バイエルン・ミュンヘンで数々の栄光に浴したポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキが、FCバルセロナへ移籍すること…
バイエルン・ミュンヘンで数々の栄光に浴したポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキが、FCバルセロナへ移籍することが発表された。移籍金は4500万ユーロ(約63億円)+出来高500万ユーロ(約7億円)。本人のバイエルン退団の意思が強かったことで、バルサ側が要求した「移籍金5000万ユーロ」の一線を守る形で契約を結んだ。
では、レヴァンドフスキ獲得でバルサは覇権を取り戻せるのか?
「レヴァンドフスキは(今年で)34歳になるが意気軒昂で、活躍が見込める。バルサ首脳陣もそう確信して獲得したのだろう」
バルサがドリームチームと崇められた時代のOBフリスト・ストイチコフは高齢への不安を一掃している。
昨シーズンもレヴァンドフスキはバイエルンで35得点を記録し、ブンデスリーガ得点王に輝いた。チャンピオンズリーグでも10試合で13得点を叩き出し、ゴールランク2位。カリム・ベンゼマと双璧をなす欧州最高のストライカーだ。
2、3年後の確証はないが、少なくとも新シーズンに向けての戦力補強としては文句なしだろう。昨シーズン、バルサはチャンスを作りながらも決められない展開も多く、フィニッシャーを求めていた。少なくとも、クロスをゴールに結びつけられるFWとしてレンタルバックしたオランダ代表FWルーク・デ・ヨングの後釜としては、補って余りある戦力だ。

長い交渉の末、バルセロナへの移籍が決まったロベルト・レヴァンドフスキ
一方、「レヴァンドフスキはペナルティエリアのストライカーで、バルサの流動的なシステムに適応できるのか?」と不安視する声は少なくない。
これについては、クラブ関係者が「多様性」と説明しているように、トップはピエール=エメリク・オーバメヤンとの"入れ替え制"になるのではないか。
7月19日に行なわれたアメリカ遠征でのインテル・マイアミ戦。MLS中位のチームを相手にバルサは0-6で大勝したが、先発したオーバメヤンはバルサFWの模範のようなプレーを見せている。先制点は右から入ってきたラフィーニャのパスを引き出し、エリア内で受けると、GKとの1対1を冷静に浮かして決めた。また3点目は、ニコ・ゴンサレスに近づいて縦パスを足元に引き出すと、ダイレクトでラフィーニャに落とした。そこから背後に走り込んだアンス・ファティへパスが出て、ファティが豪快な右足ボレーを叩き込んだ。
攻撃陣の役者はそろったが...
オーバメヤンは周りを動かしながら、自らゴールを決めることできる。周りを生かし、他の選手がゴールする戦術的プレーも苦としない。ゼロトップに近い動きと言えるか。スペースを作る動きもうまく、ボールの流れを止めず、結果的に周りの得点が増えるのだ。
一方、レヴァンドフスキは周りに動いてもらい、ゴール前で駆け引きし、自らが仕留める力が強い。局面や対戦相手によっては、それが求められる。ストライカーが相手センターバックとやり合うことで消耗させ、布陣を狂わせ、得点に至るケースはあり、その手の有力なストライカーが必要だった。いくらかパス回しが遅くなるとしても、彼が入ってくることで単純に相手ディフェンスラインは緊張を覚える。そのストレスをかけられるだけでも、大きな利点になるのだ。
「シャビは最強時代のバルサに戻すための戦略を持っている。私はそれを助け、実現するために励むだけだ」
レヴァンドフスキは言うが、「絶対的エースよりも有力なピース」で復権にひと役買うことになるのかもしれない。
バルサの攻撃陣は他も役者がそろった。
リーズ・ユナイテッドから移籍のブラジル代表ラフィーニャは、インテル・マイアミ戦でいきなり活躍を見せた。契約更新したウスマン・デンベレも右からディフェンスラインの前を横切ってシュートコースを見つける独特のドリブル(左右どちらにも滑らかに方向転換できる両利きなのでDFは飛び込めない)で、華麗なシュートを決めている。また、ケガから復活のファティもゴールに向かうコントロール精度や足の振りは、やはり破格だ。
バルサの問題は別のところにある。
「FWの次はディフェンスに手を入れなければ」
レヴァンドフスキの獲得を発表した後、ジョアン・ラポルタ会長も語っているように、ディフェンス陣はぜい弱さを抱えている。
ジェラール・ピケはコンディション的にフルシーズンの稼働が厳しく、エリック・ガルシアは守備強度が致命的に低い。計算が立つのはロナウド・アラウホぐらいだ。チェルシーから移籍のアンドレアス・クリステンセンはいいバックアッパーになるだろうが、やはりセビージャと交渉中のジュル・クンデのような、次世代を担うワールドクラスがほしいところだ。
現状ではサイドバックも頼りない。インテル・マイアミ戦では、多くの選手が高い評価を受けたが、右サイドバックのセルジーニョ・デストは相変わらず周囲と噛み合っていなかった。格下相手に崩されかけ、新加入のクリステンセンにカバーしてもらう場面も見られた。
攻守の両輪が?み合うか。それ次第でレヴァンドフスキのゴール数も増減するだろう。バイエルンでは堅固なディフェンスに支えられ、ゴール前に押し込んだところでシューターの才覚を生かしていたのだ。
7月24日、ラスベガス。バルサは欧州王者レアル・マドリードと一戦を交える。この試合でレヴァンドフスキのデビューが濃厚と言われている。結果が問われる試合ではないが、今後の試金石となるはずだ。