日本の皆さんにビッグニュースだ。ブラジルのビッグネームふたりが近々、日本にやってくるかもしれない。 ひとり目はレオナル…

 日本の皆さんにビッグニュースだ。ブラジルのビッグネームふたりが近々、日本にやってくるかもしれない。

 ひとり目はレオナルド。彼はパリ・サンジェルマン(PSG)のスポーツディレクター(SD)を解任され、パリでの冒険をかなり悪い形で終えてしまった。

 ネイマールをチームに引き留め、リオネル・メッシを獲得し、キリアン・エムバペ残留を実現させた。すべてが彼の手柄ではないかもしれないが、チームの最高責任者は彼である。にもかかわらずレオナルドはクビを切られた。これは何か大きな問題があったからだ。

 レオナルドはPSGであまりにも力を持ってしまった。反対があっても、彼が意見を押し通すことは少なくなかった。たとえばトーマス・トゥヘル監督時代、彼が望んでもいなかったのにマウロ・イカルディをチームに連れてきて、チアゴ・シウバを追い出し、それに異論を唱えたトゥヘルも追い出した。結局、ふたりが移籍したチェルシーが昨シーズンはチャンピオンズリーグで優勝してしまった。

 監督の選手の起用や戦術に口を出すことも一度や二度ではなく、こうしたことが重なり、チーム内には彼を敬遠する空気がだんだんと生まれてきていった。同国人のネイマールも、最近では「レオナルドとは話したくない」と言い出していた。エムバペを中心に新たなチーム作りへと舵を切るなかで、真っ先にクビを切られたのがレオナルドだった。

 こうした事情もあって、現在フランスのチームも、ブラジルのチームもレオナルドをほしがりはしていない。唯一可能性があるのはバレンシアだ。

 レオナルドは91年から93年までバレンシアでプレーし、チームの人気者だった。なにより現在の監督は元ミランのチームメイト、ジェンナーロ・ガットゥーゾだ。彼はレオナルドがミランのSD時代に監督を務めたこともある。ガットゥーゾはレオナルドがチームに来てくれることを望んでいる。

 ただ、バレンシアはガットゥーゾのチームではない。オーナーはシンガポールの実業家ピーター・リム。選手を勝手に売って監督と対立するなど、いろいろな逸話のある人物だが、レオナルド獲得については意欲的なようだ。現在、バレンシアにSDはいないし、リムはPSGの会長アル・ケライフィとも友人である。今のところ、レオナルドの次の勤務先はバレンシアというのが一番濃厚だろう。

日本代表のスタッフに?

 しかし、ここにもうひとつの可能性が浮上する。レオナルドのかなり近しい友人で、ブラジル代表でもクラブチームでもともにプレーしたことのある人物から、私はレオナルド自身の意向を聞いた。彼は次の職場として「チャンピオンズリーグを戦えるようなクラブチームでなければ、W杯を戦えるような代表チーム」を望んでいるというのだ。

 レオナルドとしては、弱いチームに行って、都落ちのようなイメージを持たれたくはない。その点、代表チームであれば、新たな挑戦となる。レオナルドはこれまで代表チームの運営にかかわったことはない。だが、ブラジル代表にはもちろん居場所はないし、彼がこれまで関わってきたフランスにもイタリアにもスペインにもないだろう。トルコはW杯には出場しない。

 そこで名前が挙がってくるのが日本代表だ。今の日本代表にはSDはいないと聞く。レオナルドがチームスタッフに入ることは日本にとっても決して悪い話ではないと思う。彼は選手としてもレベルが高かったし、監督、フロントとしても世界を知っている。海千山千のチーム相手に、どのように戦うかを森保一監督に伝え、補佐することができるだろう。もしくは、カタールW杯の後に就任し、次のW杯を目指してのチーム作りに力を与えることもできるとも考えているようだ。

 少し前、Sportivaの「あのブラジル人Jリーガーはいま」のシリーズのために、私はレオナルドのインタビューをした。その時、彼は何度もこう繰り返していた。

「日本に帰るのはいつでもとてもうれしいことだ。それに私と日本とのストーリーはまだ終わったわけではない」

 彼はいつでも日本に対していい感情を持っている。

 ただし、現状ではやはりレオナルドにとっての一番の選択肢はバレンシアだろう。すでにオフィシャルな交渉も始まっている。思うに、レオナルドの去就はバレンシア50%、このまましばらく仕事をしない25%、日本代表25%といったところではないだろうか。



ブラジル代表キャプテンとして日本代表戦に出場したダニエウ・アウベス photo by Sano Miki

 そしてもうひとり、来日する可能性のある大物はダニエウ・アウベスだ。

「日本を愛している」

 彼はバルセロナとの半年の契約をしていたが更新には至らず、このほど正式に退団することを発表した。監督のシャビ・エルナンデスは「彼のことは大好きだが、若いチームにシフトしていく必要があった」と述べている。バルセロナの速いプレーに彼はもうついていけないのだ。

 ダニ・アウベスは来シーズンのチームがまだ決まっていない。しかしこれはブラジルにとって大きな問題である。彼はいまだカタールW杯を戦うセレソンの一員であり、いくら多くの若手が台頭してきていても代表監督のチッチは彼を外さないだろう。ブラジル代表の中心選手が、チームがないということはあってはならない。

 現在可能性が一番高いと言われている行先はスペインのマジョルカ、そしてヘタフェだ。しかし、そこに第三の可能性として日本があがってきている。

 日本のクラブチームにとって彼はパーフェクトな存在だろう。世界を見てきたダニ・アウベスは、かつてドゥンガがジュビロ磐田でしたように、若い日本の選手に多くのことを教えることができる。移籍市場に名前が挙がっている選手のなかで最も優良な買い物だ。サッカーをわかる人であれば、それはすぐにわかるはずだ。現在39歳ではあるが、彼はまだまだ走れる。

 昨年の東京オリンピックにオーバーエージとして出場し、金メダルを勝ち取り、先日はブラジル代表のアジア遠征の一員としても日本に来た。この時に彼は、日本人の知り合いと話をしたようだ。日本のファンにも親切で、発言も日本に対して非常に好意的だった。

「私は日本という国を愛している。日本の生活にも恋しているんだ」

 たぶん、この時すでにバルセロナとの契約更新はないことを知っていたのだろう。まだ確実なことは何もない。ただ現在、水面下で日本とブラジルのエージェントが彼の移籍に向けて動いているのは確かだ。