道部の生徒たちに拍手で迎え入れられると、笑顔で特別授業をスタートさせた。

 今回の企画は、部活で汗を流す、すべての高校生を応援するポカリスエットの「エールと、ともに。」プロジェクトの一環として、大塚製薬が2014年から開催する「エールキャラバン2022」。各競技のレジェンドがサポーターとなり、部活を頑張る高校生、指導者に直接指導するだけでなく、レジェンドの高校時代の苦しみや挫折から何を学んだか、経験をもとにしたエールを送る活動だ。

 コロナ禍以前の2019年12月までに全国45校を訪問し、約3万5000人の高校生と交流。今年はインターハイが四国各地で開催されるということで、四国の高校での実施となった。その中で、坂出商女子バレーボール部がインターハイ香川県予選で優勝し、初のインターハイ出場を決めたこともあり、荒木さんの登場となった。

 特別授業の最初のテーマは「どんな気持ちで高校時代の部活動に取り組んでいたか」。この問いに対し、高校時代を振り返った荒木さんは「バレーボールがうまくなりたい」という思いの強さを強調した。

 中学時代は岡山・倉敷市の公立校でバレーボールをしていた。当時はお世辞にもチームメイトたちのレベルは高くなく、「高いレベルでやりたいということに飢えていた」という。そこで、高校は女子バレーの名門の東京・成徳学園(現・下北沢成徳)に進学。岡山から家族全員で引っ越して新天地での生活を始めた。

「一気にレベルが上がって、ついていくのに必死でした。難しいバレー用語も飛び交って、何のことだか分からないくらいでしたが、とにかくバレーがうまくなりたかった。高校に入って『日本一になる』という高い目標を立てましたが、それを達成できた時に震えるような気持ちを味わうことができたんです。そこで、もっとこういう気持ちを味わいたい、もっと高いレベルでやりたいという気持ちになれて、部活動をずっと続けることができました」

 そこから話は「大会に臨む際の気持ち」というテーマに。その中で「実は1年生の時のインターハイでは、ものすごく暑かったのと緊張で脱水症状になってしまった」という秘話を披露した。そうした経験もあっただけに「皆さんはコンディションを整えて大会に臨んでもらいたい」と語った。

ピンチの時に大事なことは「目を合わせた声かけ」

 コンディション調整の大切さを説いたこともあり、荒木さんは授業中に「きちんと水分補給をするのを忘れないで」と生徒たちにポカリスエットによる給水を勧めながら講義。「コロナ禍の環境に対する悩み」というテーマに話が変わると、東京五輪の時の日本代表チームの状況を語り出した。

「私たちも東京五輪の前に大会がなくなってしまい、試合ができなくなって、自分たちの力がどのくらいなのかと不安でした。でもそれはみんな同じ条件。そういうことをしっかり受け入れて、今何ができるのかを考えることにエネルギーを注いでほしい」

 その後の質問コーナーでは「苦しくなった時はどう乗り越えたらいいのか」という悩みを打ち明けられた荒木さん。それに対し「スポーツに限らず勉強も同じだと思う。自分がキツイ時は仲間もきついし、相手もキツイ。そこでちょっと頑張れば強くなれるし、チームの中でもいい役割を担える。もうダメだと思ったら『あと少し頑張ろう』と思うようにすると、また違う気持ちになれる」とアドバイスを送った。

 運動部の生徒にとって共通の悩みともいえるのが「チームの雰囲気が悪くなった時に、周囲にどんな声かけをしたらいいのか」というテーマ。この悩みに大きくうなずいた荒木さんは「声かけ」の具体的なやり方を“伝授”した。

「例えば、バレーボールでは連続失点というシーンはシニアにもあるし、日本代表でもそういう話をよくしていました。そういう時の声かけで大事なことは、まず目を合わせるということ。焦っていたり、ピンチになったりすると、みんな一人になってしまう。それが悪循環になる。状況が悪い時こそ自分から声をかけてほしい。その時は『どうしてこうなった』みたいなネガティブな声かけではなく、『こういう風にしよう』といった前向きな声かけを意識してやってみてほしいですね」

 銅メダルを獲得したロンドン五輪だけでなく、結婚、出産を経て復帰した後も日本代表に選出され、キャプテンの大役を任された。しかし、キャプテンの経験はそれまで一切なく、初のキャプテンが日本代表だった。それだけに最初は悩み続ける毎日を送っていたという。

「いきなりの大役で悩みましたし、苦しみました。私は先頭に立って引っ張っていくようなキャラではないので、チームの前を走るのではなく、真ん中でみんなの顔を見てエネルギーを出して、どんな時でも自分が一番熱く声を出してプレーしようと思ってやりました。一人でできることには限界がある。そういう時は仲間もいるので“巻き込み作戦”をやりました。『助けて』と言ったら助けてくれるし、それによってチームの輪が大きくなるという効果もありますから」

 授業の終盤には、生徒ではなく先生からも「バレーボールをやっていて嫌だなと思ったことはあったか」という質問が。これについて「バレーは好きでやっているから、嫌だと思ったことはない」ときっぱり。その中で「嫌なことがあったら『原点に帰る』ということをしていました。私はなぜバレーをやっているのか、どうしてうまくなりたいと思っているのかということを考えました」と初心に戻ることで自分の立ち位置を確認していたという。

 世界と互角に渡り合った荒木さんの口から出た金言の数々。暑い中で行われた特別授業でも生徒たちは耳を傾け、自分の心に刻み込んでいた。荒木さんは「しんどいこともあると思うけど、感謝の気持ちを忘れず、いろいろなことにトライしてほしいです」とエール。生徒たちの目が一層輝きを増した瞬間だった。

女子バレーボール部を直接指導 生徒たちに送った言葉「意志は力」

 特別授業の後、荒木さんは女子バレーボール部の練習を直接指導。迫力あるスパイクを打つ選手も多く、レベルの高さを目の当たりにして「すごい」と漏らすシーンも見られた。レシーブからの攻撃練習を反復して行うメニューに感心することしきりだったが、その中で「一生懸命にやっている中で、選手がチームではなく一人になっている時があるので、そういう時に積極的に声をかけていってほしい」とアドバイスすると、選手たちは大きくうなずいていた。

 練習後、荒木さんは選手たち個別にポカリスエットのスクイズボトルが手渡し、チームにサイン入りのジャグタンクを贈呈。さらにサプライズとして、荒木さんが今回考えたという「意志は力」という言葉が入った応援フラッグもプレゼントした。

 すべてのメニューを終えて、地元メディアの取材を受けた荒木さんは「休憩の時など、みんなが話しかけてくれて楽しい時間を過ごせました。高校生の真っすぐに頑張る姿に刺激を受けましたし、パワーももらいました」と充実した時間の感想を語った。その上で「学生の期間は限られている。仲間と一緒に頑張ることで成長のきっかけにしてほしいです」。坂出商バレー部だけでなく、日本全国で部活動に励むすべての生徒たちにエールを送った。(THE ANSWER編集部・瀬谷 宏 / Hiroshi Seya)