最速144キロのプロ注目右腕、憧れ続けた兄2人が原点 今春の高校野球大阪府大会5回戦で、選抜を制した大阪桐蔭を相手に8回を被安打4、3失点という好投を披露し、一躍脚光を浴びた大阪電気通信大高のエース・的場吏玖(まとば・りく)。183センチ、…

最速144キロのプロ注目右腕、憧れ続けた兄2人が原点

 今春の高校野球大阪府大会5回戦で、選抜を制した大阪桐蔭を相手に8回を被安打4、3失点という好投を披露し、一躍脚光を浴びた大阪電気通信大高のエース・的場吏玖(まとば・りく)。183センチ、61キロと細身ながら最速144キロのストレートを投じ、三振を奪える多彩な変化球が最大の武器の右腕だ。大阪桐蔭と当たる前の4回戦では、強力打線を擁する関大北陽高から20奪三振を記録してもいる。大器の片鱗を見せはじめた昨夏からプロのスカウトも注目している。

 的場が“プロ注目”投手にまで成長する過程では、憧れ続けた2人の兄と、個性が似ているプロ野球選手という、ステージに応じて変化していった目標の存在があった。

 それぞれ6歳、3歳離れた兄の背中を追って寝屋川スカイヤーズで野球を始めた的場。中学2年から投手になり「高校入学当時は、真ん中のお兄ちゃんの投げ方の真似をしていました」と話すほど、2人の兄に憧れていた。一番上の兄も野球部ではないものの、電通大高のOB。6年前の夏、兄の中学時代のチームメイトである履正社・山口裕次郎投手(2016年日本ハム6位指名も入団せず、現在はJR東日本)を応援しに甲子園へ行ったことも良い思い出だ。

目標を越えた実感「あります」、次の憧れは日ハム・金子

 成長を遂げた末っ子の活躍に、最近は兄2人からのアドバイスも無くなり「球が速くなったな」と驚いているという。高校入学当時はストレートの最速は124キロだったが、現在は20キロもアップ。目標にしていた兄2人を越えられた実感が「あります」と胸を張る。その表情には穏やかな笑みがこぼれていた。

 次なる目標の選手は日本ハムの金子千尋投手だ。精度の高いカーブやスライダ―、フォーク、スプリット、カットボールを操れる的場は、制球力も安定していて四死球が少ない。多くの変化球を投げ分け、2013年に最多奪三振、翌年には最多勝、最優秀防御率のタイトルを獲得し、ベストナインにも輝いた金子の動画を見て、変化球の質や制球力などを参考にしている。

「相手を翻弄できるのが楽しい。三振や打ち取れると気持ちがいいです」と変化球投手の醍醐味を語る的場。1年時から1日10合以上の白飯を食べて体重増加と体幹強化に努めてきたが、肉体的には進化の途中といっていい。大学進学も視野に入れつつ、卒業後の進路は検討中ながら、注目度が高まるにつれ、同校初のプロ野球選手誕生も意識せざるを得ない。

 もし、プロ野球選手になった暁には「金子千尋選手と投げ合いたい」と笑顔を見せる的場。憧れのプロ野球選手を追い越すのは至難の業だが、どんな進路を選んだとしても更にステップアップしていく姿が楽しみだ。(喜岡桜 / Sakura Kioka)