パリ・サンジェルマン真夏の短期集中講座<第5回>〜川崎フロンターレ戦@国立競技場〜 パリ・サンジェルマン(PSG)の日本…
パリ・サンジェルマン真夏の短期集中講座
<第5回>〜川崎フロンターレ戦@国立競技場〜
パリ・サンジェルマン(PSG)の日本ツアー3連戦の初戦となった川崎フロンターレとの一戦は、6万4922人の観衆を集めて"新"国立競技場の最多入場者数記録を更新。スタンドを埋め尽くしたファンの熱気に包まれるなか、試合はPSGが2−1で勝利を収めた。
もちろん、現在のPSGは新シーズン開幕に向けた準備を始めたばかりなので、選手の動きは全体的に重かった。試合後の会見では、PSGのクリストフ・ガルティエ監督も両チームのコンディション差に言及したうえで、収穫と課題について次のように振り返っている。
>>第1回はこちら>>「PSG激動の歴史。降格争い、借金まみれ、スポンサーもさじを投げた」
>>第2回はこちら>>「PSGスーパースター列伝。王様ズラタン、ピルロ後継者、ベッカム引退」
>>第3回はこちら>>「PSGの新体制にスター選手も戦々恐々。ネイマールさえも...」
>>第4回はこちら>>「攻撃はMNMトリオのアドリブ優先、守備は不慣れな3バックを採用か」

昨季の不調を払拭する仕上がり具合のメッシ
「攻撃でいいコンビネーションプレーを見せたほか、前からプレッシャーをかけてチャンスを作ることもできた。
一方、我々の選手たちは3−4−1−2という新システムに適応しなければならないわけだが、まだそのバランスが悪く、相手に多くのチャンスを与えてしまった。この点については、今後数週間で解決しなければならない大きな課題であり、攻守のバランスを保ちつつ、もう少し攻撃に人数をかける必要もある」
まず、ガルティエ監督が収穫としてあげた攻撃陣のコンビネーションは、PSGがこの試合で記録した2ゴールに象徴される。
32分の先制ゴールは、敵陣左サイドのクイックスローインからFWキリアン・エムバペがドリブルでDFを揺さぶったあとにクロス。それをファーサイドのボックス内に入ってきたDFアクラフ・ハキミがダイレクトで落とし、FWリオネル・メッシが右足で放ったシュートが登里享平の足に当たって決まったゴールであり、複数の選手が連動して生まれたものだった。
しかも、そのゴールの起点となったスローインは、家長昭博からチャナティップへのパスを敵陣でMFイドリッサ・ゲイェがプレスをかけて回収したところから決定機を作り、GKチョン・ソンリョンをかわしたメッシのシュートをラインギリギリでチャナティップがクリアしたことで得たもの。つまり、指揮官の狙いでもある高い位置のプレスが効果を示したシーンだ。
メッシの本気度が感じられた
後半58分には、GKジャンルイジ・ドンナルンマを起点に見事なロングカウンターから2ゴール目を決めた。
パスを受けたMFディナ・エビンベが右サイドをドリブル突破したあと、中央のメッシにつなぎ、メッシが左のスペースに走り込んだDFフアン・ベルナトにパス。ベルナトがメッシとのワンツーから入れたマイナスクロスをFWアリノー・カリムエンドがスライディングで合わせた、見事なコンビネーションプレーによる一撃だった。
まだコンディションが上がらない選手が多いなか、とりわけ攻撃陣で目立っていたのが、メッシの仕上がりの早さだろう。
「MNMトリオ」のうち、遅れて新シーズンのトレーニングに合流したエムバペと、来日前に軽いケガを抱えていたネイマールがまだ3〜4割のコンディションであるのに対し、若手とともにチーム指導日から合流した35歳のメッシは、すでに6〜7割の仕上がり具合。調子のよさが、そのままパフォーマンスとして表れていた。
振り返れば、加入初年度のメッシは周囲の期待を大きく裏切る格好でシーズンを終えている。キャリアで初めて移籍を経験し、新しいチームと新しい生活環境に適応するまでに予想以上の時間を要したことや、コロナ感染後に原因不明の体調不良が続いたことが、その主な要因とされる。
それもあってか、名誉挽回を期す現在のメッシに昨シーズンのようなのんびりムードはない。オプション行使がなければPSGとの契約も今シーズンで終了するため、仮に2年連続の不振で終わってしまえば、それこそ来夏は再び難しい境遇に陥ってしまう。そんな背景を考えると、なおさら今シーズンのメッシは要注目になる。
一方、新システム「3−4−1−2」の浸透具合は課題が山積。ガルティエ監督がコメントしたとおり、この試合ではいくつかの問題が浮き彫りになった。そのなかで特に問題視されるのが、幾度となく川崎に破られてチャンスを与えた守備面である。
たとえば、前半9分と17分にマルシーニョが抜け出したシーンはその典型で、いずれもハキミとDFセルヒオ・ラモスの背後にあった広大なスペースを狙われたことから招いたピンチの場面だった。
レッズ戦で守備は機能するか
ガルティエ監督が目指す3バックシステムは、あくまでも攻撃的に戦うための戦術ゆえ、DFラインを高い位置に設定する。そうなると、最終ラインの背後にはスペースが生まれるのだが、まだその管理をどのようにするのかが定まっていないのが現状だ。
試合後、この問題についてガルティエ監督は「コンパクトさを保つことと、自陣深いところでボールを回収する術(すべ)も身につける必要がある」と、修正点についてコメント。そのうえで、ポリバレント性を兼ね備え、サイドを上下動できる新戦力獲得にも言及し、名前こそ出さなかったが、ライプツィヒのノルディ・ムキエレ(24歳)の補強が迫っていることを示唆している。
そもそも、ふくらはぎの度重なる故障によって昨シーズンを棒に振った36歳のセルヒオ・ラモスがフル稼働できる可能性は低い。しかも、この試合の後半に途中出場したドイツ代表のDFティロ・ケーラーは今夏の放出リストに名を連ねているため、右ウイングバックと3バックの一角でプレー可能なムキエレの獲得は、たしかに理にかなっている。
いずれにしても、たとえ新戦力が補強できたとしても、新システムをチームとしてどのように機能させるかが定まらなければ、それは絵に描いた餅になる。その意味でも、7月23日の浦和レッズ戦(埼玉スタジアム2002)では、新システムにおける守備の課題がどこまで修正されるのかが注目ポイントのひとつになるだろう。
高温多湿な難しい気候を考慮して、PSGは予定を早めてガンバ大阪戦(7月25日/パナソニックスタジアム吹田)の翌日に離日することになった。ガルティエ監督が新銀河系軍団をどのようなチームに変えようとしているのかを目の当たりにできるという意味で、引き続き浦和戦も要必見だ。
>>第6回につづく>>