サッカー取材に移動はつきものだ。蹴球放浪家・後藤健生は現在、茨城と愛知の試合会場を往復している。大変そうに思えるが、上…

 サッカー取材に移動はつきものだ。蹴球放浪家・後藤健生は現在、茨城と愛知の試合会場を往復している。大変そうに思えるが、上には上があるもの。2008年の2国間の往復に比べれば…。

■500キロの長旅

 スイス最大の会場がバーゼルのザンクトヤコブ・パルク。そして、オーストリア最大のスタジアムがウィーンのエルンスト・ハッペルシュタディオンだったので、準々決勝以降はすべてこの2会場で行われたのです。

 地図を見ればお分かりのようにバーゼルはスイスの北西の端。ドイツとの国境の町です。一方、オーストリアの首都ウィーンはオーストリアの東の端にあるのです。直線距離で500キロくらいです。そして、大会のADカードを持っていれば鉄道は無料で乗車できますから(寝台料金は別)、なるべく鉄道を使って往復します。

 6月18日にオーストリア西部のインスブルックでグループリーグのロシア対スウェーデンを観戦して同地泊。翌19日にはインスブルックから鉄道でバーゼルに向かって夕方には到着して準々決勝のポルトガル対ドイツを観戦。その夜は夜行列車でウィーンに向かって20日はクロアチア対トルコを観戦。さすがに夜行が続くのはきついのでウィーンに泊まって21日は飛行機で再びバーゼルに戻ってオランダ対ロシア。再び夜行でウィーンに戻ってスペイン対イタリアを観戦……。

 1964年の欧州選手権で優勝して以来、ワールドカップやEUROで優勝したことがなかったスペインはこの準々決勝でイタリアとスコアレスドローの末にPK戦で勝利(GKはイケル・カシージャスとジャンルイジ・ブッフォンでした)。これで自信を深めたスペインはそのまま勝ち進んで、決勝ではフェルナンド・トーレスのゴールでドイツを破って、1964年の欧州選手権以来初めて大きな国際大会で優勝することになります。

■記者を苦しめる物価高

 準々決勝4試合が終わると、準決勝までは中2日の休養日があったので、これで一息つけます。その間は、ウィーンからすぐ目と鼻の先にあるスロバキアの首都ブラティスラバで宿泊して英気を養って、25日と26日の準決勝でバーゼル、ウィーンをもう1往復しました。

 わざわざブラティスラバまで行ったのは、なにしろオーストリアとスイスは物価が超高い国だったので、食事といっても駅でケバブかソーセージをかじるくらいで、滅多にテーブルに座って食事をすることもなかったからです。その点、物価の安いブラティスラバでは贅沢をさせていただきました(ブラティスラバ滞在については「蹴球放浪記」第24回を「ビールを飲むために国境を越える」の巻を参照)。

■車窓からの眺めは素晴らしいが…

 こうして日程を書いていると、それほど大変そうではないのですが、ご存じのようにオーストリアとスイスはアルプス山脈の中にある国です。そのため、山や湖が点在していて車窓からの景色は素晴らしいのですが、鉄道の路線も山の中を走ることが多いわけで、列車のスピードもそれほど出せません。基本的に平地を走るフランスのTGVやドイツのインターシティのようにはいかないわけです。

 とくに、バーゼルからウィーンに向かう夜行はコンスタンツ湖のそばを通るローカル線で、明け方には学校に通う少年少女たちが乗り込んできたりする路線なのです。

 まあ、そんなバーゼル・ウィーンの3往復のことを思い出せば、鹿嶋と豊田の報復などなんともないわけです、はい。

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