馬場咲希インタビュー、全米女子オープンでアマチュアとして8年ぶりに予選通過 日本女子ゴルフの新たな逸材として、注目されている長身選手がいる。175.3センチで17歳の馬場咲希(日本ウェルネス高2年)だ。今季から国内ツアーに出場し始め、2戦と…

馬場咲希インタビュー、全米女子オープンでアマチュアとして8年ぶりに予選通過

 日本女子ゴルフの新たな逸材として、注目されている長身選手がいる。175.3センチで17歳の馬場咲希(日本ウェルネス高2年)だ。今季から国内ツアーに出場し始め、2戦とも予選通過。プロも含めて158人が出場した4月の全米女子オープン日本予選会を4位で突破し、本大会では日本人アマチュア選手として8年ぶりの予選通過を果たした。最大の魅力は飛距離270ヤードのドライバーショットだが、小技の巧みさもある。目標は「世界で活躍する選手」で、今月は全米女子ジュニアゴルフ選手権(21~24日)に出場する。14日の渡米前、その素顔に迫った。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田通斉)

 ◇ ◇ ◇

 馬場は屈託のない笑顔で言った。「身長がこの1年で4センチ、伸びました」。すでに日本女子ゴルフ界では少ない長身選手だが、「まだ、伸びている感じです」とも言った。伸びているのは、実力も同じ。今年に入ってからの成績は目を見張るものがある。

[3月]
ヤマハレディース葛城 58位(通算10オーバー)
[4月]
全米女子オープン日本予選会 4位(通算5アンダー)※本大会出場権獲得
[5月]
関東女子選手権 優勝(通算9アンダー)
ブリヂストンレディス 28位(通算イーブンパー)※ベストアマ
[6月]
全米女子オープン 49位(通算9オーバー)
日本女子アマ選手権 9位(通算1アンダー)

 昨季までは、21年の全国高校選手権3位が誇れる成績だったが、急カーブで力を伸ばし、一気に世界最高峰の全米女子オープンを経験。日本勢15人が出場したなか、アマチュア選手として唯一、5人の予選通過者に名を連ねた。

実は小技も得意、全米女子OP予選会はボギーなし通過

「会場で大好きな(ネリー・)コルダさんを見つけて、興奮しました。『やばい』『やばい』と言いつつ、通訳さんと一緒に『写真を撮っていただいていいですか』とお願いしたら、『もちろん』と答えてくださいました。もう、めちゃくちゃカッコよかったです」

 渋野日向子とは練習ラウンドし、畑岡奈紗、笹生優花らにも挨拶。大舞台に立てた喜びを感じながら結果も残した。通算3オーバーで予選ラウンドを午前中に終えた時点では80位台だったが、後続がスコアを崩したことで馬場が59位に入った。

「終わった時点では諦めていて、『アメリカを楽しもう』と思いながら練習していましたが、晩御飯を食べるタイミングで62位に上がっていることを知りました。そこからは、ずっとスコア速報を見ていました(笑)」

 文字通り、夢のような1週間を過ごし、決勝ラウンドでは持ち前の飛距離もアピールした。だが、目を見張ったのがアプローチ、パットだ。

「1、2メートルの微妙なパットがよく残りましたが、それが入っていました。アプローチもグリーン周りが硬くて難しくて、ウェッジで打てない時はパターで転がして寄せることができました」

 実は父・哲也さんが「宝くじを当てるつもりで」とエントリーした全米女子オープン日本予選会で、馬場は36ホールをボギーなしで回っている。ショットについては「荒れていた」というが、山梨・フォレスト鳴沢GCCなどで磨いてきたアプローチ技術が生き、キャディーを務めた哲也さんは「よくしのいでいました」と証言。馬場自身も、「これまでもよくグリーンを外してきたので、だんだんと寄せられるようになってきました」と明かした。

奔走する父、宮里藍の元トレーナーらに指導を依頼

 抜群の飛距離と高弾道のアイアンショットに巧みな小技。楽しみな要素が詰まっている馬場は、哲也さんの勧めで5歳からクラブを握った。哲也さんが、東京・昭和の森ゴルフレンジで、後にプロになる菅沼菜々と父親が練習に取り組む光景を見たことがきっかけだった。

「正直、うらやましくなって、長女と次女の咲希を誘って練習場に行くようになりました。私の老後、一緒に遊んでくれたらという思いもありましたが、楽しそうにボールを打っているので、スクールに通わせました。長女はその後、ゴルフから離れましたが、咲希は小4で七夕の短冊に『プロゴルファーになりたい』と書いていました。それで、私も本気になってきました」

 小2で初めてラウンドした頃は100以上を打っていたが、プロを目指し始めた小4では、70台でも回れるようになった。当時の身長は150センチ程度。飛距離は小6で200ヤード台に届いたが、同世代ジュニアのなかでは、飛ぶほうではなかったという。

「私より飛ぶ人はたくさんいました。ただ、中2になって体重を増やしたり、高校に入る少し前から本格的にトレーニングを始めて、飛距離も伸びてきました」

 言葉通り、馬場は中3から鎌田貴トレーナーに師事している。多くの一流アスリートを指導してきた鎌田氏は、かつて宮里藍も担当しており、宮里ファンの哲也さんが知人を通じて「娘の指導を」と依頼。技術面では、大山志保、佐伯三貴らを担当してきた坂詰和久コーチにも指導を依頼し、馬場は持ち球のドローに加え、フェードを習得するに至った。将来を見据えた動きで、哲也さんは愛娘に可能な限りのサポートを続けている。

「後になって、『あの大事な時にもっとやっておけば』という悔いを残したくない思いはあります。全米女子オープンから帰ってきた後、咲希は自分の希望で英会話を習っていますが、私自身は将来、米ツアーを一緒に回るつもりないです。なので、今のうちに語学も頑張ってほしいですね(笑)」

父と時にケンカもサポートに感謝「恩返しをしていきたい」

 馬場も父の思いと動きに感謝し、時に「ありがとう」と感謝の思いを伝えている。だが、コース上でケンカになることもあるという。

「日本女子アマ最終日、最後18番のバーディーパットを打つ前、お父さんが『スライスだよ』と言うので、その通りに打ったら決まって、日本女子オープン最終予選会出場権を得られるトップ10に入りました。でも、ブリヂストンレディス最終日の16番パー5では、私がティーグラウンドが前になっていた意図を分からず、4番アイアンで安全に右のほうに打ったら、すごく怒ってきました。『なんで2オンを狙うマネジメントをしないんだ。それじゃ、プロになってもファンがつかないぞ』って。17番でもクラブ選択に迷って、『どうしよう』と聞いても無視されました(笑)。そういう時、私も反発しますが、帰りの車では普通に話しています」

 女子ゴルフ界では珍しくはない父子の二人三脚。だが、馬場父子の立ち位置は、全米女子オープン出場でより高くなった。同大会予選通過で、全米女子ジュニア選手権、全米女子アマ選手権(8月11~14日)の出場権を獲得。渡航費用は、全米女子オープン出場前、哲也さんが奔走して獲得した12社のスポットスポンサー契約料に加え、今後、実施するクラウドファンディングでカバーするつもりだ。娘のために全力を尽くす哲也さんは、支えてくれる周囲に深く感謝している。

「今年からアマチュア規定が大幅に変わって、スポンサードを受けられることはとても大きいです。これからもしっかりと恩返しをしていきたいです」

プロ向きのメンタル「ギャラリーが多いほど振れる」

 成長著しい馬場の大きな目標は、世界最高峰の米女子ツアーで活躍し、海外メジャーを制することだ。だが、その前に日本でのプロテスト一発合格、もしくは、アマのうちのツアー優勝、プロテスト免除で日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)会員になり、国内で活躍することも目指している。

「ヤマハレディース葛城の主催者推薦選考会に通って、初めてツアーに出た時も『プロの試合は楽しい』と思って、飛距離がグンと伸びました。私、ギャラリーが多いほどテンションが上がって振れるんです。自分でもビックリするくらいに(笑)」

 実際にブリヂストンレディス最終日の6番パー4(399ヤード)では、フォローの風も受けて約300ヤード以上を飛ばし、残り60ヤード地点からの第2打は、58度ウェッジでピンそばにつけている。注目されることについても、「嫌いじゃないです」と言い、憧れの金田久美子、脇元華らからも可愛がられるなど、愛されキャラの一面もある。今後、高レベルが望める技、体に加えて心の面もプロ向き。そのポテンシャルは計り知れない。

■馬場咲希 / Saki Baba

 2005年4月25日生まれ、東京都出身。日本ウェルネス高2年。5歳から父の勧めでゴルフを始め、13歳で出場の東京都ジュニア選手権女子12~14歳で優勝。魅力は飛距離270ヤードのドライバーショット。ヘッドスピードは秒速45~48メートル。ゴルフ以外のスポーツ歴は陸上競技と空手。家族は両親、姉、妹2人。175.3センチ。血液型B。

(取材協力:昭和の森ゴルフ ドライビングレンジ)(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)