狙いは3大会ぶりの優勝 カタールW杯のグループリーグで、スペインはドイツ、日本、大陸間プレーオフの勝者のコスタリカと同組…

狙いは3大会ぶりの優勝

 カタールW杯のグループリーグで、スペインはドイツ、日本、大陸間プレーオフの勝者のコスタリカと同組になった。

 FIFAランキング7位につけるスペインの目標は優勝にほかならない。2010年南アフリカW杯で初優勝を成し遂げたあと、2014年ブラジルW杯はまさかのグループリーグ敗退、2018年ロシアW杯はラウンド16でホスト国ロシアにPK戦で敗れており、3大会ぶりの世界一を目指すことになる。



スペイン代表、ネーションズリーグ・ポルトガル戦のスターティングメンバー

 抽選会の時、結果を受け、ルイス・エンリケ監督は日本について、「難しい相手だとは思うが、我々にはネーションズリーグがあるので、ワールドカップについて話すのはまだ早い」と答えるに留まった。

 一方、スペインメディアはこぞって安堵した様子を見せた。スペイン紙『マルカ』は「ドイツと同じ組に入り、死のグループとなる可能性を懸念したが、日本と大陸間プレーオフのチームという、それほど強くない相手と一緒になったことで不安がかなり軽減された」と2強2弱のグループと判断。

 さらに、「12月18日の決勝に向け、ドイツを避けられる利点がある」と、優勝候補の一角との対戦を序盤で消化できることを喜んでさえいた。

 スペイン紙『アス』も「スペインは抽選会を悪い形でスタートしたが、いい形で終えることができた」とポジティブに捉え、日本をライバル視している感じはなかった。

 日本については遠藤航(シュトゥットガルト)、田中碧(デュッセルドルフ)、守田英正(サンタ・クララ)で形成される中盤を高評価し、警戒すべき選手として伊東純也(ゲンク)と南野拓実(リバプール)の名前を挙げていた。

 スペインでプレーしている久保建英(マジョルカ)については、「数年前からの期待に応えられていない」と近年のパフォーマンスの悪さを指摘。さらに、ファンやメディアの間で森保一監督の存在感が薄いこと、セットプレーでの守備に問題があることなどを伝えた。

 抽選会直後は日本をライバルとして考えていなかった『アス』紙だったが、その後、0-1で惜敗した今月のブラジル戦での戦いぶりを見て評価を改めた。

 ファールの多さを強調しつつも、「強力な守備で1時間以上持ちこたえた」とFIFAランキング1位のチーム相手に善戦したことや優れた組織力を称賛し、「ワールドカップで話題になりそうなチーム」と、サプライズを起こす可能性を示唆した。

70%のボール支配率と決定力不足

 スペインはカタールW杯予選を8試合6勝1分け1敗の勝ち点19で首位通過し、12大会連続通算16回目の出場を決めた。今回の代表で際立つのは、ルイス・エンリケ監督が10代や東京五輪世代の選手たちを積極的に起用し、若返りに成功していることだろう。

 またターンオーバーの多さも大きな特徴のひとつと言える。W杯予選では1試合平均5人以上先発メンバーを代えていた。

 毎試合選手が大きく入れ替わりながらも、お家芸である高いボール支配率を遜色なく維持できるのがスペインの強みである。実際、W杯予選でのボール支配率の1試合平均は70.9%で、ドイツと並び参加55カ国中トップ。

 一方、慢性的な課題である決定力不足は相変わらずで、総得点わずか15で55カ国中20番目と、予選を突破したチームのなかでは少なかった。

 このような状況のなか、今月からスタートしたネーションズリーグ・グループリーグ4試合に、ルイス・エンリケ監督は25人を招集した。バルセロナから最多6人が名を連ね、とくにアンス・ファティ(バルセロナ)が2年半ぶり、マルコ・アセンシオ(レアル・マドリード)が 1年半ぶりにメンバー復帰したことが注目となった。

 4試合ともいつもどおりの4-3-3で臨んだが、序盤は不安定な戦いぶりを露呈し、ポルトガル(ホーム)、チェコ(アウェー)との最初2試合に引き分けた。しかしその後、スイス(アウェー)、チェコ(ホーム)に連勝。成績は2勝2分、6得点3失点の勝ち点8で、グループリーグ首位に立っている。

 試合を消化していく過程で、ワールドカップに向けたスタメン候補が徐々に明らかになっており、現時点ではポルトガル戦とスイス戦の先発組がレギュラーに近いと言えそうだ。

 ポルトガル戦の先発メンバーは、

GK/ウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)

DF/セサル・アスピリクエタ(チェルシー)、ディエゴ・ジョレンテ(リーズ)、パウ・トーレス(ビジャレアル)、ジョルディ・アルバ(バルセロナ)

MF/カルロス・ソレール(バレンシア)、セルヒオ・ブスケツ(バルセロナ)、ガビ(バルセロナ)

FW/フェラン・トーレス(バルセロナ)、アルバロ・モラタ(ユベントス)、パブロ・サラビア(スポルティング)

 スイス戦ではカルロス・ソレールに代わりマルコス・ジョレンテ(アトレティコ・マドリード)がスタメン入りしていた。

 またこれらのメンバーに、今大会で評価を著しく上げたアセンシオ、招集されながらもケガ明けのため出番のなかったアンス・ファティ、ケガで招集外だったペドリ(バルセロナ)、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)、ジェレミ・ピノ(ビジャレアル)、ミケル・オヤルサバル(レアル・ソシエダ)などの攻撃の選手たちや、直前のケガによりディエゴ・ジョレンテと入れ替わった、本来レギュラーのエメリク・ラポルト(マンチェスター・シティ)が食い込んでくる可能性が高い。

17歳のガビが大活躍

 ルイス・エンリケ監督は今大会でも平均8人を超えるターンオーバーを行なった。全試合にフル出場したのはGKのウナイ・シモンのみで、ガビとサラビアが最初から3試合連続で先発だった。

 そんななかでもスペインは、ボール支配率の高さを再びキープした。タレント揃いのポルトガル戦を含む全試合で相手を圧倒し、1試合平均68%を記録。ホームのチェコ戦は満員のすばらしい雰囲気のなか、手応えを感じさせる内容だった。

 だが、またもや決定力不足を解消できなかった。

 4試合を振り返ってみると、ボールをキープするもののほしいところでゴールを決められずに苦しんだ印象で、以前から続く大きな課題をクリアできていない。また最初の2試合で見られたように、DF陣が集中力を欠き失点したことが批判された。今後、少ない準備期間でどこまで改善できるかが2回目の優勝に向けた鍵となるだろう。

 個人に目を向けると、とくに注目すべきはネーションズリーグを通じて最も眩い光を放ったガビだろう。弱冠17歳にしてすでにチームを掌握して攻撃の起点となり、一番歓声の上がる選手になっている。

 昨年8月にバルセロナ史上4番目に早いリーガデビューを果たすと、同年10月にスペイン史上の最年少代表デビューを達成。その勢いはとどまることを知らず、今回アウェーのチェコ戦で同国代表史上の最年少得点記録を樹立した。

 サラビアも目覚ましい活躍を見せた選手のひとりだった。今季、出場機会を求めてパリ・サンジェルマンからスポルティングにレンタル移籍。クラブでの調子のよさを代表に還元して、昨夏のユーロ(欧州選手権)から8ゴールを決めてチーム得点王。直近5試合で4得点1アシストを記録し、現在、最もゴールに絡んでいる選手になっている。

 久々の代表復帰を果たしたアセンシオは、出場するたびに決定的な役割を果たしている。レアル・マドリードではとくに今季終盤、控えの立場が続いていたが、チェコとの2試合で2アシストを記録。そのパフォーマンスは決定力不足に悩むチームにとって朗報だ。ガビと並び今大会で最も評価された選手となり、ワールドカップ出場に向けて大きく前進している。

 そのほか、キャプテンを務めるブスケツは来月34歳の誕生日を迎えるが、そのパフォーマンスに陰りはない。ロドリ(マンチェスター・シティ)もいいプレーを見せているが、レギュラー争いでリードしていると思われる。

 GKのレギュラーは度々ファインセーブを披露しているウナイ・シモンで決まりと見られており、センターフォワードのスタメンはパフォーマンスの不安定さに賛否両論あるものの、モラタが濃厚である。

 スペインはこのあと、9月にネーションズリーグ・グループリーグ残り2試合でスイス、ポルトガルと対戦する。今はまだスペイン国内の雰囲気は全くワールドカップモードになっていないが、その頃には人々の関心も徐々にカタールW杯へと向いていくだろう。

 一方、長かったシーズンを終え、束の間の休暇を楽しんでいる選手たちは、来月からプレシーズンを開始し、あっという間に本番を迎えることになる。